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地雷案件、それとも一発逆転?

 ソフィア・ヴォルフ、一世一代の重要任務です。

 まぁ、重要任務じゃない時の方が珍しい気がしますが、今回は飛び切り重要です。


 なにせ攻勢――いや、大攻勢を続ける魔王軍の前線兵站を仕切る立場となったのです。責任はアキラ様が取ると言っていましたが実際にやるのは私。無責任と言うわけには行きません。


「それに私はアキラ様より事務処理能力があると自負しています……ここで私の力を見せつけてアッと言わせてやるんですよ……」


 あの働きづめ過労局長アキラ様は休むのが下手です。

 この大作戦の最中に休暇を取れないのは仕方ないにしても、それでも休むことは必要です。なのにあの人は何度言っても……。


 コホン。

 まぁ、いいです。本部に戻れば前線兵站指揮という、状況が刻一刻と変化してそれに柔軟に対応しなければならないという地獄のような試練から離れることができます。こんなところにいるよりは、ゆっくり休むことができるでしょう。


 そしてその間、私はキッチリ自分の仕事をするのです。アキラ様を支えると決めたからには、ちゃんとやりませんと。


「さて、と。まずは現状の確認から……」


 作戦に参加する第Ⅰ軍から第Ⅹ軍の現状と戦況を確認します。ほぼすべての戦線において優勢ですが第Ⅹ軍を筆頭にいくつか苦戦しているところもあります。

 補給路の状況も鑑みて必要な物資の配給と備蓄、本土からの要請を――、


「アキラちゃ――――ん!!」

「…………」

「あれ? ソフィアちゃん? 愛しのアキラちゃんどこにいるの?」


 めんどくさいのが来た……。


「ソフィアちゃんひとりだけ? アキラちゃんがソフィアちゃんを置いていくなんて、まったくひどい旦那さんだね!」

「…………」

「なんか反応してよつまんないじゃーん!!」

「反応したら面倒なことになるじゃないですか、十中八九」


 アキラ様は優しい人なのでこういう酷く扱いが面倒な人にもちゃんと応対^――というより、突っ込みでしょうか?――をします。が、私はそこまで優しくなれません。


「さっさと出て行ってくれませんか? 仕事の邪魔です」

「酷いなぁ。私がこの兵站局の癒しになろうと日々努力をしていると言うのに」

「無駄な努力です」


 癒し? なんのことでしょうか? 「殺し」なら意味は通りますが。


 あぁ、もう。何をしようとしていたか忘れてしまったじゃありませんか。本当に仕事の邪魔しかしないですね、あなたと言う人は!


「で、アキラちゃんがいないからソフィアちゃんに相談するしかないんだけど、いいかな?」

「…………」


 私の中の悪魔が囁きます。面倒だから無視しようと。

 私の中の天使が反論します。無視したら面倒だから話を聞こうと。


 いずれにせよ面倒なことには変わらないんですよね。天使と悪魔、両者ともに手を焼くのがレオナ・カルツェットという存在……。


 アキラ様がミサカ様に期待を寄せる意味がよく分かります。それ以外の理由もあるでしょうけれど。


「はぁ……もう、なんですか? 手短に且つ理論的にお願いしますね」

「ふふん、ソフィアちゃんも私の扱い方に慣れてきたね!」


 自分で言うんですかこの人は。


「実は今回の、第Ⅹ軍の作戦で私の考えた魔像運用戦術の実験をしたいの! そのための必要物資というか魔石を融通してくれないかな~、って?」

「……その戦術、作戦本部の許諾は?」

「ない!」

「却下」


 正式な許諾がない作戦に物資つぎ込む人なんていないのでは……。


 だいたいカルツェット様は無許可で作戦とか開発を進めようとすることが多い気がします。反省とかそういうのはないんでしょうか?


「作戦本部の許可なんて待ってたらあいつらに逃げられちゃうわよ! 私の作った魔像ちゃんは確かに無敵最強鬼神の如くではあるけれど、騎兵隊のような機動力はまだないの、残念ながら!」

「そりゃないでしょうに」


 騎兵と魔像を比べるのが悪いのではないでしょうか。魔像は見ての通り鈍重で、騎兵のような戦術で使われることはほぼないですし。

 まぁ、人類軍の陣地に騎兵を使う事自体が今となっては自殺行為なので、それが魔像で代用しようという研究もしていると前に聞いたことがあるような……。


「だからと言って無許可で作戦実行は無理ですよ。人員もいないでしょう?」

「いないわ!」

「人はいないのに物資は寄越せと?」

「うん! 余ったらそのまま私がもらっちゃおうかと――」

「なるほど、憲兵隊案件ですか」

「冗談冗談! さすがにそんなことしないって!!」


 カルツェット様が冗談を言う? それこそ冗談でしょうに。あの眼は本気だった眼です。


「提案するだけなら結構。しかし私は軍規違反の片棒を担ぐ気にはなれません。どうぞ正式な手順に基づいてから、私に兵站支援を申し出てください」

「ぐぬぬ、アキラちゃんならもうちょっとわかってくれるだろうに……」

「そのアキラ様は今魔都に向かっていますよ」


 そろそろついた頃合いでしょうか。

 新規兵站計画の策定は私の仕事以上に大掛かりになると思うので、心配ではありますが……。


「むむむむむ。もし私が提案してる最中に敵に逃げられたらソフィアちゃんのせいなんだからね!!」

「はぁ?」


 さすがにそんなことはないですよ。

 兵站局は兵站の失敗においてはその責任を取りますが戦闘の結果にまで責任は取れませんし……。


 …………。


「そんなことないですよね?」



大変長らくお待たせいたしました。

書籍版「魔王軍の幹部になってけど事務仕事しかできません」が、

TOブックスより11月10日刊行となります。


詳細は割烹、あるいは私のTwitterにて。

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/531083/blogkey/2116915/


これからもよろしくお願いします。

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