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悪役令嬢に転生したけど、魂と身体の相性が最悪ですぐ吐血します【連載版】  作者: 三來


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08.吐血令嬢はあんよが上手



 聖女になった翌日。


 私は早速キューピッドとして任務を果たすべく、なるべく二人を仲良くさせようと意気込んでいた……のに。



「どうしてこうなった」



 朝の柔らかな光が差し込む室内。

 白いレースのカーテンが揺れ、片側の窓には三人で並んで座っている構図が映っていた。


 私の左にはミアちゃん。右側には王太子のダリオンがそれぞれ座っていた。



「はい、コーデリア様。今日はハチミツのクッキーみたいですよ。あと、イチゴのジャムもあります!!」



 そう言って、ミアちゃんがキラキラした目でお皿を差し出してくる。



「ミア、先に飲み物を勧めてあげなさい」



 優しく嗜めながら、ダリオンはふっと息をこぼし、私の好みを確認するように言った。



……いや、まあ。状況の元凶は私でもある。



 部屋を訪れてくれた二人に対して「並んでお座りください」と言ったのは私だ。



 でも、違うじゃん。

 二人で並んで座ってね?? って意味じゃん。三人で横一列に並びましょうってことじゃないじゃん。


 ないじゃん!!



「えっと、お二人とも狭くはありませんか??」


「いや、特に不便は感じていない。ありがとう」


「私も!! コーデリア様のおそばの方が色々お手伝いできますもの」



 私の問いに、二人は笑いながら返してきた。


 ニコニコと返されてしまっては、もう何も言えないけど……違うんだよ、そうじゃないんだよ。



 何かきっかけを作らなくてはと、必死で頭を回す。



「そ、そうだ!! 私、長いこと歩いてなかったので、昨日練習してたんです。ちょっと見ていただけません??」


 逃げ道を見つけた気分だった。



 立ってしまえば席の並びも変えられる。私って天才かもしれない。



 善は急げと立ち上がると、グッと喉に血が上がってきた。


 少しだけ苦しいけど、気合いで飲み込む。



 今ここで噴き出したら、心配したミアちゃんが私のそばで待機してしまいそうだもの。


 がんばれ私。



「見ててくださいね!!」


 

 そう言って振り返ると、ミアちゃんとダリオンは私のすぐ後ろについて来ていた。



 あれ。



「では、私は後ろで控えていますね!!」


「私もすぐ側にいよう」



「……いえ、あの。一応聖女の回復があるので、倒れても大丈夫だと思うんですけど」


 お願いだから、座ってて欲しい。

 そんな私の願いは、どうやら叶わないみたいだ。



「何を言っているんだ」


「そうですよ。治っても痛いものは痛いですもの」



 さすが……お人よしコンビ。

 歩き始めた幼児になった気分だけど、こうなっては仕方がない。


 再度座るときにでも、誘導してしまおうと切り替えて、私はなるべく美しい姿勢で歩き始めた。



「すごい!! 背筋が伸びてますわ!!」


「あ、ありがとう…ぶっ」



 ミアちゃんが些細なことで褒めてくれるのは、正直嬉しい。


 それでも調子に乗ると吐血するのが私の身体だ。


 歩きながら話しただけでタラリと落ちた血を、ミアちゃんは即座に浄化しようとしてくれた。

 

 

 それを、ダリオンが諭すように止めた。



「ミア、そうして助けてばかりでは上達することができないだろう?? 見守ってあげなさい」



 やってごらんとわたしを促すダリオンが、どうしても自分の母親に見えてしまう。


 ちなみに、めいっばい甘やかしてこようとするミアちゃんは、我が父とそっくりである。



 こうして、少し血を吐き、ゆっくり浄化しながらも部屋をぐるりと一周することに成功した。


 ついでに、向かいに二人を並んで座らせることもできたから、作戦の方も大成功だ。



 ノミの歩み並みの小さな一歩だが、嬉しい限りである。



 この勢いで、二人の共通点になる話題でも振ってしまおう。


 ゲームのシナリオでは確か……と、思い出している時だった。



 ダリオンが言いにくそうに口を開いた。


「婚約の件なのだが……」



 ああ。確かに、色々と有耶無耶になっていたっけ。



「破棄でしたよね??」



 私の確認に、ダリオンは横に首を振った。



 横に……??



「え??」


「すまない。婚約破棄の話しが白紙に戻ってしまったのだ」


「な、なんで!?」



 驚きと共に飛び出る血は無視だ。


 その血を、浄化していいのかソワソワしてるミアちゃんも視界に入ってくるけど、今はそれどころじゃなかった。



「私、王妃なんて無理ですよ!?」


「勿論!! 私もそう言った!! 王家としても概ね理解は示している。……が、公爵家の方がな……」



 そう言って、眉間に皺を寄せるダリオン。



「……中身は違えど、身体が変わらぬのなら問題がないだろうと」



「んなわけあるか!!」



 またもや吐血したわたしを見て、今度こそ!! っと浄化しはじめるミアちゃんだった。

よろしければ★評価、ブクマや感想などで応援いただければとても嬉しいです!!


全て励みになっております٩( 'ω' )و


お読みいただきありがとうございました♪

たくさん笑っていただけてますように!!


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