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全てを受け止めていたら最強になっていた。  作者: 無双五割、最強にかわいい美少女五割の作品
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閑話 カゲのわがまま











 カゲの姿に見かねたクレアは、ミストとリュウキの間に手を伸ばした。


『はいはい、もういいから』


 ミストが残念そうに声を漏らす。


「キスが恋愛の全てじゃないし」


「それはそうだけどー」


 クレアが歩く姿を見て、カゲは姿を消して追いかける。


 時折足を止めては振り返っていた。



 ギルドの倉庫に入った二人は武器の素材を鞄に詰め込む。


「これとこれとこれ、あそこにあるから」


「わ、わかった!」


 言われた通りの素材をカゲは持ち込む。


「良い剣を作ったら、良いだけ」


「うむ……」


「そもそも、ミストは不利だからそういうのって」


 鉱石と木を揃えたクレアは鞄を背負って倉庫を出た。カゲも駆け足で後を追い、ギルドを出るまで姿をくらます。


 透明な状態を外に出てからすぐに解く。それに気づいたクレアは驚いていた。


「消える時は消えるとか、現れる時は現れるって言いなよ」


「す、すまない」


「あいつの真似するのはやめて」


 エムもクレアのように内心怒っているのかもしれない。カゲはそう思った。


「ごめん……」



 クレアの家に戻るとカゲは前のように奥の部屋に案内された。


 武器を作るクレア・ウィザードの心臓とも言える仕事場。


「熱いのはもう慣れたでしょ」


 赤い熱が密かに広がる隠れた鍛冶場。


「慣れはしない」


「良い汗って悪くない匂いするんだって」


「我慢する」


「嘘だけど」


「……我慢する」


 鋼鉄の小壺にギルドから持ってきた白い鉱石をクレアは入れていく。


「剣の作り方、覚えてる?」


「その……輝く湯を型に流し込んだ所は覚えている」


 カゲは小壷が置かれた火から一歩下がった。


「刀は叩いて形を作る、同じ武器なのに全然違うよね」


「エムは刀を扱えない……」


「作り方の話。重くて小さい剣作るなら重ねないと」


 小壷を鉄ハサミで捉え、中身を細長い型に流し込む。


 クレアは注ぎ終えると慎重にその場を離れた。


「剣ができたら叩いてもらうから」


「クレアがした方が……」


 カゲの記憶の中に剣を叩いたことはない。


「全部やったらそれって買った物をあげるようなものでしょ」


「失敗作は、渡せない」


 剣は唯一持ち主を守る。


「叩くなんて誰でもできるし」


「……」


「好きな人のために頑張らないと」


 小壷に鉱石が落とされる。


「これも入れちゃおっかなー」


 クレアは一際大きなクレスを取り出した。


「それは……」


『返却するだけだから』


 それから三本の剣の元が生まれた。



「これを重ねて叩けばそれなりに重くなるんじゃない?」


「聞かれても」


「頑張って」


 火の近くで作られた台に剣と叩く為のハンマーが並ぶ。


「熱して柔らかくしてから叩いて合成する、簡単なことだよ」


「力はそんなにない」


「クレスなんてそもそもピッケル一つで弾き出されるんだから、大丈夫だって」


「……頑張ろう」


 カゲは剣を重ねて火にくべた。


 ハンマーを手に取って真っ赤になった剣を一つにする為に叩いた。


 叩いた、叩いた、叩いた。


「……っ!」


 ジュワリと流れた汗が剣の上で蒸発する。


「血と汗がにじんだ剣ってこういうことかも」


 弾けた火の粉をカゲは気にしなくなる頃に剣が一つになった。



 前と変わるのは重さのみ。



「磨いて研げば完成」


「見た目は前のままが良いと……」


「大きさの話じゃないの?」


「カゲも、黒い方が好きだ」


「じゃあ黒くしよっか」


 剣を漆黒に染め上げ、刃を白く研ぎ上げる。


 クレアが剣を擦るだけで白と黒を抱いていた。


 黒を包む白は、確かに研がれた証。


「すごい」


「名前を刻む時が一番たのしいけど、前みたいにカゲで良いかな?」


「わ、分かりにくいように炭で書いて欲しい」


 炭で黒い刀身に書いてしまえば、読めない。


「どうして?」


「恥ずかしい」


「本当に書くから」


「待て」


「ほら、やっぱり」


 カゲは剣から目を逸らしながら刃を人差し指で触れる。



『書くなら、リュウキと……』



「本来は作った人の名前を記すんだけど」


「今のカゲはエムが作ったようなもの、カゲと刻むより」


 言い切る前に頬を赤らめながら下唇を抑えるカゲ。


「後悔しても知らないよ、好きな人の名前なんていくらでも呼べるのに」


「……や、やっぱりカゲが良い」


 名前を刻むと鞘の話になった。


「木が鞘に向いてると思うかな、たしかに軽い方が良いし」


「少々、ダサい」


「黒くしたら統一感出るって」


 しかし、耐久力に不安が残る話がポツリ。


「剥き出しでもいいんじゃない?」


「……」


「ただでさえ重いんだし、叩き斬る方なら多少のサビなんて」


「だ、だめだ、だめ……」


「えー?」


 クレアに理由を聞かれ、カゲは言えないと首に振る。


「じゃあ鞘なし」


「剣を背負った時に、おんぶと抱っこがして貰えなくなる!」


「は、はあ?」



「……っ!」


 恥ずかしそうにパッと顔を隠してしまった。



「自分から背負われにいってるわけ?」


 コクコクとカゲが頷く。


「この際、やめたら?」


 フルフルと否定的なカゲ。


「重い剣作るなら尚更、我慢しないと」


 フルフル。


「さすがに嫌だと思ってるよ」


 それはないとフルフルフルフル。


「クレスで鞘作るね」


「エムなら許してくれる……多分」


 真っ黒に仕上げた鞘は剣とよく合う代物だった。



「全部黒って趣味わっるいけど」


「どんなものでもエムはかっこいいという証拠だ」


「そう?」


「そうだ」


 クレアは剣をひとしきり眺めてカゲに差し出す。


 真っ直ぐ伸びた腕はプルプル震えていた。


「早く取って、重い」


「あ、ああ!」


「……疲れた、さっさと渡してきたら」


「そのつもりだ」


 大切そうに抱えるとカゲはクレアに背を向けて歩き出した。


「むっ」


 不意に足を止めて赤い布に気づく。


「あれは、使うのか?」


「別に、欲しいならどうぞって感じ」


「貰おう」


 布はカゲの背丈ほどある長さ。


 丸めてポケットに収めると剣を持ち直した。



『クレア、ありがとう』



「まあ、うん」


 カゲはクレアの家を静かに出ていった。








「……はっ!」


 リュウキの胸元で寝ていたカゲが目を覚ます。


「どうしたんだ?」


「寝てしまっていた」


「そうか」


 直された窓から見える空は暗くなりそうな赤を主張する。


「エムにまだプレゼントがある」


「気になるな」


 胸からガサゴソ取り出してリュウキに見せた赤い布。


「何に使うんだ?」


「腕がないのは痛々しい、これで隠したい」



 見る度に脳裏でフラッシュバックする後悔。



 カゲは隠すことで思い出すことを避けたかった。



「頼んだぞ」


 頷いてリュウキの首に布を巻こうと身を寄せ、腕を回す。


『良い匂いがするな』


 リュウキは匂いを辿ろうとスンスン鼻を鳴らした。




「え、えむ……」


 カゲの布を結ぶ手が止まった。












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