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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
99/421

◆◆◆◆ 6-4 緊迫 ◆◆◆◆

【 ヨスガ 】

「……どう見た?」


 シジョウが去ったあと、ミズキに問うヨスガ。


【 ミズキ 】

「さて……あの様子では、本当になにも知らされていないようにも見えましたが」


【 ヨスガ 】

「ふん、敵を欺くにはまず味方から――ということもあるゆえな」


 皇太后とシジョウらが結託しているのは事実ではあるが、その繋がりは決して対等なものではない。

 十二佳仙の権勢は、あくまでコウ太后の権威に由来している。


【 ヨスガ 】

「もし太后が失脚するか、この世から去ったなら、彼奴きゃつらの権力は消え去り、無力となるわけだが……」


 先ほどの態度は、そうした場合のことを考えて、ヨスガに媚びを売ってきたかのようでもあった。


【 ヨスガ 】

「……万が一、彼奴らが膝を屈して許しを請うてきたら、どうする?」


【 ミズキ 】

「…………」


 ヨスガの問いを受けて、ミズキは己の手をじっと見つめる。


【 ミズキ 】

「もしもあなたが……ヨスガさまがお許しになるというのならば、私も従いましょう」


 絞り出すように出した答えは、そういうものだった。


【 ヨスガ 】

「……そうか。まぁ、それはその時がきたら考えるとしよう」


【 ミズキ 】

「そうですね……今は、あらためて警戒を強めましょう」


【 ヨスガ 】

「うむ――宝玲山ほうれいざんの者たちはどうなっている?」


【 ミズキ 】

「すでに先遣隊せんけんたいは市中に潜伏しているとのこと……ほどなく、本隊も参ることでしょう」


【 ヨスガ 】

「そうか……」


 ミズキの答えに、ヨスガは腕を組んだ。


【 ヨスガ 】

「――それまで、時があればよいがな」




【 シジョウ 】

コウ秘書官――」


【 レンス 】

「おお――これは、黄龍コウリュウ老師! ご機嫌いかがでありましょうや」


 宮中の廊下でシジョウに呼び止められたレンスは、いつものように大げさな身振りで挨拶をしてみせた。


【 シジョウ 】

「……皇帝陛下の招きに応えたとのことですが?」


【 レンス 】

「ええ、もちろんですとも。臣が君に招かれて行かぬ道理がありましょうか?」


【 シジョウ 】

「……実際、どうなっているのです? 国母さまは、いったい……」


【 レンス 】

「さてさて……なにも、なにもうかがってはおりませんよ。それではこれにて――」


 大仰に一礼すると、レンスはそそくさと去っていった。


【 シジョウ 】

「…………っ」


【 他の十二佳仙 】

「……っ、あの若僧、無礼なっ……!」


【 シジョウ 】

「……放っておけ。それより、祈願祭の支度を急がせよ」


【 他の十二佳仙 】

「ははっ……!」


【 シジョウ 】

(すべては、国母さまのてのひらの上――か?)


 どうあれ、こうなっては手をこまねいているわけにはいかない。


【 シジョウ 】

(討たれる前に――討つのみ……!)




 ヨスガとシジョウらの間に、緊迫した空気が流れる中……

 まったく別の思惑が、帝都の片隅でうごめいていた。


【 レンス 】

「――ことは順調に進んでおります。どうか、もうしばらくお待ちください」


 自邸の一室にて、コウ・レンスは何者かに呼びかけていた。


【 ???? 】

「――そうですか――」


 返ってくるのは、どこかおぼろげな、うつろな声。


【 レンス 】

「このたびの“義挙ぎきょ”……果たして、成りますかな」

 *義挙……正義のための行動の意。


【 ???? 】

「さて――それは――」


【 ???? 】

「――“天命”とやらの、気まぐれ次第でありましょう――」


【 レンス 】

「まことに! さてさて、かの者たちの一世一代の大舞台、しかと間近で鑑賞させていただきましょうとも!」


 レンスはいつもの芝居がかった笑みではなく、口の端だけを吊り上げて、愉快げに微笑したのだった――

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