◆◆◆◆ 6-4 緊迫 ◆◆◆◆
【 ヨスガ 】
「……どう見た?」
シジョウが去ったあと、ミズキに問うヨスガ。
【 ミズキ 】
「さて……あの様子では、本当になにも知らされていないようにも見えましたが」
【 ヨスガ 】
「ふん、敵を欺くにはまず味方から――ということもあるゆえな」
皇太后とシジョウらが結託しているのは事実ではあるが、その繋がりは決して対等なものではない。
十二佳仙の権勢は、あくまで煌太后の権威に由来している。
【 ヨスガ 】
「もし太后が失脚するか、この世から去ったなら、彼奴らの権力は消え去り、無力となるわけだが……」
先ほどの態度は、そうした場合のことを考えて、ヨスガに媚びを売ってきたかのようでもあった。
【 ヨスガ 】
「……万が一、彼奴らが膝を屈して許しを請うてきたら、どうする?」
【 ミズキ 】
「…………」
ヨスガの問いを受けて、ミズキは己の手をじっと見つめる。
【 ミズキ 】
「もしもあなたが……ヨスガさまがお許しになるというのならば、私も従いましょう」
絞り出すように出した答えは、そういうものだった。
【 ヨスガ 】
「……そうか。まぁ、それはその時がきたら考えるとしよう」
【 ミズキ 】
「そうですね……今は、あらためて警戒を強めましょう」
【 ヨスガ 】
「うむ――宝玲山の者たちはどうなっている?」
【 ミズキ 】
「すでに先遣隊は市中に潜伏しているとのこと……ほどなく、本隊も参ることでしょう」
【 ヨスガ 】
「そうか……」
ミズキの答えに、ヨスガは腕を組んだ。
【 ヨスガ 】
「――それまで、時があればよいがな」
【 シジョウ 】
「煌秘書官――」
【 レンス 】
「おお――これは、黄龍老師! ご機嫌いかがでありましょうや」
宮中の廊下でシジョウに呼び止められたレンスは、いつものように大げさな身振りで挨拶をしてみせた。
【 シジョウ 】
「……皇帝陛下の招きに応えたとのことですが?」
【 レンス 】
「ええ、もちろんですとも。臣が君に招かれて行かぬ道理がありましょうか?」
【 シジョウ 】
「……実際、どうなっているのです? 国母さまは、いったい……」
【 レンス 】
「さてさて……なにも、なにも伺ってはおりませんよ。それではこれにて――」
大仰に一礼すると、レンスはそそくさと去っていった。
【 シジョウ 】
「…………っ」
【 他の十二佳仙 】
「……っ、あの若僧、無礼なっ……!」
【 シジョウ 】
「……放っておけ。それより、祈願祭の支度を急がせよ」
【 他の十二佳仙 】
「ははっ……!」
【 シジョウ 】
(すべては、国母さまの掌の上――か?)
どうあれ、こうなっては手をこまねいているわけにはいかない。
【 シジョウ 】
(討たれる前に――討つのみ……!)
ヨスガとシジョウらの間に、緊迫した空気が流れる中……
まったく別の思惑が、帝都の片隅で蠢いていた。
【 レンス 】
「――ことは順調に進んでおります。どうか、もうしばらくお待ちください」
自邸の一室にて、煌・レンスは何者かに呼びかけていた。
【 ???? 】
「――そうですか――」
返ってくるのは、どこかおぼろげな、うつろな声。
【 レンス 】
「このたびの“義挙”……果たして、成りますかな」
*義挙……正義のための行動の意。
【 ???? 】
「さて――それは――」
【 ???? 】
「――“天命”とやらの、気まぐれ次第でありましょう――」
【 レンス 】
「まことに! さてさて、かの者たちの一世一代の大舞台、しかと間近で鑑賞させていただきましょうとも!」
レンスはいつもの芝居がかった笑みではなく、口の端だけを吊り上げて、愉快げに微笑したのだった――
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