最強な彼女
見ていて意味がわからなかった。
ミストが手を振り上げた時には眼前の草地が一直線に消え、その先は大地の狭間が生まれ。
その欠片はミストの手の上に、垂直に切り取られていた。
大地の欠片は緑を帯びた大剣に姿を変える。
大きさは俺なんて比較にならない。
剣先を見たいなら見上げる必要があるほど巨大だった。
『リュウキ、どうー?』
「想像以上だ」
「すきって言ってくれないと、振ってあげないよー」
「好きだぞ」
「えーいっ!」
瞬きの瞬間には振り下ろされた大剣。
大地の狭間の鞘にダンッと収まった。
その過程でドラゴンは真っ二つにされていた。
「ふふふー」
ミストって何者なんだ? あの大きな剣を一瞬で振る?
「すごい? えらい?」
「すごくえらいぞ……」
凄いと偉いで片付けていいのか、分からない。
コノハといいミストといい、シンスって相当凄いんじゃないか?
「撫でてー」
近づいてきて、頭を下げてくる姿はかわいらしい。
「ああ……」
簡単に殺されそうなので、撫でさせて貰います。
上には上がいる。
「優しく触るから、引かないで……」
「引かれるのか」
うんと力強く頷くミスト。
「キモチワルイっていっぱい言われるから、普通の剣とか触るんだけど」
「だけど?」
「そんなのしばってるみたいでばからしくて……おちんちんしばってるのに戦い方まで縛りたくないなあって」
妙に説得力があった。
「だから、戦わないようにサボってた」
えへへとミストが笑う。
「戦った方がいいぞ」
こんなに強いなら、他の国も放って置かない。
「好きな人のためにしか、戦いたくなーい」
「どうしてだ?」
「剣っておちんちんみたいで、その……見たら大きくなっちゃう」
「単純に疲れてるとなりやすいんだぞ」
「でも、好きな人が近くに居たら大きくなるのも仕方ないなあって」
こんな暴れ馬は放っておくかもしれない。
「……大きいな」
「っ!」
ミストがスカートを引っ張りながら後ずさる。
頬をてらてら赤くさせて恥ずかしそうにしていた。
「ど、ドラゴンのしょりとかはリュウキがが……」
「倒してもらったからな、任せてくれ」
「木陰で、休んでくるねっ!」
そう言ってミストはタッタッと身近な木を横切って見えなくなってしまった。
『近くに木影はあるんだが』
俺は死んだドラゴンの処理をすることにした。
近くで見てみるとミストの凄さが分かってくる。
鱗を引き裂くような一撃ではなく、まさに切断の領域。
可哀想とは思わない、苦しむ前に終わったんだからな。
鱗は鎧の素材になったりする。牙も磨けば短剣、舌は乾かせば高性能な袋に。
俺にはそんな技術ないが。
とにかく、せっせと処理を続けた。
リドルが痒いところに力を貸してくれて、すぐに終わりそうだ。




