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殺人鬼転生 鏖の令嬢  作者: 猫又


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もう一波乱

 ローガンとエリオットはくすくすと笑っている。

「生意気を言うな!」

 とフェルナンデスは怒鳴った。

 マルクにまで舐められてたまるか、という怒った表情だった。

「で、ですけど、実際、どうなんです。ソフィアが失敗したら、叔父上が取りなして下さったとして死罪は免れても爵位は返上……領地も資財も没収ではないですか? こんな姿の父上とあの母上を抱えてどうしろと……それにケイトが嫁ぐオルボン家も縁談を断ってくるやもしれないじゃないですか! そうなったら……」

 マルクは今世で始めて一生懸命に頭を使った。

「ですから私は反対します! 王家の呪いを解くなど余計な事はやめてください! わざわざ災いを呼び込まなくてもいいじゃありませんか。必要以上に王家の覚えを良くしなくとも、これまでもこれからもヘンデル伯爵家は王家に忠誠を誓う忠実な家臣ですよ!」

「へええええええええええええええええ。マルク兄様、かっけえ。惚れそう」

 とソフィアがぶはっと笑いながら言った。

 その言葉にローガンがむっとした顔になる。

 ワルドはすました顔で、

「爵位を継いでからのマルク様は本当に伯爵家の事をよくお考えになっておりますね」

 と言った。

 マルクは、いやぁそんな、風な顔で頭をかいた。

 その態度にイラッとしたローガンの指先からマルクに向かって炎が放出される前に、

「別にヘンデルの名前を出さなきゃいいんじゃない?」

 と言ったのはエリオットだった。

 皆の視線がエリオットに集中した。

「フェルナンデス叔父上の紹介の優秀な魔術師、でいいんじゃない? 失敗したら責を問われるのは叔父上だって事で。成功すれば叔父上の名だけが上がるけどさ、マルク兄様が名誉とかいらないのならそれでいいんじゃないかな。こっちは報奨で宝物庫の中に入るっていう目的がある。それさえ叶えばいいし」

 エリオット、お前天才か、という笑顔でマルクがエリオットを見た。

「叔父上、それでよろしいですか? ヘンデル家の名前は出さない事」

「それでは我がヘンデル家には何も報奨がないではないか! ソフィアは私の娘だぞ!」

 と言ったのはヘンデル伯爵だった。

「この期に及んで、まだ名誉とか金が欲しいのかよ、おっさん」

 トゲのある声で答えたのはソフィア。

「芋虫のくせにまだ何か欲しいのか、ああ? それに今度あたしの事を娘つったら、耳からレイピア突っ込んで脳みそかき回すぞ」

 ソフィアに睨まれてヘンデル伯爵は気まずそうな顔をしたが、

「兄上、ヘンデル伯爵家の名を伏せても、この私が王家からの名誉を与れば、それは兄上が与ったも同じ事だ」

「いや、しかし、……フェルナンデス」

 

「じゃ、解散、解散」

 とソフィアが言って立ち上がり大きなあくびをした。

 フェルナンデスは「むう」と言い、伯爵も黙った。

 しかしソフィアは扉の方へ行きかけ、そしてフェルナンデスを振り返った。

「そう言えば、話が長すぎてスルーしてしまうとこだったんだけどさぁ」

 ローガンやエリオットが不思議そうな顔でソフィアを見た。

「どかどかと学院に乗り込んで来て人を罪人みたいに縄で縛りやがって、その落とし前はどうしてくれんの? おっさん」

 とソフィアがフェルナンデスへ言った。

「何?」

 とフェルナンデスがソフィアを厳しい目で見た。

「得意げな顔して手下を連れて学院に乗り込んで来て、一方的にこのあたしをひっ捕まえてさぁ。明日っからどんな顔して学院に通えっつうんだ? 乙女に恥じかかせやがってよぉ! ああ? くそじじい!」

 ソフィアがそう言うとフェルナンデスは気まずそうな顔はしたが何も言わなかった。

「でもソフィア様、超炎爆を降らして学院崩壊しちゃってるから、しばらく学院は休みになるんじゃないかなぁ」

 とエリオットが笑った。

 ソフィアがエリオットを睨んだ。

「ああ、そうさ。学院の連中が縄に繋がれて引かれていくあたしに面白がってゴミを投げてきやがるから、みーんな丸焼きにしてやったのさ。けどなぁ、それとジジイがあたしにした事は別だろう? あたしはね昔から……前世から、受けた屈辱は絶対忘れないんだ!」


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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます! お待ちしておりました! 早速、感想を書かせていただきますね。 マルク、必死ですね!当然といえば当然ですが。 それにしても、"爵位を継いでから、伯爵家のことをよく考えている…
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