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もしも地球の支配者が猫だったら  作者: しいな ここみ
第三部 人間 vs 人間

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95/129

落ちてきた総司令官 (秦野ユイ視点)

 赤の混じった汚らしい黒猫が、総司令官を上空へ連れて飛び去るのを、わたしは見送るしかなかった。


「チッ……!」

 アズサが舌打ちする。


「あぁ……、司令官が……!」

 シホさんが口を開けてただ見上げてる。


 もう射程圏外だ。


 このわたしとしたことが……油断した。


 まさかあんなに高くまで飛べるなんて……。


 しかし……、ミチタカちゃんの言ってた通りだったわ。


 猫の科学力……、すげーじゃん。


 ククククク……。すげーじゃん。


 気が進まなかったけど、来てよかったわ。


 ここで猫の科学力を片っ端からぶん取って、自分のものにしたい。


 そうすれば、人類の科学は100年ぶんは進歩する。


 悔しいけどね。


 でもそんな個人的敗北感は進歩の邪魔。

 素直に猫の科学技術力を認めて、殺してぶん取れば、宇宙人が攻めてきたって余裕で打ち負かせる。

 もしかしたら出産率の問題だってなんとかできるかもしれないじゃない?


 あ……。忘れてた。


 総司令官、大丈夫かしら?


 まぁ、どうでもいっか。

 トーマちゃん殺してくれたら、猫殺す理由できるし。

 そっちが先にやってくれれば、遠慮なく全力で殺せるってもんよ。


 猫殺す猫殺す猫殺す猫殺す──


 トーマちゃんは可哀想だけど、仕方がないからわたしが代わりに総司令官になってあげるわ。


 クククククク悪くない!


 わたしが総司令官になったら猫殺しまくるわ。


 猫殺す猫殺す猫殺す猫殺す猫殺す猫殺す猫殺す猫殺す──!


「あっ!」

 空を見上げていたシホさんが、声をあげた。

「落ちてきますわ!」


 ……ほんとうだ。


 青江総司令官が、遥か数千メートルの上空から、落ちてくる。


 何考えてんの?


 あなたは空なんて飛べないでしょうに……。


 そのまま地上に激突して、バラバラになるわよ?


 その時、確かに見えた。


 青江総司令官が、わたしをじっと見ているのが、見えた。


 

 あぁ……、これ……


 信頼されてるのね?


 わたし、トーマちゃんに、信頼されちゃってる! ……きゃっ!




「わかったわ、トーマちゃん」

 わたしは白衣のポケットから銃を取り出すと、落ちてくるトーマちゃんに向けた。

「この天才マッド・サイエンティスト秦野ユイを信頼してくれてありがとう。お望み通り、楽にしてあげるわ」


 アズサがびっくりして声をあげる。

「ちょっ……! ユイちゃん! 何してるッスー!?」


 シホさんは口に手を当てて、驚きながら、でもわたしのことは信頼してくれて、手は出さずにわたしのすることを見守ってくれている。


 トーマちゃんの後ろからあの汚らしい猫が追いかけてくる。とどめを刺そうとしているのね? バカじゃない? ほっとけばトーマちゃん、バラバラになって死ぬのに……。



 わたしは銃爪ひきがねを、引いた。


「スパイダー・ネット!」


 銃口からスパ〇ダーマンが飛び出す。


 トーマちゃんを受け止めようと、グングン上昇していく。


 そのひょろ長い腕を広げ、落ちてくるトーマちゃんを抱きしめた。


 そのまま二人で落ちてくる。


 地面にぶつかった。


 10トントラックが時速90キロでぶつかるような衝撃が地面に響いた。


 でも大丈夫。


 バラバラになったのは、身代わりの〇パイダーマンだけだ。


 もくもくと上がる土煙の中から、トーマちゃんはユラリと立ち上がった。物凄く不機嫌そうな顔をしている。

 そして、仰った。

「……死ぬかと思った」


 スパイダー〇ンが可哀想って?


 大丈夫よ。命なんてない、ただの身代わり人形(エアーバッグ)だもの。


 見ての通り、わたしの持つ科学技術力は、人類の最先端。


 わたしが天才マッド・サイエンティスト秦野ユイよ。覚えておいて?


 そして猫の科学技術を奪い取り、さらなるマッド・サイエンティストになるの!


 そして行く行くは、ミチタカちゃんをお婿にしてあげるわ!

  




 

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― 新着の感想 ―
スパイダーネットと言いながらスパ○ダーマンが出て来る不思議よ…………。
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