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トカゲといっしょ  作者: (=`ω´=)


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スセリセスの部隊

 にわかに周囲の情勢が騒がしくなってきたこの頃、スセリセスの一行はヴァンクレスを追って南下をしている最中であった。

 ただ通過すればよかったヴァンクレスの騎馬部隊とは異なり、このスセリセス隊は通過途上にある村や有力者と各種の交渉を重ねながら進行しているので、その速度は自然とゆっくりなものになる。

 交渉の内容は洞窟衆はどのような集団であるのかをまず簡単に説明し、その上で害意はないこと、それどころか行く先々で仕事を斡旋することも可能になること、これから来る洞窟衆の人間にも便宜を払って貰いたいこと、通信中継用のタグを設置させて欲しいこと、など、細部に及んだ。

 相手に納得をさせる必要があり、自然と説明する時間を長く要する。

 それに、交渉についても粘り強く対応する必要があり、場合によっては何日かにわたって一カ所に逗留して辛抱強く説得をすることもあった。

 その途中、スセリセス隊を追ってきた洞窟衆の別働隊に追いつかれることなども度々経験し、無論、そうした際にはスセリセスは説明と説得役を後続のその人たちに引き継いで先に急ぐことになる。

 行く先々すべての場所で好意的に対応されたわけではなく、それどころかスセリセスたちがヴァンクレスの仲間だと知られると途端に好戦的になる者も少なからず存在したが、そうした時は仕方がないので、相手の戦意を奪う程度には応戦するしかなかった。

 これまでヴァンクレスと同行することが多かったスセリセスは、かなり密度の濃い戦績を持っていた。

 踏んでいる修羅場の数でいえば、たいていの人間を軽く凌駕しているはずだった。

 スセリセスはまだ年少ながらも歴戦の勇士といってよく、一言でいえば場慣れしている。

 そのスセリセスの指示は冷静かつ的確であり、スセリセスほどではないにせよ、相応に実戦経験を積んだ者たちを率いていたこともあって、よほどのことがなければ相手を圧倒することが出来た。

 つまり、最小限のダメージで相手の戦意を奪う、いいかえれば、スセリセスたちに拮抗することは出来ないと悟らせることに、成功していた。

 長らく不安定な政治状況下にあり、小競り合いが頻発しているせいか、森東地域の人たちはひとたび実力差を悟ると意外に思い切りがよく、それまでの好戦的な対応とは一転してすぐに歓待する姿勢を見せるようになる。

 どうやらこの土地では、実力を示さない人間にはきつく当たり、その逆に相応の力を見せた人間に対しては厚遇するような気風があるらしい。

 よくいえば素朴、悪くいえばすれていないのだろうな、と、スセリセスなどは思う。

 別に媚びているわけではなく、実力者に対しては相応の敬意を払うような文化が、この土地には根付いているらしい。

 もっとも、そうした文化も、必要以上の確執を後に残さないようにするための、古くからの知恵なのも知れなかったが。

 ともかく、いくらかの摩擦なども経験しつつも、スセリセスの部隊はヴァンクレスを追って南下をし続けた。

 ときおり、後からスセリセスの部隊に追いついて来た洞窟衆の関係者から、周辺部の情勢の変化などについても情報を得ていたが、その内容も、出発前に予想していた範囲に留まっている。

 遠く離れた臨海部でどのような異変が起ころうとも、その影響がスセリセスたちが居る場所に及ぶようになるまでには数十日から場合によっては数ヶ月以上はかかるはずであり、この時点で今やっている仕事の内容を変える必要もなかった。

 スセリセスの今の仕事は、簡単にいえば洞窟衆の先触れとしてブビビラ村までの経路上にある村々に洞窟衆のことを説明し、後続の仲間たちの仕事をやりやすくすること、になる。

 森林を開通する街道の終着点に存在するブビビラ村は、今後重要な拠点となることが予想されるわけで、北からその重要拠点へと続く経路を確保する、そのための下準備をすることだった。

 ブビビラ村の重要性が変動する要素はほとんどなく、従ってスセリセスが手がけている仕事の優先順位が変わることもほとんど想定することが出来ない。

 今この時点では、スセリセスは周囲の状況がどのように変わろうとも、今の仕事を淡々と続けるしかなかった。


 ブビビラ村までの行程を半分ほど消化したあたりから、スセリセスの部隊にある変化が生じていた。

 出発して時の人員とは別に、途中から合流してきた人間が徐々に増えはじめていたのだ。

 この新たな人員は、行く先々の村でスセリセスの部隊に着いてくることを希望して来た人々であり、その多くはスセリセスとそんなに変わらない、年若い人間によって占められていた。

