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トカゲといっしょ  作者: (=`ω´=)


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とある冒険者の事例

「こんな顔の小娘たちを探している」

 ある冒険者がそういって、何枚もある似顔絵を集まった村人たちに差し出した。

「全員、空から落ちてきているはずだ。

 それなりに目立つと思うが」

「随分巧い絵だなあ」

「誰が描いたんだ?」

「描いたやつの名前までは知らん。

 ただ、おれたちが探している小娘たちの同僚だといわれているがな」

 その冒険者は淡々と説明した。

「ある程度の絵心があることは、空偵隊に入るための条件になっているからな。

 絵が巧いやつらがよってたかって、同僚の似顔絵を仕立てあげたって寸法だ」

「よくわからんが、この小娘らは、その空偵隊とやらの一員なのか?」

「詳しく説明するのは時間がかかるのだが、ざっくりといってしまえばそういうことだ。

 それで、おれたちは行方知れずになったその小娘たちを探している」

 その冒険者は、集まってきた村人たちに説明をする。

「探し出して、生きているやつらを仲間のところに連れ戻すのがおれたちの仕事だ。

 なにか知っていることがあったら、教えてくれ」

「それよりもこの絵、何枚かはまったく同じものが混ざっているな」

「おお、本当だ!

 こりゃ、寸分違わぬ」

「重ねて透かしてみても、ぴったりと重なるな!」

「この紙とかいうのも、薄くて軽くて、なかなか便利そうだが!」

「ああ、そいつは木版画といってな、トカゲ野郎どもがもたらした便利な技だ。

 見た通り、まったく同じ絵を何枚も複製することが出来る。

 ああ、もう、埒があかんなあ!」

 その冒険者は自分の頭を掻きむしった。

「おれたちはずっと遠い、東の方から遙々ここまでやって来たわけだが、その東の方ではそういう便利な技が、毎日のようポンポン流入して来ているんだよ!

 そんで、そこの地元連中は毎日そうした目新しいなにがしかに取りついて、どうにか必死に習いおぼえようとしている最中なわけだ!

 さらにいえば、そうした技の数々によって、それまでの生活が一変しようとしている最中でもある!

 トカゲ野郎どもは悪意のある連中ではないのかも知れんが、油断のならない連中だということは断言が出来る!

 うっかりあいつらのいう通りに動いていたら、いつの間にか身動きが取れない状態になっていたとしてもおかしくはない!」

「なんだかようわからんが、そのトカゲ野郎どもは、かなり厄介な連中らしいのう」

「厄介なんてもんじゃない!

 一番悪質なのは、やつらはあくまで自分の都合でしか動いていないってことだ!

 おれたち、元からこの土地に居る連中の都合など、これっぽっちも考えちゃくれない!

 だから、やつらの提案に乗る時は、しっかりと綿密に思案をしてからの方がいい!」

「でもこの絵を用意したのが、そのトカゲ野郎どもだとすると、その空偵隊とやらも、トカゲ野郎どもとやらの仲間ではないのかね?

 ここまで来てそのトカゲ野郎について警句を吐いているお前さんは、つまりはそのトカゲ野郎どものために働いているということになる」

「まったくもってその通りだ」

 その冒険者は大きく頷いた。

「おれの場合、考えに考えた末、この仕事をすることに決めたわけだがな!

 トカゲ野郎どもには、気に食わない部分も多々あるが、少なくとも金払いはいい!

 一攫千金を狙うためには、やつらの仕事を請け負って達成するのが一番の近道なんだよ!」

「一攫千金?

 それじゃあ、この小娘をどこぞに連れ帰れば、大金が貰えるわけか?」

「おお、そうともよ!

 もっとも、今のところ、手がかりすら掴めてねえがな!

 というか、捜索範囲が漠然としすぎて、その上広すぎるんだよ!

 おれと同じようにこの娘たちを探しに出た連中も居るはずだが、そのうちの誰が仕事を達成するのか、最早運の問題だな!」

「よくわからんが、大変そうな仕事だな」

「連れ戻せなかったら、どうなるんだ?

 つまりは、報酬的なことだが」

「なんにもねえよ!

 成功報酬だけだから、連れて帰れなかったらまったくのタダ働きだ!」

「いや、そりゃあ」

「なんというか」

 村人たちは、その言葉を聞いて顔を見合わせた。

「気の毒とは思うが、そいつは仕事と呼べるもんじゃないな」

「どちらかというと、博打だ」

「お前さん、ここまで来るのにも、長いこと旅して来たんだろ?

