雨粒が壁を濡らしていた。
そこに描かれた猫の瞳から垂れた滴が、泣いているように見えて寂しそうだと思った。
一緒に食べることはできないけれど、ぼくは橙色の実をその猫の為に持ってきた。

――食べなよ。
もちろん、返事はない。
猫はいつも空を見上げているから。ぼくのことは見ようともしない。
でも、もしかしたらある日、窓枠の中から飛び出して、ぼくの傍に来てくれるかもしれない。そう思えるほど、その絵は写実的だった。
きっと絵の中は、ぼくがいる世界とは違う。
哀しくて優しい世界。
苦しみも寂しさも等しく反映してくれる。
絵の前に置かれた実が濡れて、艶艶しく光っていた。