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トカゲといっしょ  作者: (=`ω´=)


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ブビビラ村の情景

 スセリセスの部隊が目的地であるブビビラ村に到着したのは、ヴァンクレスらの部隊がこの村に着いた日から十五日ほど後になる。

 途中、何度も足を止めて、大勢の現地人が合流していたことなども考慮すると、かなり早い到着であるといえた。

 もっとも、スセリセスの部隊もその途中参加組と足並みを揃えていたわけではない。

 そうした現地で合流してきた者はほとんど身ひとつで来たような者ばかりだったので、食料その他の物資を背負わせながら自分のペースでスセリセスの後を追うように指示を出していた。

 荷馬がほとんどであるにせよ、馬に乗っているスセリセスたちとそうした徒歩の者とが同行することには、必ずしもメリットがないからであった。

 むしろ、大人数が固まって移動するより、何組かに分かれて移動した方が、宿泊や休憩などについてもなにかと不便がない。

 目的地への道のりさえ間違わなければ、分散して移動する方がなにかと小回りが利いた。

 こうした、洞窟衆に採用されたばかりの者たちは契約魔法によりスセリセスの指示に逆らえなかったし、仮にそれがなくても他に行き場がない者がほとんどであったので、荷物などを持ち逃げされる心配もなかった。

 そうして一時的な利益を得るよりは、もっと長期的に洞窟衆で働く方が、ずっと利益になる。

 スセリセスは彼らにそうした内容もきちんと説明し、いい含めてもいたので、離れて行動することに対してもまったく心配していない。

 スセリセスなどよりはそうした地元民の方が周囲の地理に明るいであろうし、道に迷うこともないだろう。

 スセリセスたちの部隊はそれなりに目立つ存在であったので、その後を追うことは容易なはずでもあった。


 ともかく、スセリセスたちが到着した時点で、ブビビラ村には先行していたヴァンクレスらの他に、トエスに率いられてた一行までもが合流していた。

 トエスたちはゴドワという拠点を作った後、そのゴドワからこのブビビラ村までの流通路を整備しているところ、だそうだ。

 そのゴドワとて、まだまだ拠点として立ちあげたばかりであり、未整備な部分も多かった。

 が、トエスはゴドワの完成を待たずにこのブビビラ村へとやって来た、という。

「拠点が出来るのを待っていられるほど、余裕があるわけでもないから」

 というのが、トエスの弁になる。

「拠点も大事だけど、それ以上に道を整備する方が大事だよ。

 完成するまで、時間がかかるもんだし」

 またそれは、トエス個人の意見というよりも洞窟衆全体の方針でもある。

 なにかと開発が行き届いてなく、なおかつ広大なこの森東地域では、「物流を効率化する」事業の優先順位は高かった。

 その手の土木事業はなにかと時間がかかるものでもあり、着手するのが早ければ早いほど都合がいい、という事情もある。

 物流的に考えると、水運の利便性がいいゴドワと森を貫通する街道の終着点になるブビビラ村との間を結ぶ道は、早めに整備しておく必要があるのだった。

 ヴァンクレスやスセリセスたちの部隊が来た北方面からの道もこれから整備をしていく予定であったが、そちらは距離も長く地元住人との意見調整もこれから手を着けるような段階であり、実際に形になるのはまだまだ先のことになる。

