ロイヤルストレート
ドラゴンに対して飛び上がりながら頭に剣を叩きつける。
固い鱗に跳ね返され、後ろに体が持っていかれた。
なんとか着地しても、このままでは勝ち目もない。
逃げようにもカゲは助けてくれない!
『もう一度!』
近づいてドラゴンの爪を避けて、また避ける。
隙を縫うように突いて見るが、意味を成さない。
ダメージを与える方法はあるのか?
食われそうになって首の魔道具に魔法を委ねる。
手を向けて火を念じる。
ボワッと吹きでた熱がドラゴンの顔を隠し、バチバチと消えていく。
「グオッ!」
ドラゴンは驚いた様子で首を振っていた。
このまま首を落とす為に攻撃するが、まるでダメだ!
「や、やめろっ!」
喉元に溜まった赤い光が唐突に輝く。
吐き出される火炎を避ける為に大きく移動したいが、この程度の移動では!
『無理はするな』
声と共に吹き荒れた突風が俺を左に突き動かす。
従うと大きく転がされ、ドラゴンの炎から離れることができた。
「助かった……って、レオだと」
『そうだ、疾風神レオである』
「お前! 俺を殺すつもりだっただろ!」
『まあ待て、貴様を吹かせるまでもなくなった』
突進してくるドラゴンを片手で起こした突風だけで押し返すレオ。
『この竜の前には我々共々、風前の灯火』
その風は勢いを増し、雨さえ吹きつける豪雨の如く。
『悪しき風は消さねばならない』
敵では、ないらしい。
「信じたくないな」
「殺す理由は金だ、金さえあればどうでもいいのだ」
だから殺さぬと言い切るレオ。
「信じるぞ」
「では風に身を委ねろ」
「お前がやれよ」
「嫌である」
吹き上がる風に運んでもらい、ドラゴンの背中に降り立つ。
しがみついて俺は役目を果たすことにした。
まずは刺さったままの剣を抜くこと。
「返せ、俺の剣」
頭まで近づくがドラゴンもそれを知っている。
変に動いてやらせてくれない!
「くっ、うわっ」
そのまま滑り落ちた俺はドラゴンにジトリと睨まれ。
「レオ!」
「もし死ぬのなら、それも良し」
自分でなんとかするしかないのか。
剣を向けて来るなと威嚇する。カエルの威嚇はヘビに効かない。
ドラゴンはそんな俺を大口を開けて寄せてくる。
『来るな!』
全身をしならせ、一瞬の風として反撃する。
剣を逆手に握ってドラゴンの左目を潰しに狙う。
剣は狙い通り目を貫くと口がガコンと閉じられる。
右腕を巻き込んで閉じられる。
『クッ!!』
顔を振り上げて慟哭するドラゴン。
容易く全てが持っていかれて崩れ落ちる。
ただただ、ありえないことに体が離れようとする。
この場から離れたら、無くなったものが無くなるんじゃないかって。
『死ぬかもね、リドルと一緒だね』
掻き消されそうな意識がぼやけて、ボヤいた。
『痛い、居たい、生きたい』
『エムっ!!』
痛いという感覚すら奪われ。
横になって事の顛末を眺める力も奪われた。
『早く隠れましょう! ドラゴンが炎を……!』
『カゲは、エムを生かしたい』
『なら魔道具で止血するんです……はあ!? 魔道具を持っていない!?』
バサバサと風に謝られる。死んでも償えない。
バチバチと炎に言われる。にゃあにゃあにゃあ。
『火球だとぉ!? くるでなーーい! ぐわああああ』
疾風神レオの声だけが響いていた。




