特等席は一つだけ
カゲをかわいいと思うことは、ほとんどない。
元々ボーイッシュでミストのような媚び売り素振りを見せない。知らないんだと思う。
『怪我してなくて、よかった』
時折見せる透明なアタックに愛しさを感じる。
「ルビーが大丈夫だと良いんだが」
「今、エムと話しているのはカゲだぞ……?」
他人の話をするなと刺される釘。
トントンと透明な人差し指が唇を撫でてくる。
「心配性なんだ」
「カゲの機嫌も心配しろ……」
不機嫌な唇を探してぺたぺた撫で返す。
むにむに。がぶっ。
「いてっ」
カゲに中指が食われた!
「ふんっ、逆撫でするような真似をするからだ」
途中でミスト達に呼ばれてドラゴンの掃除をやらされた。
ルビーは息はあるようだ。タンザの膝枕が輝いて見える。
「あれ? 黒い髪の……」
「俺の後ろにいる」
「そっかー、透明になれるとかー」
普通に居ると思っているミスト。
そのカゲが、俺の首に巻きついて邪魔をしていると知ったら。
俺の前に座って透明な姿をいいことに、視界の邪魔にならない程度のキスをしてきたら。
「ここはカゲの特等席だ」
どう思うだろうか。
「そうだな」
「エムはお堅いのに、口は柔らかい」
「気のせい」
骨が折れる作業。
繰り返し、折り返し。
鱗に短剣を滑らせて切り返し。
骨が折れた作業。終わった作業。
「……うにゃあ!」
はっと目覚めたルビーが周りをキョロキョロ。
「大丈夫ですか?」
「にゃ」
問題ないと頷いてゴロゴロ。
「疲れたな」
ギルドクエストということは倒した証をシンスに持っていけば処理してくれる。
ミストはドラゴンの牙を力づくで引き抜いていた。
「これ収めとけばよーし!」
「ゲコゲコー!」
ふてぶてしいゲコガエルがミストの頭の上で膨らむ萎む。
「もう帰ろう! リュウキくん!」
「カエルだけに?」
ちっちっと舌を弾ませて指を振るミスト。
『フロッグ! 魚のように引き上げる! 撤退だよ!』
「一緒じゃないか」
「フロッグの方が一枚上手なのだ〜」
「もうそういうことでいいな」
ドラゴンを毟るだけ毟ってその場を後にする。
「ところで、どうして青い炎を吐けるドラゴンは高い金になるんだ?」
「それは〜」
ミストが言うにはドラゴンの体の中に石ができている証拠が青い炎らしい。
その石は固く美しく。魔力を持つと言う。
「それを取らないといけないんじゃないのか」
「解体チームを帰ったら派遣するから大丈夫」
ピッと立てられた親指を信じることにする。
「帰ったら久々にギルドでパーティするはず」
「パーティ?」
「たまーにあるよ」
「だから、ちょっと早足なのか」




