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第12話 親バカという名の不審者


 最近はディアナやフロウ、ナタリーたちにいろいろ教えてもらっているのだが、なんかちょっと違和感がある。



「フェノン様、何か欲しいものありますか?」

「別にない」



 ナタリーは少し残念そうにしていた。

 強いて言えばゲーム機、マンガ、アニメの三種の神器ぐらい。魔法の本も読み飽きたし、自分が使えないとなればより一層興味も薄れる。



「そうですか……」



 剣とかも考えたけど、体力測定とフロウの講義をみるも、剣術と呼べるような攻撃も何度教わっても出来ない。


 お母様は教え方が悪いとか言ってわたしに剣術を教えようとしたけど、練習中のわたしを見て「フェノンのうまく出来ない姿もかわいい!」とか言ってわたしをバカにした。


 いろいろあってお母様は現在、部屋に引きこもってわたしがごめんなさいと謝りに来るのを待ってる。本当にめんどくさいお母様だ。



「おかあさま? 入りますよ」



 お母様の部屋に入るとお母様はベッドの上で体育座りしてた。



「フェノン……ほっといて。出ていって」

「うん、わかった」



 部屋から出ようとすると後ろから強く抱きしめられた。



「本当に出ていかないでよ!?」

「えぇ……」



 本当にめんどくさい。どうしよっか……?


 それからお母様の機嫌が直るまで二時間掛かった。

 お母様の機嫌を直した後は部屋に戻ってベッドの上でゴロゴロしてる。



「フェノン様、これ最新の雑誌です。読んでみてはいかがですか?」



 雑誌……? なんで?

 するとナタリーは雑誌を開いて見せてくる。



「最近はこういうのが流行ってるんですよ。ほら、こういうのキレイじゃないですか?」



 プラスチックのアクセサリーのページを見せてくる。



「これぐらい作れるし」



 魔力を外に出して切り離すと手のひらサイズのルビーが出てきて、ベッドの上に落ちる。



「そんな見も蓋もないこと言わないでください。こういうのはアクセサリーになってるからいいのです。そんな塊ごときに価値はありません」



 価値ありまくりだよ。これ1つでそこに載ってるアクセサリー何千個も買えるよ。



「というわけで買いに行きましょう。フェノン様には剣術よりも女子について学ぶべきです。一番近くの街なら30分あれば着きますので、日が暮れる前には帰って来れます」

「暇だからいいけど……わたしって外に行って大丈夫なの?」

「エマ様が一緒に行けば大丈夫かと……呼んで来ますね」



 なんでそんなにこだわるのかな……? 別に明日でもいいのに。

 ナタリーが戻ってくると黒いローブを着た準備万端のお母様が後ろにいた。そしてそのまま見事な流れで外出、馬車に乗って近くの街に向かった。


 そして馬車を降りてお母様と手を繋いで、街道をうろつく。



「フェノン、何か食べたいものある?」

「…………」



 お母様がわたしに話しかけたタイミングで偶然わたしの目にはホットドッグが映った。わたしにはそのホットドッグがとても美味しそうに見えた。



「アレが食べたいの?」



 わたしは流れに任せてたらうっかり頷いてしまった。

 いや、まあ、食べたいけどさ。街に来てまでホットドッグって……



「すいません、これ1つ」

「はいよ。ってエマ様じゃありませんか。じゃあそっちのお嬢ちゃんは……娘さん!? こんなエマ様からこんなに可愛い娘が生まれるとは……」

「悪かったわね。こんなエマで」



 そんなこと言いながら喜んでるお母様マジMっすね。



「そんな変態な性格してるからあんなやつから指名されたんですよ」

「へん……たい……っ!?」

「ちょっ!? お子さんの前ですから抑えてください!」

「そ、そうね……」



 なんかいま、お母様が本当にヤバいやつのような気がしたのですが……気のせいですよね?



「お嬢ちゃん、頼むからこんな残念なやつみたいにならないでくれよ?」

「うん!」

「フェノンに罵られるのもまた一興……」



 お母様のドMが急加速してます。ヤバいです。このままではわたしにまで被害が出ます。

 わたしはお母様から少し距離を取ってナタリーの袖を強く掴んだ。



「エマ様、フェノン様が引いてますよ。昼間の時みたいにもっと隠してください」



 ……まさかわたしが「おかあさまなんてきらい!」って言ってた時に興奮してたの!?



「へい、お待ちどうさま」

「おじさんありがとー!」



 わたしはおじさんからホットドッグを受け取り、お礼を言った。



「……本当にエマ様の娘さんだよな?」

「当たり前でしょ!? 私をなんだと思ってるの!?」



 おじさんはまるでお母様を誘拐犯だと疑うような感じで聞いていた。

 お母様はドM変態親バカかまってちゃんだとして、おじさんに普段のお母様がどんなのなのか聞いてみたい。



「変態だな」

「変態ですね」



 ドM変態親バカかまってちゃんと心の中で罵ったわたしに対して二人とも変態としか言わなかった。少しだけ悪いように感じたけど、これを気にしたら負けのような気がするので、わたしはホットドッグを口にした。



「フェノン可愛いよ! お母さんにその顔をもっと見せておくれ?」

「親バカだな」

「親バカというより不審者ですね」

「不審者!? どこが!?」



 全部だよ。全部。その服装から行動まで全部。いますぐ出頭してきなよ。



「フェノンも何か言ってよ!! お母さん普通だよね? ねえ?」

「異常者」

「!?」



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