遅咲きの才能
ベッドにミストを寝かせ、その隣にカゲ。
『んーんー!』
服を握って抵抗を見せてくる。
「離してくれたらキスしてやらんでもない」
「……むっ」
離れたのでじゃあなと言ってみる。
「うらぎりもの!」
「冗談だ」
約束のキスをいつもより長く届けた。
「むふふ」
後味が苦い。
「悪いが、前みたいに床で寝てもらうことになりそうだ」
もう夜になっていることに、内心驚いている。
「どうせ酒臭いので大丈夫です」
日付のように俺達も変わらないといけない。
「もっといい生活は用意するつもりだ」
「はい、大きなベッドが二つに増えてほしいです」
俺は一旦ギルドに戻って危険因子を調べることにした。
街を闊歩する中でリドルの話に耳を傾ける。
「で、成果は?」
「とくになーし、だけど銀髪のミトラが怪しい!」
「賛成だな」
「カゲの推理は合ってるかも?」
「それはないな」
ギルドに入ってシンスを探す。
発見して声をかけた。
「ん? なんの御用?」
どうやらお酒を嗜んでいる様子で、コップと一緒に振り返ってきた。
隣に座って話を引き出す。
「ミトラが何者か、知りたい」
「変な子、触ると不気味な感触に寒気が走るって言われてて、本当で恐ろしかったわ、次期追放候補」
酒の力のおかげでシンスはベラベラ喋ってくれる。
「追放?」
「何か良い戦績もないし、気味悪がられて影も薄い、存在価値ある?」
賛成だと首を縦に振る。
「じゃ、そういうことでシッシッ」
「他にも話したいことが」
すっと差し出されたコップ。
半分ほど残っている酒を飲み干した。
「飲めって言ったかしら?」
急いで酒を入れ直し、ミスをなかったことにする。
『それで、なんの話をご所望? このおおらかで美しく赤いホウセンカのように刺激的なシンスと』
手を広げてわざとらしく花弁を演じている。
『……俺の近くにも、ホウセンカが咲いていてな』
地の果て、地位の果て。
奴隷として見ていた悪夢は覚め、代わりに冷めた飯を頼りに今を食いつなぐ。
タンザは夜窓のガラスを細く長い薬指で撫でた。
寝れない輪郭を撫でて休みを案じても、気休めにもならない。
休む気にもならない。
少し前なら、くたびれた顔だと殴られたかもしれない。
ふうっと吐く息が外を曇らせた。
陰った世界をキュッキュと親指の付け根で拭う。
『見えない未来はもう見たくない』




