手紙
ドアから誰かが入ってくる。
『……』
ドアを閉めると近くの棚を物色し始めた。
一人分の足音。
俺は静かにドアの方へ移動しながら隙を狙う。
別の棚に移動しようと足音が強く鳴った。
『クレア』
俺の声と共に優しい光が部屋全体に供給され。
「だ、誰だ!?」
相手は短剣を抜いて刃先を向けてきた。
「誰でもいいだろ」
「見逃さねえと死ぬことになるぜ!」
ヒュッと突き出される短剣。
相手の手首と腕を掴んで抑え込む。
「手放さないと死ぬかもしれないな」
肘を強引に曲げさせ、震える剣先を首元に近づけさせていく。
「ぐっ……やめろ!」
「降参するか死ぬか」
「わ、わかった!」
短剣がキンッと地面を跳ねた。
「仲間とか居るんじゃないか?」
「この姿を見たら、見張りなんて逃げちまうさ」
それもそうか。
「クレア、商人を起こしてくれ」
「うん」
しばらくして寝巻き姿のおっさんが現れた。
「お前が盗んだのか、何度も何度も」
「す、すまねえな……お縄でもしてくれ」
「ああ、お縄にしてやる、帰ってきたらここで商人の術を教えてやろう」
「なんでだ?」
「お前はモノを見る目がある、それだけだ」
縄でグルグルにされた男を商人は連れていく。
「報酬は出されるようにしておく! よくやってくれた、もう帰っていいぞ!」
俺の手には鍵が残った。
「……あんた、この鍵でどうするつもり?」
「冗談だ」
俺は鍵を棚に置いた。
「一緒に食べましょ」
そう言って餅を持ってくる。
「まだすることはあるからな、全部食ってていい」
「ちょっとは食べてよ」
「食わなくても動けるぞ」
食ったら横腹が痛くなるリスクがある。
「ダメ!」
言い返そうとしたら口に餅が押し込まれた。
「健康に悪いから」
自分で餅を抑えて食べ続けてみる。
「……甘いな」
「でしょ」
食べ終えた俺達は商人の倉庫を後にした。
「もう帰っていい、寝たいだろ」
「あんたは?」
「稼がないとシンスに怒られるからな」
「応援してる」
クレアと別れた俺は、いつものようにクエストワークに寄った。
「はい、今日も高額依頼ですか」
「そうだ」
「そう言えば、あなた宛てに報酬が届いています」
さっきの商人の件で報酬を受け取る。
後でクレアと分けないとな。
「今日はどんなのがある?」
「ドラゴンしかないです」
倒す人は居ないのか、金額もつり上がっているそうな。
「楽にできるやつは?」
「特に」
「そうか」
俺はクエストワークを出た。
昼頃には、ドラゴンの討伐隊が募集されてもおかしくない。
その時が狙い目かもしれないな。
『君、リュウキさん?』
歩いていると不意に声を掛けられた。
「ああ、そうだが」
コートを羽織った少年が近づいてくる。
「これ、手紙です」
「助かる」
受け取ると少年は手を振って街に溶け込んでいった。
近くのベンチに座って手紙を開く。
豪華なデザインの正体はソラン。
あなたを追放する気はなかった、信じて。
お願い、あなたが居てくれないと何も回らない!
ご飯はないし、葉巻もないし、お金もやばい!
周りのギルドからよくわからない話もされたんだけど!
戻ってきてちょうだい!
ギルドマスターソランより、親愛なるリュウホウへ。
リュウホウって誰だよ。
汚い文字で書かれた手紙を綺麗に折り直して考える。
戻ったらどうなるんだろう、ゾクゾクするに決まってる。
どっちが気持ち良いのか、考えておかないとな。
ピッケルを五本買った俺は草原の洞窟で鉱石を掘りまくった。
カンカン、カンカンカン。
ピッケルを四本潰して最後の一本。
どこまで掘り進めたのか分からない。
勢い良く叩いてポロリと出た鉱石。
大きめの白いクレスを手に取った。
こんなもんでいいか。
落ちた鉱石を集め、ピッケルを置いて洞窟を出る。
もう陽が上がってしまいそうな空を見上げ、不意に思った。
俺って変なやつなのかもしれないな。
街に戻ってギルドに入る。
『シンス様はおやすみ中よ』
一人の美女が耳打ちで教えてくれる。
「そうか」
「何か、用があったのか?」
振り返るとコノハが。
「いや、クレアに鉱石を売ってもらおうと思っていただけだ」
「それ全部か?」
「そうだ」
はち切れんばかりのカバンには、押し込んだ鉱石しか入れてない。
「では、クレアが訪れるまで話をしよう」
コノハについていき、空いた椅子に向かい合って座る。
「ここまで生き残られると興味が湧かずに居られない」
そう言って近くの美女を寄せると何かを頼み始めた。
「そっちも聞きたいことはあるだろう?」
テーブルに酒の瓶と二つのガラスコップが届く。
コノハはコップにそれぞれ酒瓶を傾け始めた。
『特にないんだが』




