第26話 親友の厚意
碧斗の噂が広まった日。太陽が沈み、町が街灯とビルの明かりの色に染まった頃──
冬馬は自室のベッドの上で悩んでいた。どうしたら親友……碧斗の噂を無くすことが出来るのかと。
まだ碧斗と知り合って一年と少しだが、趣味も合うことから意気投合した二人は凄い勢いで親友となったのだ。
すれ違うこともあるが、それも『正直に思っていることを言い合える仲』とそんな友人がいることを冬馬は嬉しく思っている。
その親友が困っているのだ。何もしないで外野から見ているだけなんて、許されない。──例え許されたとしても、心残りができてしまうだけだ。
ずっと考えているが、一向に案が思い浮かばない。一度体を起こしてから思う──
──碧斗の事だ。俺が頑張って考えたが、何も思い浮かばなかっただなんて言ったら、優しく笑って、「俺のために頑張って考えてくれた事で満足だ」とでも言うんだろうな。
悔しいが、アイツがモテるのは嫌でも分かってしまう。──俺もアイツのそういう所に魅力を感じたのだからな。
「はあ……」
大きなため息を一つ着くと、枕に顔を埋めるように倒れる。
ダメだ。全くいい案が思いつかない……。しかし誰でも出来る案は一つある。正直上手くいくとは思えないので、これは保険として取っておこう。
その後も頭を抱えて考え、気がついた頃には日を一日跨いでいた。
◆
「おはよう、碧斗の噂はデマだ。俺はアイツとずっといるから分かる。アイツは何股もかけるような男じゃないんだ。──頼む、噂をしてる奴がいたら、このことを伝えて欲しい!」
「おはよう、碧斗の──」
昨日思いついた、保険として取っておいた案とは、これだ。
そう、一人ずつ誤解を解いていくという案だ。
考えることが苦手で、割と直感で動いてしまう冬馬らしい案なのだが、果たして効果はあったのか──
「──親友のために頑張っている、冬馬先輩超かっこよくない!?」
「それな、私も思った!」
「──あの先輩は真の漢だ……!あんな人に俺もなりたいな」
「憧れるッス、友人は大切にしないとだな!」
後輩……一年生から人気を集めるようになった。
一部の二、三年生は冬馬の事を良く思ったようだが、せっかく整った顔も優しさも持ち合わせているのに、デリカシーが無いので女子からは、「友情はあるが愛情は無い」と言われている。
これから後輩からの人気をどのようにして、落とさないようにするか。冬馬の頑張りどころである。
──イレギュラーな事態によって話が逸れていた。冬馬に人気が集まった原因は、碧斗の噂を無くす為に一人一人に説明したからだ。
この行動は冬馬自身の人気が集まったが、それ以前に碧斗の噂は少し埋もれた。
冬馬の案は予想外の利益を産んだのだった。──しかしまだ噂は残っている。
碧斗の為に尽力しているのは冬馬だけでは無い。次は誰のターンなのだろうか──
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