試験
本気で書きました!
迫力の化身。
一歩下がってしまうような、そんな力が目に映り込む。
『ま、負けません!』
サラサラと剣を抜いてタンザは応えてくれた。
「そうか!」
地面を鳴らしてカッカッと硬い音。
コノハは振り下ろしながら先手を切る。
息の根を止める刃がカチンと言った。
フッと息が止まる。
タンザの受ける姿勢は肩幅分だけ広がった足に依存している。
それでも武器に発生する力を流すだけの才能があるらしい。
「っ……」
コノハの猛攻を攻めに切り替える技術はまだまだ。
足を地につけたコノハはバックステップを軽く踏む。
すぐさま右足で強く踏んで反動を殺す。反旗を翻す。
ガジリとねじ伏せられた砂がつま先で踊らされ。
その頃にはバッタのような強撃が繰り出される。
ギギギンッ。
ザラザラと音を連れて後ろへ押し出されるタンザ。
剣が逃げるように遅れて仰け反る。
「くうっ!」
「壊れなかっただけ、良しとしよう」
隙だらけの胴体にズンッとコノハはタックル。
「きゃあっ」
吹き飛ばされたタンザはゴロゴロと横たわる。
「にゃああ!」
ルビーが大変だとタンザに近づく。
「にゃあにゃあ!」
俺も近づいて安否を確認する。気を失っているようだ。
『さあリュウキ、タンザの代わりになれ』
「最初からそのつもりだったんだろ」
俺は言われた通りタンザが握っていた剣を。
鍛錬で傷だらけになっていた剣を。
右手で貰う。
感覚はまだ分からない、振ったこともない、それでもするしかない。
『ようやく本気でやってくれる』
右手の上に左手を添えて精一杯、刃先を向ける。
『手加減してやるからかかってこいよ』
俺ができる精一杯の強がり。
「な、なんだと!」
「どうした、怯えを感じる距離感だぞ」
ドキドキと止まない心臓が熱い熱を送り返す。
落ち着けたくて吸う空気にクラクラしてくる。
「ぶ、侮辱罪で叩き切ってやる!」
コノハの言葉は刀より後にやってきた。
瞬きをしていたら眼前に。
ギンッ。
左手の感覚に対する回答を右手で送り込む片手持ち。
その答えは正解で剣は何一つ傷を残さない。
押し返すとコノハはずっしり腰を下げ、刀を引く。
素直な突き。横に避けて斜めに向く刃を間合いから取り除く。
引き下がった刀が一瞬で下を向く。コノハの右肩が俺に向く。
『チェスト!!』
花びらが散る下から上へ描かれる半円。弧を描いた振り下ろし。
俺はいつものように構える。
初めて防いだ時から何一つ変わる必要はもうない。
キィン。
溶け合うように硬直する剣と刀。
『ま、またか……!』
足を、足首を、足先を。この瞬間の誰よりも動かす。
素早く速く、前へ前へ距離を詰める。
剣を刀の下でキリキリ滑らせながら止まった時間を詰める。
左手を解放してコノハの首を掴んだ。
「今のが実戦だったら死んでるぞ」
カチャンと刀が落ち、コノハが遅れて俺の手に触れる。
「な、なぜ、壊れない……?」
コノハは夢から覚めたことを今にも語りそうにしていた。
「変わりたくなかっただけだ」
俺は離れて剣を持ち主の鞘に戻す。
「帰るぞ、タンザ」
両手で救い上げ、その場を後にする。
「にゃあ!」
ルビーがトトトとついてきた。
「本当に仲良くなったんだな」
「にゃあ!」
また宿を借りてタンザを寝かせる。
ルビーが真剣そうに椅子を持ち出してちょこんと座った。
俺もタンザが起きるまで、ゆっくり右手を慣らすとしよう。
『えむぅ……』
ムスッとした様子で俺の前に現れたカゲ。
唐突に現れてびっくりした。
『理解に苦しむ! カゲの剣を使って欲しかった!』
ゆっくりする余裕はないかもしれない。




