夢の連鎖
『では大富豪から金塊を盗んでくる』
消えたカゲの手を握って抑える。
「ダメだ」
「……手が離れれば金塊を取りに行く」
二度と離さないように指を編むように繋ぎ直す。
「これが恋人繋ぎか」
「そうだな」
俺の姿は消えていないが、カゲは消えている。
この瞬間に唇を奪われたとして、避けれない。
「結婚したら、肉の調理を教えてくれた料理教室に行きたい」
「カゲは料理ができるのか」
「……からっきしだから行く、エムの為に愛妻弁当を作りたい」
「楽しみだな」
結婚したら。そんなフレーズから始まる夢の連鎖をカゲから沢山聞いた。
したら、したら、しなくても、しなくても。
『しなくても好きだ』
透明なカゲはどんな表情でどんな色をしながら言ったんだろう。
「顔を見せろ」
「い、いやだっ」
「くすぐるぞ」
「や、やめろ」
よく考えるとくすぐったら表情が変わってしまう。
「見せる、見せる!」
「いや、見る必要なかった」
「……ひどい」
そっぽを向かれたのはなんとなくわかった。
「悪かった」
「ふん……」
しばらくしてタンザがやってきた。
「色々覚えてきたので一先ず戻りましょう!」
「ギルドに住むんじゃなかったのか?」
「えっ?」
「部屋をくれるんだろ? 俺は貰ってないけどな」
タンザは不思議な表情を作る。悲しげな。
「み、みんなと寝る為に、宿のベッドを増やすために頑張ったんです! ここでは寝たくありません!」
「そうだったのか、じゃあ戻ろう」
ギルドを出て宿に戻るとタンザはいつも通りに戻っていた。
「前金を貰ってきたので、宿さんに渡してきます」
「本気なんだな」
両手で大切そうに金袋を持つと部屋を出ていった。
「エムと寝れるようになるのは感謝したい」
「寝るつもりはないぞ」
「エムに枕の役を与えたい」
カゲはカゲでベッドで寝る機会は欲しいみたいだ。
「渡してきました!」
バンッとドアを開けて戻ってきたタンザ。
ルビーとベッドにダイブ。
「前金を貰ってしまったので、早めに行くという約束をしたんです」
「頑張れ」
「お、起きれなかったら起こしてください……」
「そうするつもりだ」
天井のランプをカゲが消す。
もう夕方ではなく夜を知る。
「エム」
イスがトントンと叩かれる。
「俺をベッドにするつもりか」
座ってみると本当に深く座ってきた。
「カゲを抱きしめて欲しい」
手を回してカゲと密着する。
「エム、おやすみ」
これで快眠とは思えないが、本人がそれでいいならそうしよう。
「ああ、おやすみ」




