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悪役令嬢に転生したけど、魂と身体の相性が最悪ですぐ吐血します【連載版】  作者: 三來


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06.不遜で美麗な神様と吐血聖女


 驚いているミアちゃんと王太子。


 二人の目の前で「聖女」へとなってしまったのだけど、頭の中ではまだコーデリアの声が響いていた。



『貴女、加護による即時回復があれば、造血魔法は不要になりますでしょう??』


 私は、その言葉に驚いてしまった。



 まさか。聖女にしたのって、私をベッドから動けるようにするため!?



 確かに、造血魔法で血を補う必要がなくなれば、ベッドに縛られることもなくなる。



 ゲームでは自分がこの世で一番と信じている悪役令嬢の彼女にも、人を思いやる気持ちがあるなんて。


 少し感動を覚えているところに、何でも無いようにコーデリアは言葉を続けた。



『だって。わたくし自ら磨き上げた至高の美が、病人のようにベッドに留め置かれるなんて、あまりにも耐えがたいもの』



 あー。そっちかぁ……



 思わず乾いた笑いが出てくる。


 すべては彼女の美意識のためだったと。


 まあ、そっちの理由の方がしっくりくるあたり、さすが最凶悪役令嬢である。



『とは言え血を吐いてしまうのは治らないけれど……それは、こちらで進めさせますわ』



 そっか、血は吐き続けるんだ……。


 でも、吐いてもすぐにオートで血が回復されるなら、動けるようになるってことだよね。



 まあ、うん。ありがたい……よね??



「あ、ありがとうございます!!」



 私が急に声を上げると、ミアちゃんと王太子がビクッと体を震わせた。


 ごめん。でもさ、ほら。感謝はしとかないと。



『いいのよ。わたくしは、ちょっとだけあなたを不憫に思っただけ』



 コーデリアさんの声が美しくも不遜に響く。



「えっと、それでその……。他になにかしたりは……しませんよね??」



 感謝はあるけど、それはそれ。

 

 だって。神になったら何でもできてしまうんだもの。


 それこそ、コーデリアや私が受けたように、魂を移したり引っこ抜いたりも自由だろう。



 ミアちゃん達に手を出す可能性を連想して、冷や汗が止まらなくなってしまった。


 

 そんな私に、コーデリアは呆れたように溜息をついた。



『……あなたねぇ』



 その声を聞きながら、ミアちゃんをチラリと見る。


 かつて、この身体の持ち主が最も憎んでいた相手。


 私が固唾を飲んで待っていると、予想に反して彼女は高らかに笑い飛ばした。



『もう、そんな羽虫には興味無いの』


「へ……??」


『だって一国の王妃どころか、聖女よりも格の高い存在になったのだもの』



 いや、それはそうだけど!!



「ほ、本当に??」


『嘘をつく必要なんてないわ?? わたくしはこの身に相応しい高次元な存在になったのだもの。あなた、虫に対して嘘をお付きになるのかしら??』



「ツカナイデス」



 なんか、虫扱いされたけど、妙に納得してしまった。


 物凄く高い自己評価が、神になったことで釣り合いが取れたらしい。


 コーデリアは人類よりも神様に適性があったってことかな。多分。おそらく。



『虫は虫でも、あなたのことは哀れんではいますのよ?? あなたがわたくしの身体に入ってしまったのは、ねぇ??』




 ちゃーんと、理由はわかっていますもの。



 と言って彼女は笑った。


 この上ない味方を得たようで安心はしたけど。何だろう、なんか薄寒いものを背筋に感じる。


 そう思っても口には出せない私は、口元の血を拭いながら最後の言葉に耳を傾けた。


『せいぜい長生きなさいな。あなたの人生、わたくしがこの特等席から、ずーっと見守ってあげていましてよ??』



 最高に高貴な声で告げられた、「一生涯の見守り宣言」



『ではわたくし、お目付け役のオシゴトに戻りますから』



 そう言って、何も聞こえなくなった。



 お目付け役って。ってことは、もしかしてあの神様共の監視をしてるってこと……??



 そこまで想像して、私は何も気がつかなかったことにした。


 うん。やめよう。考えないことにしよう。



 私の復讐よりも、よっぽど酷い目にあっていそうな神様二人に心の中で手を合わせておく。



 ごめんね、その可能性は考えてなかったわ。



「コーデリアさん!!」


「べふぅうっ!!」



 突然ミアちゃんに抱きつかれ、衝撃で血を吐いてしまう。


 けれど、前のような倦怠感は消えていた。

 吐血と同時に、ぶわっと全身が温かくなる。


 これが聖女の即時回復か。すごいや。



「聖女になられたのですね!!」



 私が吐き出した血を浄化魔法で清めながらも、ウルウルと涙目で微笑むミアちゃんは、ものすごく可愛いかった。



「世間への発表は公爵家と我々王家で協議する。まずは、君が祝福を受けられたことを喜ぼう」


 王太子は話をまとめながらも、安堵したように頷いてくれた。

 手に持っているぶどうを私の口に運びながら「何か食べなさい」と餌付けしてくる姿は、王太子と言うよりもお母さんのようだ。



 でも、確かに喜んでいいことだと思う。

 だって、これからの掃除も何もかもを、誰の手も煩わせずに済むのだから。


 少しの安堵と喜びからため息が出た。


 よかった!! ちょっとだけど、いい方向に進んでいる気がする!!



 あとは、ミアちゃんと王太子のルートがうまくいけば……



 あれ??



 私は、ゲームのシナリオを頭の中で反芻した。



 たしか、コーデリアが処刑されて。それでミアちゃんが心を痛め、王太子が支えたのが二人の恋愛のきっかけだったはずで。



 でも、私は生きている上に、聖女になってしまって。



 あれ?? あれれ??



 私に抱きついたままのミアちゃんと、横でぶどう片手に微笑んでいる王太子を交互に見比べる。



 いや、これ完全にフラグ折れてない??




「やってしまったぁああ!!」



 思わず真っ青になった。



 私の大声に固まる二人をよそに、この日一番の吐血を披露した私なのでした。



ここまでが短編で公開していた作品のリライトでございました!!お読みいただきありがとうございます♪


よろしければ★評価、ブクマで応援いただければとても嬉しいです!

感想も励みになっております。


本日も良い1日をお過ごしください♪

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