 その間の路銀なんかも、そのトカゲ野郎どもは出してくれんのか?」

「名指しで頼まれでもしない限り、必要な資金は自前が基本だな」

 その冒険者は真面目な表情で頷いた。

「かなり特殊な能力でも持ってなけりゃ、そんな指名仕事にありつけることはないはずだが」

「難儀なことだなあ」

「悪いが、この村の近くでは、この絵の小娘も見かけなかったし、空から誰か人間が落ちてくるって噂も聞こえてこない」

「見ての遠り、辺鄙なところだ。

 そんな変わったことが起こったら、それこそ末代まで語り継がれる」

「力になれなくて申し訳ないが、お前さんの力にはなれそうにもないな」

「ああ、いいんだ」

 その冒険者はあっさりと引き下がった。

「こっちとしても、そんなに大きなことを期待していたわけでもない。

 これまでも、ほとんどなんの手掛かりも得られなかったしな。

 その代わりに、といってはなんだが」

「今度は何かね?」

「水と食料を、分けてくれないか?

 対価はきちんと支払うから」


「今回も空振りっすね」

「そう簡単に見つかってたまるか。

 そんなに簡単な仕事なら、トカゲ野郎どもも莫大な賞金をかけないだろうしな」

「ごもっともで。

 で、まだ西に向かうんで?」

「こうなりゃ、行けるところまで行ってやるさ。

 すぐに当たりにぶつかるとは思っていないが、なんらかの手掛かりくらいは引き当てられるかも知れん」

「完全に運任せの世界ですね」

「金だけのことではなく、ギルドの仕事で手柄を立てれば、トカゲ野郎どもからのおぼえもよくなるからな。

 今後のことを考えると、多少の苦労をしてでも今のうちからやつらと繋ぎを作っておいた方がいい」

「繋ぎ、か」

 冒険者ギルドの連れは、少し考え込む表情になった。

「トカゲ野郎ども、空偵隊の件を追求しているってことは、西へ進出することを諦めていないってことですよね?」

「そうなるんだろうな」

 冒険者は連れの言葉に頷いた。

「空偵隊は、トカゲ野郎どもの先兵だ。

 いや、やつらに直接戦う力がないことは知っているが、先行して綿密に下調べをしておくと、なにもかもがやりやすくなる」

「ってことは、いずれは、空偵隊の邪魔をした連中と正面から衝突するんじゃあ?」

「ま、いずれはそうなるんだろうな」

 その冒険者は頷いた。

「空偵隊の邪魔をするってことは、その敵対者の側もなかなか頑固そうだし」

「大きないくさになりませんか?」

「なるかも知れんな。

 いや、きっとなるだろう。

 ただ、その時、正面から戦うのは、別にトカゲ野郎どもとも限らんわけだが」

「と、おっしゃいますと?」

「街道整備公団の連中だよ。

 連中、最近はやけに鼻息が荒い。

 トカゲ野郎どもの前に、連中が前に出て妨害者を排除しようとする、というのは、十分にあり得る」

「ああ」

 その冒険者の連れは、ため息混じりに頷いた。

「それは、大いにありそうですね。

 公団の連中は、なによりも土地がらみの利権が欲しいわけだから」

「いくさなら、交渉や取引によらず、強引に土地の使用権を入手する目も出て来るからな。

 欲の皮がパンパンに膨れあがっている今の連中なら、敵対者を見つけ次第戦端を開いても、別に不思議ではない」

「連中、勝てますかね?」

「さあ、どうだかな。

 寄せ集めもいいところだから、そっちの実力についてはなにもいえん。

 ただ……」

「ただ?」

「背後にトカゲ野郎がついて、なにかと支援するとなるとかなり頑張れるかも知れんな。

 いくさの勝敗は、結局はその場で使える物資の多寡に依存することが多い。

 それでトカゲ野郎どもは、その物資の流通制御に関しては、少なくともこの辺では右に出る者がない」

「それじゃあ、公団の連中が勝つと?」

「そいつは、なんともいえんさ。

 なにせ、肝心の敵のことがいっさいわかってないからな」

 その冒険者はそういって、首を横に振る。

「ここまで来ても、それらしい噂すら耳に入ってこないとなると、まだまだ遠くに居るんだろうな、その連中は」



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