女勇者、魔法少女と打ち解ける
劣悪パーティとの因縁の再会を終え、宿にチェックインしたハリス達。
だが彼等が部屋に入って早々、ポーラが頭を深々と下げる。
「大切なお仲間を危険な目に遭わせてしまい、申し訳ありませんでした」
深刻な口調で謝罪するポーラを、静かな眼差しで見つめる面々。
その様子を見かねたハリスは、彼女へ頭を上げるよう催促する。
「あまり気にするな。リンゴが勝手に首を突っ込んだ部分もあるし、そもそも外道な行いをした奴らが一番悪い」
「だけどあたしが勝手な行動をしなければ、もっと穏便に済んでた」
一歩間違えれば命の危険があった戦いを思い出し、反省するポーラ。
反論する材料は多くあるが、重く感じている彼女の感情を尊重し、ハリスが言葉を返すことはなかった。
「守るために任せたのにね、あたしに」
そう言いながらポーラは自身の腕を抱く。
明るい彼女の顔に刻まれた影と、無意識に寄せられた双丘が、普段はない色気を醸し出している。
だがハリス達からすれば、そんなものは心配のタネでしかない。
しかしポーラはそうとも知らず、彼等に背中を向けて告げる。
「じゃああたし、部屋に戻るね。明日は一日休んで、明後日出発で」
予定の確認だけをして、彼女はハリス達の部屋を後にする。
三人とは違い、彼女は一人用の別部屋を取っていた。
部屋の扉が閉まり、残された彼等は考え込む。
するとレナが、口を薄く開いて語る。
「意外でした。まさかポーラが、あれ程まで責任感が強いとは」
「責任感というよりは重圧だろう」
「重圧……勇者としての、でございますか?」
「ああ。抱え込むものが大きすぎたせいで、大袈裟に感じてしまっているのかもしれない」
レナと会話を重ねつつ、ハリスは横目でリンゴを見る。
「まあ確かに、ポーラの考えるとおり、些細なことで済む話では無かったが」
彼の視線の先で、椅子に座って顔の前で指を組むリンゴ。
二人よりも深く考え込み、何かを決心した彼女の顔を見て、ハリスは口元に微笑みを浮かべた。
*
夜も更け、ポーラは一人きりの自室で睡眠のために服を脱ぐ。
寝る時は下着派の彼女は、腰の剣を帯びごと外し、スカートとタイツを続けて下ろし、ピンク色のショーツを晒す。
そのまま上の服にも手を掛け、シャツのボタンを外して肩から脱いだ時、ふいにドアがノックされる。
「どちら様?」
「あの……リンゴ、です」
意外な来客に首をかしげるポーラ。
彼女はあまり考えず、脱衣を続けながら返答する。
「いいよ、入って」
「ありがとうございます。失礼します」
返事をしながら扉を開けるリンゴ。
しかし彼女は、その先にいた下着姿のポーラを見て、驚いてドアを閉める。
「な、なんで服を着ていないんですか!?」
「いいじゃん女の子同士だし。はっ、もしかしてリンゴちゃんって……」
「女性です勘違いしないでください! 下着姿の人と突然会ったら、驚くに決まっているでしょう!?」
扉の向こうで慌てるリンゴに、笑顔を取り戻すポーラ。
シャツを着直した彼女は、今度は自分からドアを開ける。
「この格好ならいい?」
「……少し煽情的ですが、大丈夫です」
少し恥ずかしがりながら、部屋に入るリンゴ。
扉を閉めたポーラは、彼女をベッドに座るよう案内すると、自分もその隣へ腰掛ける。
「あの、なぜ椅子ではないのですか?」
「隣に座りたいじゃん? 椅子だとお尻も冷たいし」
「スカートかタイツを履けば良いのでは……?」
いつものマジレスに、ポーラは言い返せず誤魔化し笑う。
リンゴも質問こそするが、それ以上は何も言わず、緊張した様子で黙り込む。
そんな彼女を見つめていると、再びポーラの内心に罪悪感が浮かぶ。
溢れ出る謝罪を口にしようとした瞬間、リンゴはそれよりも早く告げる。
「もう謝らないでください」
「でも、あたしは」
「私にも責任があるのです。それを奪ってしまうなんて、逆に失礼ですよ?」
ウインクしながら窘めるリンゴに、ハッとするポーラ。
彼女はそのままポーラに対し、自身の心境を述べる。
「見習いですが、私も冒険者です。自分の行動に責任感は抱いています」
「それをあたしは、無下にしちゃったんだね」
呟くポーラに、リンゴも言葉を重ねる。
「私も責任と言いながら無謀なことをしてしまったせいで、助けられてしまったのですが……」
その言葉を最後に、リンゴも一度口を噤む。
横目で彼女が見るポーラは、自分たちの部屋で話した時と同じで、あまり浮かない顔をしている。
彼女の表情を見て、もじもじと身をゆするリンゴ。
やがてポーラが、リンゴの動きに気付いた時だった。
「ポーラさん、私に魔術を教えていただけませんか?」
唐突に顔を上げた彼女が、真剣な顔で訴える。
その言葉にポーラの影は払われ、代わりに呆然とするばかり。
尚も真剣に見つめるリンゴの瞳に、ポーラは取り乱した自分に気付き、落ち着いて質問を返す。
「え、な、なんで突然?」
「ポーラさんの魔術を見た時に思ったんです。私ももっと、魔術を使いこなせるようになりたいって!」
「とはいっても、リンゴちゃんは魔術学園の生徒なんでしょ? 私なんて元々ただの冒険者だし、魔術も独学の素人だし」
「いいえ、ポーラさんの魔術は一流です!」
まっすぐに伝えてくるリンゴに、今度はポーラの顔が赤くなる。
屈託のない表情でお願いされ、ポーラは返答に悩み、無意識に頬をかく。
するとリンゴは、もう一押しと言わんばかりに告げる。
「強くなりたいんです。ハリスさんやレナさん、ポーラさんがいなくても戦える、責任を背負いきれる力が欲しいのです」
決意表明するリンゴの瞳に、かつて巨人との戦闘で責任の重圧に怯えていた彼女の姿はなかった。
対するポーラも、数時間前の劣悪パーティとの闘いを思いだす。
モノを守ることが出来ても、戦いきれなかったリンゴの悔しさを、同行者として責任を背負いきれなかった彼女は共感できていた。
自分の行動に責任を負うための力が欲しい。
初めて聞いたリンゴの願いに、ポーラは微笑む。
「そんなに強くなって、責任を背負えるようになりたいほど、ハリス達は大切な人なんだね」
「はい。私の恩人ですから」
「……そっか」
迷いない回答に、自身も答えを得たようにうなずいたポーラは、彼女に告げる。
「いいよ。一緒にいる間は、あたしが師匠になってあげる」
「ほ、本当ですか!?」
「ただ、あたしからもお願い」
そう前置きすると、ポーラはリンゴを見つめて告げる。
「あたし、テキトーな人間だからさ。逆にそういう、前向きな気持ち? 勉強させてもらうね」
照れ臭そうに語り、顔を伏せるポーラ。
ふわっとしたお願いだが、リンゴは彼女の頼みに頷く。
こうしてリンゴは、もっとハリス達の役に立つため、ポーラと少し不思議な師弟関係を結ぶのだった。
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