気に食わない
『ふふふ……』
ルビーが、天井のランプに照らされてキラリと光る糸にシュッシュと握った拳をついてくる。
「にゃにゃにゃ!」
糸は触れる度にふわりと舞い、その揺れに更に誘われている。
見ていて面白い。
変に身動きができると突っ込んで俺に襲いかかるが、馬乗りで拳を振ることしかできなければ、危なくない。
糸をクイッと引き上げるとにゃあにゃあ両手をピンと伸ばす。
ゆっくり竿をルビーの視界からフェードアウトさせ、片手でしまい込む。
腰に竿先を当てながら押し付けるだけでカチカチコンパクトになるのは便利だ。
「にゃーー」
「おしまいだ」
良い機会なのでこのまま猫耳に手を伸ばす。
「うにゃ」
親指で耳の内側に触れる。ルビーがくすぐったそうに足でドンドン床を叩く。
「にゃにゃああ」
「抵抗は無駄だぞ」
口元をアワアワさせて頬が赤くなってきた。
可哀想なのでもうやめよう。
「にゃー」
猫耳を両手で隠して唸ってくる。
「うー」
「悪気はなかったといえば嘘になる」
ルビーに手を退けて貰えるように交渉しているとドアがガチャっと開いてきた。
『え、えむ……』
「げっ」
俺は立ち上がって今までのことをなかったことにする。
ルビーの猫耳は触っていない。ルビーの猫耳は触っていない!
「またそうやって、ルビーの耳をわしゃわしゃと……!」
「触ってないぞ?」
「では何を! まさか!」
あっ、やらかした。やらかしてしまった。
「いや、やっぱり、触ったぞ?」
この肯定はカゲに不審に映ってしまう。
「か、カゲが居るというのに他のメスとスキンシップなど……」
俺に詰め寄ってくると今にも泣きそうな様子でピョンピョン跳ねてきた。
「猫耳を触ったんだぞ?」
「カゲの耳では不満か? カゲに魅力はないか!?」
「魅力的だぞ、間違いない」
「〜っ!」
カゲは気に食わないらしく、俺をドンと突き飛ばしてきた。
「……」
ムスッとした様子なのは見ていてわかる。
唇が分かりやすく小さくなり、じっと睨んでくる。
「…………」
しばらくすると空いた距離を詰めるように一歩二歩。
ルビーが何事にゃって感じで俺とカゲを交互に見ている。
『……はぐ』
「なんだって?」
『ハグ!』
言われて近づくとカゲが応じるように離れていく。
「よく分からないぞ」
「ふんっ、わからず屋」
思った以上に、ご機嫌ナナメで困った。
どうにかして機嫌が取れないか考える。
ポクポク考えて見た。
「うにゃああ」
ルビーは暇そうにあくびをしてベッドに転がってしまった。
「そうか!」
俺は近づくことばかり考えていたが、近づかせてもいいんだ。
この空間にある椅子は一つしかない。
俺はその椅子を占拠してカゲを見守ることにした!




