表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全てを受け止めていたら最強になっていた。  作者: 無双五割、最強にかわいい美少女五割の作品
149/200

剣士として











 連れられた場所は人気のないギルドの裏。


 そこは箱庭のように街から切り離された空間を演出する。


 綺麗な場所。



『ここならバレもしない』



 シャキンと腰刀を引くコノハ。



 振り抜き振り上げ刃先下げ。



 クイッと斜めに空気を切って刀を(ひるがえ)す。



「唯我の一刀を捧げる」



 チラチラ舞う花びら。



「最初から本気で行く!」



 トットッと踏まれた雑草が若返る縮地の接近法。



 剣を抜いてギリギリ間に合う瞬間的な加速。



 震える剣がカタカタ笑う。俺も釣られて笑う。


「また笑うつもりか……!」


「おかしくて仕方ない、頭では映像として残っているのに、成功しないんだ」


 湧き出る防ぎ方。正しい防ぎ方。


 聞きたくなくて、ありもしない手で耳を防いだ。


「何を言っている?」


「体が嘘をついてくる」


 ギンッと鈍い音がのしかかる。



 返す術はまだない。


「訳が分からない!」


 返す言葉もない。



 キッキッキッと鉄同士が弾けて弾ける。


「反撃してこい!」


 コノハに言われて腕を振る。


「……鈍い」


 受け止められても追撃をしても、前と変わらない。


 コノハは何も変わっていない。


「手加減をしているとでも、言うのか!」


 言い返されて俺の体制が崩れて変わる。


 変わったことを隠す。剣を構え直す。


 一瞬の隙で腹を蹴られて一歩下がる。


 輝きを増した一刀。


「なっ……」



 コノハは軽く跳ねながら体を捻って距離を詰める。



 横回転の終わりと同時に振り下ろされた縦の剣閃を受ける。



 キンッと響いた音の中にピキピキと聞こえる警鐘。



 俺は本能的に左へ身を寄せた。



 ヒュッ。


 俺がさっきまで居た空間に乾いた音が鳴る。


 遅れてカサリと黒い刃が落ちた。



 落ちてしまった。




『防ぎ切るオーラがあると思っていたが?』




「あるわけないだろ、あれば腕なんて失っていない」


 全ては経験だ。血と汗が滲む経験。


 落ちた剣先を指で摘んで鞘に隠した。


「その剣は……」


「大事な物だが、仕方ない」


「軽い剣なら貸そう」


「壊したと宣伝するみたいだ、とてもじゃないができない」


 実力不足と知ればタンザは失望する。


 剣が壊れたと知ったらカゲは悲しむ。


 コノハに負けたと知れば、ルビーは「にゃっ」て言う。



「俺は弱い」


「弱くて呆れてしまった」


「同感だ」


「泡の抜けた発泡酒のよう」




 剣がない剣士は、いずれ土に帰る。


 拒否権はない。死しか残らない。




「ならば、強くなればいい」


 カチャリと外れたコノハの左腕。


 ゴトリと落ちて右腕のように映る。


「強くなるために、付けろ」


 コノハを見上げて、どうしようもなく動けなかった。


「無くしたといえば私は怒られない」


「恩に着る……」


 ただただ偽りの腕にすがった。


 血は通ってないはずなのに、暖かく感じた。


「こうつける」


 付け方を教えられ。


「最初は感覚を針の穴に通す感覚で操り方を探る」


 使い方を教えられた。


 最初は肘を曲げて握り拳しかできなかった。


 頑張って頑張って、コノハと手遊びができるようになった。


「最初はグーだ!」


 咄嗟の手の動きはできなかった。



 日が昇るまでにマスター、日が昇るまでに会得しなければ。


「そろそろ、朝になる」


 ダメだった。


「そう諦めるな、私よりもう使えている」


「まだ実戦には使えない」


「しばらく使うと感触もその機械から知れるようだぞ?」


 元に戻る可能性があるなら、続けよう。


「剣をやる、いざという時は使え」


「貰おう、まだ死にたくない」


「良い心がけだ」


 剣を右腰に付けた。



「助かった、コノハのおかげで願いが叶うかもしれない」


「そうだ、これを持っていけ」


 振り返って飛んできた光り物。


 咄嗟に右手でカチャンと受け取る。



「これはコインか」


「片手間にコインを泳がせて遊ぶのも、良い練習になる」


「……できたらちょっとかっこいいな」


 コノハがうむと同意してくれる。


「さっさと、帰るがいい」


「ああ、悪いな」


「次こそは本気を受け止めて欲しい、その程度だ」


 受け切れる相手は俺しかまだ居ないらしい。




 俺は剣死。



 まだ利き手で剣を握れない。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