 奴隷同然の者から有力者の次男坊、三男坊まで、身分は様々であったが、こうした若者たちは時代の変化を敏感に感じ取り、地元にいるよりは洞窟衆に参入してそこで身を立てることを選んだらしい。

 スセリセスが若年ながらも責任のある仕事を任されていることとか、それにスセリセスの部隊が様々な出身地から集まって来た混成部隊であり、少なからず女性兵士も当然のように働いていたことから、なにか感じるところがあったらしい。

 一応、スセリセスとしては、そうした志願者に対して、

「洞窟衆に参加する気があるのならば、後続の人たちに申し出た方が安全だし確実ですよ」

 と説明し、その上でスセリセスに着いてくると希望した者だけを同行させていた。

 ブビビラ村に到着してからも、スセリセスの部隊がどのような役割を振られるのかこの時点で予想することは出来ず、仕事の内容や身の安全などについても、保証することは出来なかった。

 そうしたリスクを説明した上で、それでもなおスセリセスの部隊に同行することを選んだ者だけが、結果としてスセリセスの部隊に合流した形である。

 スセリセスとしても、行く先々で売買や物々交換などの手段により、兵糧その他の物資を補充しており、そうした物資を運ぶために人手が増えることは歓迎していた。

 こうした兵糧に関していえば、途中、何度も足止めを食らっているので消耗も早く、また、今後の予想も立ちにくいので、多少なりとも余分に買い入れて運ぶ方がなにかと安心が出来るのだ。

 それに、これまでの経験からいっても、スセリセスはこの手の物事が必ずしも予定通りには進まないということを、学習してもいた。

 自分たちが消費する分の兵糧は多めに携帯していた方が、そうした変化に対応する際にも都合がいい。

 そうした消耗物資は、多ければ多いほど、いざという時の選択肢が増えるのだった。

 これまでのところ、大きな問題が起こっていないとはいえ、今後もそうであるとは限らない。

 最悪、周囲が敵しか居ない場所で孤立することも想定出来る以上、こうした物資も出来るだけ多く確保しておくことは、重要だった。


 こうして行く先々で合流して来た者について、スセリセスは出身地での身分などに関わりなく、すべて平等な待遇で扱った。

 仕事の割り振りや配給される食糧に差をつけることなく、これは、現地で採用された者のみならず、スセリセスの部隊全員がそうしている。

 単純に、一応作戦行動中扱いであるため、構成員の待遇に差をつけているような余裕がないからだったが、そうした事情がなくても洞窟衆では出身地でも身分によって扱いを変える習慣がない。

 そうした待遇に不満を持つ者がいれば、スセリセスとしては早々に任を解いて、そのまま帰って貰うことにしていた。

 ごくまれに、そうした追い返される者も出たが、ほとんどはそうした待遇を歓迎してそのまま居残った。

 スセリセスの部隊に同行することを望んだ者、その大半は、そうした洞窟衆の風通しのよさを好んでいたから、自然と脱落者は少なくなるのだった。

 そうして合流してきた者の中には、森東地域に元から在住していた者の他に、最近になってから山地から流入して来た者も混ざっていた。

 そうしてこの土地に侵略して来た者たちにしてもそこまで計画的に動いているわけではないらしく、時には地元の抵抗に離散し、あるいは仲間からはぐれて行き場がなくなった者なども、少なからず存在しているらしい。

 そうしたはぐれ者は、普通ならばどこかの勢力に拾われて、奴隷同然の待遇で酷使されたりすることが多いのだが、この不安定な情勢に身元の不明な者を好んで抱え込む勢力も少なく、さらにいえば余剰の人員を養えるような余裕がある勢力も少なかった。

 結果、いく当てもなく流浪をする、流民化する者が少なくなく、スセリセスの部隊はそうした得体の知れない連中も含めて次第に人数を増やしていく。

 そうしながら、徐々に目的地であるブビビラ村へと近づきあった。

 一応、そうした途中参加組には、同行することを承諾した時点で簡単な契約魔法を施しているので、反乱などを心配する必要はない。

 また、これまで、そうした者たちの態度を観察したところ、スセリセスの部隊に大きな不満を抱いている者もいないようだった。

 スセリセスの部隊は、相応にきつい仕事はあてがうものの、食事と休憩も十分与えている。

 目的地に到着してから、働いた日数に応じて規定の賃金を支払うことも、約束をしていた。

 待遇面でいえば、森東地域のどの勢力よりもむしろ良好といえる。

 不満を抱くような要素は、ほとんどないのだった。



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