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魔王軍の幹部になったけど事務仕事しかできません  作者: 悪一
3-3.貴様は祖国を裏切った?
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待ち合わせ

 ホントにストーキングするとは思わなかった、部下二人と歩く魔都の街並み。


「どうしてこうなった」

「昨日だいたい説明したじゃねーか。ほら、あそこにいるぞ」


 ユリエさん、リイナさん、そして俺は兵站局のナンバー2に対して追跡調査……もといストーキングをしている。


 理由は色々あった気がするが、たぶん全部こじつけだ。


「ところでユリエちゃん」

「なんだ?」

「あの、なんで私たちグラサンしてるの……?」

「浮気調査つったらグラサンだろ!」


 わかる。


 いやおかしいけどね。

 魔都のど真ん中でグラサンした男女三人がこそこそしてたらヤバいという問題ではない。しかもそのうち一人は人間だから余計目立つ。


 まぁ、ここはストーキングとユリエさんの妙なこだわりの為に急遽グラサンが必要になってもすぐに用意出来た兵站局に対して「立派になったもんだ」と感動しておこう。


「おかーさん、あそこに変な人たちがいるよー」

「……いつものことよ。さ、行きましょ」


 魔都っていつから奇人変人のビックリ箱になったんだろう。


 なお、こんな珍妙奇天烈摩訶不思議な三人衆に対して、調査対象となっているソフィアさんは気付いているのか気付いていないのか、魔都繁華街の一角で誰かを待っている。



 私服で。

 俺でもあまり見たことのない私服で。


「こりゃホントに浮気かもしれん」

「やめてくださいユリエさん。今必死にそのこと考えないようにしてるんですから」

「局長さん、現実見ようぜ?」

「あばばばばばば」


 殺せ! 俺を殺してくれ!


「局長様! 気持ちはわかるけどここで発狂したらばれちゃうよ!」


 天使のような、あるいは小悪魔のような、もしくは淫魔に相応しい笑みで迎えてくれたリイナさんがいなければ危うく地球世界に戻るところだった。


 ソフィアさんの方は、着慣れない服装を気にしていたり、いつもと違う髪型を気にしていたり、懐中時計で時間を確認したりと落ち着かない様子で立っている。


 それを見ていて一番落ち着かないのは俺だ。


 どう見ても男とデート前の女性の仕草である。見ているのが非常に辛い。


 そして数分後、ついに運命の時。

 ソフィアさんの浮気現場を我々はついに目撃――、


「ごめん、ソフィア。遅れたかしら?」

「いいえ。時間ピッタリですよ、コルネリア様」


 …………?


「女だ」

「女の方ですね」


 ソフィアさんが待っていたのは、黒髪・黒目・黒翼の鳥人族の女性だった。

 一言で表すなら「可憐な美少女」と言ったところか。見た目はソフィアさんと同じ二〇代だが、長寿が多い魔族ではあまりアテにならない。数百歳と言う可能性もある。


「よかったな局長さん、浮気じゃないみたいだぞ」

「そうですね。こう言ってはなんですけど、意外でした」


 ユリエさんはつまらなさそうに、リイナさんはホッとしたように答えたが、俺の中の気持ちは以前優れない。

 なぜなら――、


「それこの間買った私服? やっぱり似合ってるじゃない」

「そ、そんなこと……。こういう服はコルネリア様の方が……」

「私じゃそれは着こなせないよ。ソフィアのためにあるような服だもん」

「そ、そうですか?」


 コルネリアさんとやらに褒められ、頬を赤くして髪を弄るソフィアさん。彼女のそんな顔なんて見たことがない。


「羨ましい」

「局長さん?」

「尊い」

「あ、あの、局長様?」


 まさかのコルネリア×ソフィア百合とは思わなんだ。

 ユリエさんとは別の意味で男勝りなコルネリアに、普段は強気だけど押されると意外と脆いソフィアさん。


 いいカップリングである。自分の恋人じゃなければガッツポーズ決めてた。


 いや、まさか男ではなく女性にNTRされるとは夢にも思わなかった。なんだろうこの複雑な気持ち。


「いや、単に友達というだけでは……」


 リイナさんの冷静なツッコミはさておき。


 黒目・黒髪・黒翼のコルネリアさんとやら、どうも嫌な予感がする。

 いや、確かに黒目・黒髪・黒翼の鳥人族なんて魔都にいっぱいいる。


 だから例の偽アキラくんの恋人であるコレットとやらと同一人物だと断じることはできない。できないが……。


「ま、女同士なら間違いなんて冒さないだろ。どう頑張っても子供も出来ないしな」

「ユリエちゃん、なに白昼堂々と破廉恥な事言ってるの……。でも、確かに安心です。ソフィアさんってあまり友達いない印象あったから」


 うん。いいと思う。


 友達いないってのはソフィアさん自身が認めているところだったし、それが過去のことになったことによって幸せの日々……というのも良いだろうが……。


「あまり邪魔しちゃ悪いし……局長様、そろそろ兵站局に――」

「リイナさん、頼みがあるんですが」

「ほえ?」

「リイナさんにしか出来ないことなんです」


 万が一と言うこともある。

 偽アキラ問題は、この本物アキラが責任を持って解決すべきだろう。



「じゃ、行こうか。ソフィア」

「はい。――って、え、ちょっとなんで手を繋ぐんですか!?」

「冗談よ、冗談」


 はやくなんとかしないと色々ぽっきり折れてしまいそうだから、というのもあるが。

【反省】3-3章前半の銀蠅問題、完全に不要だったと後悔中


それといつの間にか文字数が50万字突破していました。

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