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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
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◆◆◆◆ 5-37 呪術合戦 ◆◆◆◆

 ガク・シュレイ率いる宙軍二万(騎兵三千、歩兵一万五千、その他二千)が森羅軍(騎兵六千、歩兵三万四千)と接触したのは、岳東がくとうにおいてであった。


【 シュレイ 】

「あれが森羅兵か……噂にたがわぬ異様さだな」


【 シンセ 】

「はい。本当に、女しかいないとは……しかも、あの姿……」


 肌をさらけ出し、おまけに色鮮やかな刺青を入れている。

 宙の文化からすると、あらゆる意味で、およそありえない軍であった。


【 シンセ 】

「どう攻めてくるでしょう?」


【 シュレイ 】

「数ではあちらが優位だ。正面から来るだろうが……問題は、呪術だな。いざという時は、たのむ」


【 シンセ 】

「はい――お任せを」




 ヴァンドーラ率いる森羅軍が宙の陣へ攻めかかったのは、陽がのぼって間もなくのことである。


【 ヴァンドーラ 】

「――聡きヴァンドーラ、これにありっ! いざ者ども、手柄を立てよ!」


【 森羅兵たち 】

「――――――ッッ!!」


 甲高い喊声かんせいを張り上げ、まっしぐらに突撃していく森羅の女兵たち。


【 宙兵たち 】

「…………っ!」


 この異様な軍の攻勢に、宙軍はいっとき戸惑ったものの、


【 シュレイ 】

「恐れることはない――敵は野人なり、およそ軍法なし! 我が命に準じれば負けはせぬ!」


【 宙兵たち 】

「おおおっ……!」


 大崩れすることなく、そのまま踏みとどまり、森羅兵の圧力を受け止めた。


【 ヴァンドーラ 】

「ちいっ……なんだ、この陣はっ……!?」


 うねうねと宙兵が渦を描くように動くことで、森羅兵の突貫を阻止し、拮抗してみせている。

 これぞシュレイが築いた〈とぐろを巻く蛇の陣〉と呼ばれる陣形であったが、ヴァンドーラらは知る由もない。

 最初の勢いを殺され、森羅軍は兵を進めあぐねた。




【 ウツセ 】

「――思いのほか、敵陣は堅いようです」


 本陣よりヴァンドーラの苦戦を眺め、ウツセが告げる。


【 アグラニカ 】

「やはり、力押しだけではままならないようですね。ならば……」


 輿こしに乗ったアグラニカが、印を結び、呪文を唱える――


【 アグラニカ 】

「――――っ!」


 宙の言葉とはかけ離れた気合が放たれるや否や、


【 ウツセ 】

「おおっ……!?」


 森羅の陣から、ムクムクと白いかすみが立ち昇ったかと思うと、それが巨大な蛇の姿へと変じていく――




【 宙兵 】

「な――なんだ、あれはっ……!?」


【 シュレイ 】

「……っ! 十の首を持つ大蛇だと……!?」


 正確な首の数はわからないが、とにかく、あまたの首を持つ大蛇おろちの影が森羅の陣から出現し、宙軍へと襲いかかってくる――


【 大蛇の群れ 】

「ガ、ア、ア……!!」


【 宙兵 】

「ひいいっ……!?」


 その妖しさに兵は気を呑まれ、恐れおののき、さしもの堅陣も崩れかかる。


【 シュレイ 】

「これが森羅の呪術か……シンセ!」


 シュレイの命を待つまでもなく、


【 シンセ 】

「みな、参りましょう――いざ!」


【 神鴉兵たち 】

「はっ――」


 シンセは黒ずくめの兵を引き連れ、大蛇に対峙するや、


【 シンセ 】

「――“ダン”!!」


 兵たちと共に、一斉に印を結ぶ――

 すると、シンセや黒衣の兵たちの身からムクムクと雲気が立ち昇って寄り集まり、たちまち鳥と変じた。


【 巨鳥 】

「ガアアア……!!」


 からすというには巨大すぎるおおとりは、翼をはためかせ、くちばしと爪をふるって大蛇に挑みかかっていった。


【 大蛇 】

「――シャアアアッ!」


【 巨鳥 】

「――グォオオオッ!」


【 兵士たち 】

「お、おおおっ……!」


 眼前で繰り広げられる、巨大な化生ばけもの同士の戦い……現実離れした光景に、両軍の兵はつい目を奪われてしまう。

 そんな中、怪鳥の爪が蛇の首をかっさばき、他の首を引きちぎり、次々と首の数が減っていく。

 その影響は、術者に直接跳ね返る――




【 アグラニカ 】

「くっ……ふっ!」


 アグラニカは身を引きつらせ、吐血とけつした。

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