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魔王軍の幹部になったけど事務仕事しかできません  作者: 悪一
3-3.貴様は祖国を裏切った?
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三月三日は何の日?

 三月三日。日本では桃の節句、ひな祭りが行われる日。

 であるが、桃の節句なんて行事は魔王軍には存在しない。だが、別の重要な行事がある。


「いやいや、それはないんじゃないですかソフィアさん」

「でもアキラ様、やっぱり実用的なものがいいと思うんです」


 この日、俺とソフィアさんは揃って休みを取った。

 定休ではなく、この日に合わせて有休を取ったのである。そして今魔都の商業区域で一緒に買い物している。


 え、デート? 惜しいな。今回はデートではないんだ。


「でも相手は年端もいかない女の子ですよ?」

「しかし、同時に研究者でもありますし……」


 適当に商店街をぶらつきながら、あぁでもないこうでもないと議論する俺ら。

 店の人から見ればやや迷惑な光景かもしれないが我慢してほしい。重要なことなのだ。


「…………あら、アキラさんじゃない?」


 侃侃諤諤の議論を続けていたところ、聞き覚えのある声で背後から呼ばれた。

 振り向くと、そこにはリイナさんをそのまま数年程成長させたような容姿の女性がいたのである。


「おっと、ミイナさん。お久しぶりです」

「ん、久しぶり。元気?」

「そこそこ元気ですよ」

「下の方も?」

「白昼堂々何言ってるんですかあなたは……」


 というわけで、淫魔で魔王軍公認娼館「ミルヒェ」店長にして指名率ナンバーワンでリイナさんの実姉ミイナさんである。

 淫魔で娼婦というだけあって、容赦なく下ネタを言う。

 最初はそれでドギマギしていたが、慣れれば別に大したことはない。


 彼女と会うのは、例のメイド喫茶出店計画以来だ。

 そしてそのメイド喫茶にて色々と大変な目にあったソフィアさんの反応はと言うと、


「……どうも」

「ん、久しぶり。元気?」

「えぇ、まぁ」


 当たり前だが滅茶苦茶警戒していた。まるで俺と出会ったばかりの頃の彼女だ。


「つれないなぁ。ま、そこもまた可愛いけど。そう思わないアキラさん?」


 激しく同意します。


「何を言っているんですかあなた達は……。それで、ミイナ様はなぜここに?」

「商店街に来て『実は男漁りに来ました』なんて言うと思う? 買い物よ」


 そりゃそうだ。店に戻れば金が貰える上に男を漁れるしね。しかも指名ナンバーワンだし。


 ミイナさんの腕の中には既に会計を済ませたのであろう商品が紙袋に詰まっている。見るとそこには、十八歳未満購入禁止の玩具が入っていた。


 うん、見なかったことにしよう。魔都の商店街は品揃えがいいとだけ覚えておこう。

 ソフィアさんの方もそれを見てしまったらしく、顔を赤くしながらプイッと目を逸らしていた。


 そしてミイナさんはそれを見てニヤニヤしていた。娼館に勧誘とかしないでね?


「ま、それはそれとして、アキラさんの方は何やってるの? デート?」

「そうです、と言いたいところではありますが、半分違います」

「半分はデートなんだね」


 ミイナさんにそう問われたが、俺は肩だけで返事をした。恋仲にある男女が仲良く買い物をするというのはデートだろうが、客観的に見ると、実際これがデートかどうかは怪しい。


「実は共通の友人が、今日誕生日なんですよ」

「ん? ということは、当日になって急遽誕生日プレゼントを買いに来たってこと?」

「そういうことです」

「……兵站局局員として、それはどうなの?」


 ぐうの音も出ない。

 いや、言い訳するつもりはないのだが、ここのところ海軍の新型艦艇の業務で手がいっぱいで、プレゼントのことに気付いたのが今日になってからなのだ。


 しかも困ったことに、何をプレゼントしていいかわからない。


「元いた世界でもこの世界でも、こういう経験なくて……。で、ソフィアさんと色々と話し合っていたところにミイナさんが来たんです」

「なるほどねぇ……。相手は誰なの?」

「ヤヨイさんです。彼女、知っての通り研究者でもあるので、色々とお世話になっているんですよ。そのお礼も兼ねて、今回の誕生日プレゼントを贈ろうかと」

「なるほどなるほど。で、どうなったの? 何か進展はあった?」


 そう彼女が聞くと、反応したのはソフィアさんである。

 というか、ソフィアさんからしか案が出ていない、と言った方が正しい。

 しかしソフィアさんの案は、ちょっと独特である。


「私は実用性を考えて『製図台』にしようかな、と思ったのですが……」

「……えっ? ごめん、今なんて言ったの?」

「ですから『製図台』です。設計に使う」


 困惑するミイナさんに、ソフィアさんが真顔で答えた。


「…………誕生日プレゼント、よね?」

「はい。実用性を重視して――」

「重視しすぎじゃない!?」


 ミイナさんが頭を抱えて項垂れた。

 うん、ソフィアさんってこういう人なんです。


 女の子に何を送ればいいのか、女性としての意見をミイナさんに求めることにした。この件に関してはソフィアさんが役に立たないので、助言を求める相手を変える。我々は賢いので。


 ソフィアさんもソフィアさんで「教えてください……」と若干涙目になりながらミイナさんに頼み込んでいたので問題はない。


「うーん、でも私も店に戻って色々とやることあるのよね……」

「そこをなんとかなりませんか……?」


 ただ世の中は常にギブアンドテイク。個人的な貸し借りは少ない方がいい。


「そうは言っても、今娼館の外壁が一部脆くなってて、その修理のことで頭がいっぱいなのよねー」


 とチラチラとこちらを見ながらそんなことを言われてしまえば、最優先で娼館の外壁工事をしなければならないのである。

 無論、魔王軍の金で、である。


「あぁ、その件についてはご心配なく。『丁度』『タイミングよく』娼館の補修工事の予定が入っていたので」

「本当!? じゃあ、店に急がなくてもいいかなー!」


 まぁ、いつかはしなければならないし公認娼館なのだから多少の融通はしないとね?

ロリは成長します。あなたは成長した元ロリを好きになれますか?

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