思い出
いつになったら戻れるんだろうなーって思いながらその場で過ごす。
『そんなに戻りたい?』
リドルがじーって見てくる。
「ああ」
「どうして? こき使われてるし、何もいいことない」
「そこが良いんだ」
動くことは何も悪くない。
「変なのー」
「それに、心配されるっていうのは嫌いなんだ」
「認識されてて羨ましいなあ」
「心配は酷いサビだ、調子の歯車を腐食させる」
夜まで代わり映えしない日常。
これが本当の日常なら、俺は楽しい日常を過ごしてきたのかもしれない。
「どうしようもなく、暇だ」
夜は暗い。そしてカゲはまだ寝ている。
「そう? 慣れちゃった」
「慣れていたんだが、月が嫌いになってな」
タンザとルビーは宿で羽を休めているんだろう。
「まあまあ、こういう日常も悪くないよ」
そう言って触れてくれるリドル。
「そうだな」
カゲを観察していると、姿を見せてのそのそ出てきた。
目をこすってイスをベッドの近くに持ってくる。
座ってから心配そうに見てくる。
「ちょっと、寂しそうだね」
「この状況で何か伝える方法があればいいんだが」
「あるよ、このリドル様にはある!」
「詳しく聞こうか」
リドル様の作戦というのは、リドル様が物を動かせることを活かして何かをするという作戦らしい。
「そうだな、カゲの髪で猫耳を作ってくれるか?」
「何か思い出なの?」
「一瞬で俺だと分かってくれるくらいには、思い出かもしれない」
「分かった! 作り方教えて!」
教えるとカゲの後ろに移動して髪をわしゃわしゃ触り始めた。
「触れるんじゃないか」
「触ってるんじゃなくて、動かしてるの! 髪の感触はわかんない!」
触られている間、カゲは何も思うことはないようだ。
猫耳が仕上がる。かわいく尖った髪が揺れる。
「リドル様に掛かればこんなもの!」
「しかし、気づいてくれないと意味ないぞ」
「じゃあこう!」
そう言ってカゲの頭をツンツンするとカゲは髪に触れ始めた。
どうやら、リドルの神業にカゲが気づけなかっただけらしい。
髪をぺたぺた触れて、組み上がった猫耳に気づく。
『え、エム……』
周りを見て何かを探す素振りを見せる。
「喜んでくれて何よりだ」
『エムぅ……』
そのままポロポロ泣き出してしまった。
「あーあ、泣かせちゃった」
「生きてるんだって喜んでくれると思ったんだが」
「思うところがあったんじゃない?」
カゲは猫耳を崩さないようにゆっくり手を離して涙を拭う。
余計に寂しそうに見えてきた、しない方が良かった。
「それはないと思うよ」
「だといいが」
その間に俺の白い枕に手を伸ばしたカゲ。
「すまない、エム……」
謝りながら引き抜くと枕をギュッと抱きしめた。
顔を埋めてフルフル猫耳を揺らす。
「枕取るなんて」
「俺は別にいいぞ」
そもそも寝ないからな!
「非常識っていうか……」
「かわいいじゃないか」
「リュウキが非常識だった」
枕を抱いて満足したカゲは、そのままベッドに入ってきた。
枕を抱きながらゴロゴロ。
「なんで病人の隣でエンジョイできるの?」
「寂しくなくて良い」
満足したのか、転がることをやめたカゲ。
枕を取った代わりに腕枕をしてくれた。
「これは許すしかない」
「そう?」
「そうだ」
なんとなく、頭が暖かい気がした。




