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上司と部下とお酒と温かい何か

 結局俺も無理矢理休まされた。今俺は、ソフィアさんと共にいる。

 当直の士官はエリさんとリイナさんになった。ユリエさんは結局当直を拒否したのだ。


 まぁ無理矢理シフトを変えるのは許されないしね。でも、気の弱いあのリイナさんに仕事を押し付けたと思うと……。


「あぁ、今から兵站局に戻って仕事したい」

「今戻っても邪魔だと思いますが、アキラ様」

「そうなんですけども」


 でもソフィアさんほどではないが、帰ってもやることないんだよね。

 というか、俺の寝床は兵站局執務室の隣だ。仕事部屋と直結の自室、社畜も羨む立地である。時々新人局員が指示を求めて俺を叩き起こしに来るのはご愛嬌。


 エリさんからは「やることのない者同士、一緒に街で休暇らしいことをしてきたらぁ?」とのことである。

 休暇らしいことって家で寝るかゲームをするかじゃないのか。


 日本でもそうだったが、休みと言いつつ外で体力を使い果たして一日を終わらせる奴がいるらしい。主にユリエさんのことだけど。


 だがどう考えてもソフィアさんはそんなキャラじゃない。

 故に、


「……で、どうしましょうか」

「…………どうしましょうね」


 困る。

 インドア派を二人仲良く外に放り出されても非常に困る。


 インドア派としてはここで自由解散にしたいのだが、それだと二人仲良く仕事場に戻りそうなのだ。それじゃ意味ないだろって。


 こういう時って日本だと何してるんだっけ。

 上司と部下。夜、仕事が終わったら……。


「……飲みます?」


 それしか思い浮かばなかった。

 ソフィアさんが快諾してくれなかったら、たぶん本気で仕事場に戻ったと思う。




---




 後に魔王陛下から聞いた話だが、魔術的才能の高い者はアルコールの耐性も高いそうである。

 つまり、地球において酒が強い人間は魔術的才能に優れると言うことだろうか?


 アルコール耐性が強いから異世界に転移しました、という小説書いてみようかしら。アルコール耐性強いからなんだと言う話だが。


 まぁ、魔術が使えない俺には関係ない話だった。それに酒は強くない。


 しかしそこは人間以外のあらゆる種族が住む魔都である。

 魔術的才能がない種族も多い故に、アルコールの弱い酒もあるし酒の味がするノンアルコール飲料もある。


 だから俺はこのカシスオレンジっぽいものを飲んでいる。うめぇ。


「おぉ、例の人間様がいるで! みんな、はよこっち来いし!」

「意外と普通なんだな! 前線帰りの奴らは『人間は恐ろしい』って言ってたのに」

「そりゃあ『戦場伝説』って奴さ! 見ろよこの貧弱な身体! 木の枝みてぇだな!」


 魔都に一人しかいない人間、つまり俺の話は魔都の中でも有名になっていたそうで、日夜この酒場で酒の肴になっていたようである。


 真面目に仕事していたおかげなのか、はたまた誰かが噂を流したのかは知らないが、歩いていたらヒソヒソ言われることはあっても石を投げられることはなかった。


 なんだ、思いの外魔族って懐深いんだな。


「そりゃ魔王陛下が信頼する人間らしいからな!」


 ビックリするほど単純な理由だった。


 しかし珍しいもの見たさの者達が多く寄ってきたおかげでゆっくり酒を飲めやしない。

 ソフィアさんも酒場特有のナンパに遭ってるし、チョイス間違えたかなぁ。


 と思っていたら、


「お前らうるせぇぞ! 少しは自重しろ!」


 カウンターの対面にいるオークのおやっさん、この酒場の主人が怒鳴り散らしてくれた。

 なんだこのイケメン。


「すまんねぇ人間さん。魔族ってのは酒が入るとどうも五月蝿い奴らでよ」

「いや、問題ないですよ。人間も似たようなもんなので」


 酒で問題を起こすのは種族関係ない。時に優秀な政治家が酩酊状態で記者会見したことで大バッシングされることもある。

 それでも酒は人類の友だと皆が言う。変わった友情もあったもんだなと。


「それにしても男の癖に女の酒を飲むたぁ、人間ってのはみんなそうなのかい?」

「……いやそんなことはないと思いますが」


 ロシア人とかポーランド人とかならウォッカを水のように飲むというイメージがある。

 アルコール度数96%ってそれはもう酒じゃないだろと言いたい。


 ていうか、この世界でもカシスオレンジってそういう風に見られてるの? 結構好きなんだけどな、オレンジジュースみたいで。


「アキラ様は特殊な方ですからね」

「ちょっとソフィアさん、それだと私がおかしい人に聞こえるんですけど」

「えっ……?」


 待って。「違うの?」みたいな顔しないで?

 こんなにも普通の人間なんてそうそういないよ?


「私ですら、その酒みたいなものは飲まないのに」

「みたいなものってなんですか。れっきとした酒ですよ、造った人に謝ってください」

「いや、謝る必要はねぇな。よく言われるし気にしてねぇから」


 これおやっさんが作ったんかい! ごついオークがこんなオシャレな酒作れるんか! 今度嗜好品として各戦線に供給する酒作ってみませんか!?


「そう言うソフィアさんは今何飲んでるんですか」

「ウォッカですが」

「しかもストレートだ。お嬢ちゃん酒の飲み方わかってるな!」


 ロシア人が隣にいた。


ユリエさんみたいな生き方をしたい

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