「ゴドワの方は空けてもいいんですか?」

 スセリセスは、ふと浮かんだ疑問を口にしてみる。

「周囲の人たちにも挨拶を済ませておいたから、大きな問題は起こらないと思うけど」

 トエスは、そう即答する。

「一応、ガンガジルの王子様部隊に留守番役を頼んでるよ」

「ああ」

 スセリセスは頷く。

「あの人は、どちらかというと守備向きの加護持ちですからね」

 かの王子様は故郷ガンガジル王国の王城で立て続けに二度もヴァンクレスに敗れているのだが、これは例外と見なすべきだろう。

 ヴァンクレス以外の者があの王子様に挑んでも、まず攻略することは不可能なはずであった。

 適所適材、ではあるんだろうな。

 などと、スセリセスはそんな風に思う。

 そして、

「しばらくは地道に、この村とゴドワを中心にして道を整備していく形になるわけですか?」

 と、確認をする。

「そうなるねえ」

 トエスはスセリセスの言葉に頷いた。

「湾岸部方面も、ガダイドとかいう港町にグフナラマス公爵勢が足がかりを作ったようだけど。

 でも、そっち方面からここまではかなり距離があるから、そっちが合流するようになるのはまだまだ先になると思う」

 ガダイドに流れ込む主要な河川もベズデア連合の兵士たちが押さえているのだが、そちらの流域とゴドワを経由する水域とはまったく重ならない。

 森東地域は、広すぎる。

 それが、このブビビラ村に到着するまで、様々なものを見聞してきたスセリセスの実感だった。

 単純な面積だけではなく、大小様々な勢力がせめぎ合っているので、なおさら事態を複雑なものにしている。

「広いですからね、ここは」

 スセリセスは、そういった。

「じっくりと腰を据えてかからないと、どうにもならないでしょうし」

「そうかの」

 ネレンティアス皇女が、スセリセスの言葉に首を傾げた。

「帝国が併呑してきた諸国と比べると、そんなに広いとも思わんが」

「なにと比較するのか、という問題になりますね」

 スセリセスは、そう受ける。

「帝国の軌跡と比べれば、確かにたいしたことではないように思えるのかも知れません。

 しかし、今の洞窟衆の力と比較すると、この森東地域をどうこうしようとするのはかなり難しいと思います。

 財力と武力、双方のことを考えれば、ですが」

「その点については、異論はない」

 ネレンティアス皇女は、そういって頷いた。

「うまく立ち回らんと、すぐに身動きが取れなくなるだろうな」

 この時点で、洞窟衆は潤沢な資金をこの森東地域に注ぎ込んでおり、そのために地元の諸勢力と無用な衝突を回避出来ている。

 それは結構なことといえたが、その資金がいつまで持つのか、かなり怪しい。

 スセリセスは、そんな風に思うのだった。

「ばら撒くだけではなく、回収もしているからなあ」

 トエスは、そういった。

「大勢の人を雇って動かしているのは確かだけど、そういう人たちが買う商品もふんだんに提供しているわけだし」

 食糧や日用雑貨など、洞窟衆は多種多様な商品をこの森東地域に持ち込んで販売している。

 人件費として支払った金額の大半をそうした販売業で回収している、というのも、決して間違った見解とはいえなかった。

 ただ。

「全体で見ると、やっぱり持ち出した金額の方が多くなると思います」

 スセリセスは、そういった。

「ここの人たちは、そんなに豊かでもありませんから」

 洞窟衆が回収する金額よりも、放出する金額の方が多い。

 そういう傾向は、否定できなかった。

 また、だからこそ、洞窟衆が進出してきた地域の周辺が、徐々に豊かになっている。

 そういう傾向も出ているわけで。

 実際にそうして潤っている地域にとっては都合がいいのだろうが、そのために多額の出費を強いられている洞窟衆の財源が、どこまで保つものか。

「こっちで人材を育成する動きを活発にして、長期的に回収するとかいっているけどね」

 トエスは、そう説明する。

「気が長いはなしだとは思うけど。

 ここの状況をみると、持ち出し分を回収する方法はそれ以外にないかな、とも思う」

「ここいらの連中、片っ端から征服していけばいいんじゃないか?」

 ヴァンクレスがそんなことをいい出す。

「手下に組み込めば、金を支払う必要はなくなるだろう」

「そう簡単にもいかない」

 ネレンティアス皇女はいった。

「完全に占領して支配下におけば、様々な問題も洞窟衆側が裁定する必要が出てくる。

 その手間だけでもかなりのものになるな」

「あっちこちで小競り合いが起きてる場所ですからね」

 スセリセスはうんざりした様子でそういった。

「うまく裁定出来ないと、今度はその裁定に不満を持った人たちが蜂起しかねないですし」

 そして、ちゃんとした裁定を行うためには、しっかりとした事前調査と、関係者一同がどうにか納得することが可能な落としどころを判断する必要が出てくる。

 そうした作業は微妙な判断が要求され、専門知識と判断能力を兼ね備えた、高度な人材がかかりきりになる必要があった。

 つまりは、それだけコストが高い作業だと、断言することが出来る。

 大量の食糧をこの森東地域に運び続けるような仕事よりも、こうした高い能力を持つ人材の時間を取られることの方が、今の洞窟衆にとっては損失が大きい、という見方も出来た。

「ここいらの連中を支配するよりも、放置して必要な時にだけ手を借りる方が、洞窟衆にとっては都合がいいってことか」

 ヴァンクレスは、いかにもつまらなそうな表情をして、そういった。

「じゃあ、しばらくおれの出番はないのか?」

「いや、そういうこともなかろう」

 ネレンティアス皇女は、ことなげな調子でそう断言をする。

「われらがここまで派手に動けば、自然にそれが気に食わない者も出てくる。

 いくらも待たずに、われらの動きを妨害しようとしてくる輩は現れると思うがな」




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