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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
91/421

◆◆◆◆ 5-36 東方戦線 ◆◆◆◆

【 ウツセ 】

「――早急に手を打つべきかと思います」


【 ヤクモ 】

「ふむ……」


 スイ・ヤクモの本陣では、シン・ウツセがヤクモを相手に熱弁をふるっていた。


【 ウツセ 】

「本来なら、すでに森羅軍と合流できていた頃ですが、悪天候のせいで大幅に遅れが生じています。このままでは……」


 宙軍十万に対し、ヤクモ軍は五万、森羅軍は四万……合流して初めて互角の兵力である。

 分断された現状では、各個撃破される可能性も否定できない。


【 ヤクモ 】

「こちらからの指示を待ってくれているならいいが……そうとも限らぬな。どう見る?」


【 ウツセ 】

「女王陛下が、みずから兵を率いているならば……おそらく、独自に判断して行動されるでしょう」


 森羅の女王〈たおやかなるアグラニカ〉のことを思い出し、ウツセはそう分析した。


【 ヤクモ 】

「ほう、そう思うか?」


【 ウツセ 】

「……女王陛下とは、いささか語り合いましたので。誰かの指示を仰がねば動けない御仁ではありません」


【 ヤクモ 】

「なるほどな。そなたが言うなら、そうなのであろう」


 とヤクモは頷き、


【 ヤクモ 】

「では、急ぎ森羅軍のもとへ向かってもらおう。どう動くかは、臨機応変にたのむ」


【 ウツセ 】

「……っ、はっ……!」


 ウツセは一礼して席を立ち、さっそく支度に取りかかったのだった。




 岳東がくとうの街道を東へ向かう、万余の軍勢。

 その先頭に立つのは、全身黒ずくめの異様な一団である。


【 シュレイ 】

「アイリ殿の様子はどうだ?」


【 シンセ 】

「は……今は落ち着いておられます。昨夜は、いささか荒れておられましたが……」


【 シュレイ 】

レイ将軍の説得が功を奏したか」


【 シンセ 】

「そのようです」


【 シュレイ 】

「森羅の呪術は並々ならぬものがあるとか……油断は禁物だ」


【 シンセ 】

「――心得ております。きっと、お力になってみせましょう」




 軍を離れ、東に向かったウツセが森羅軍を発見したのは、岳東の地においてであった。


【 ヴァンドーラ 】

「おお――男にして女のごとき勇士! 壮健でなによりにござる――」


 出迎えたのは、森羅の将〈さときヴァンドーラ〉である。


【 ウツセ 】

「ご無沙汰しています――陛下はいずこに?」


【 ヴァンドーラ 】

「ちょうど、戦勝祈願の祈祷きとうが終わるところなれば。案内いたそう」


【 ウツセ 】

「かたじけなく――」


 ヴァンドーラに従って森羅軍の本陣へ向かうと、


【 アグラニカ 】

「お久しゅうございます、シン将軍」


 森羅の女王、〈たおやかなるアグラニカ〉が待っていた。

 少し疲労の色が見えるのは、祈祷を終えたばかりだからであろうか。


【 ウツセ 】

「こちらこそ、ご無沙汰しております。遠路はるばるお出でましいただき、感謝にたえません」


 深々と一礼し、長途ちょうとをねぎらう。

 *長途……長い旅路の意。


【 ウツセ 】

「援軍の派遣、かたじけなく存じます。いささか予定が狂ってしまいましたが……」


【 アグラニカ 】

「是非もありません、ここは異郷……我らの守り神の加護も薄れておりますれば」


【 ウツセ 】

「今後の方針ですが、どうお考えで?」


【 アグラニカ 】

スイ公との合流が難しいとなれば、いっそ、ちゅうのみやこを衝く――という策も考えましたが……」


【 ヴァンドーラ 】

「それは容易ではない様子。されば、宙軍の背後を衝くべし――と、態勢を整えているところにて」


【 アグラニカ 】

「もっとも、あちらもそれくらいは考えておりましょう。シン将軍の読みはいかに――?」


【 ウツセ 】

「は、おそらく宙軍は一軍を割き、こちらへ兵を差し向けるものと思われます。各個撃破を図って大軍を送ってくるか、足止めにとどめるべく小勢にとどめるか……恐らくは後者とみますが」


【 アグラニカ 】

「なるほど……こちらは遠征軍、糧食も豊富ではありませぬゆえ、長期戦は厄介ですが……」


【 ヴァンドーラ 】

「ならば全力をもって、一気に敵に当たるべし!」


【 森羅の将 】

「しかり! 宙の弱き男どもに、我らが後れを取ろうはずもなし!」


【 ウツセ 】

「……どうあれ、敵の動き次第ですな」


 と、一同が相談している最中に、


【 偵察兵 】

「申し上げつかまつる――宙の軍勢が西より接近中、その数およそ二万!」


 西へ指し向けていた偵騎が戻り、そんな知らせをもたらした。


【 アグラニカ 】

「二万ですか……足止めをもくろんでいるようですね」


【 ウツセ 】

「そのようですが、油断は大敵です。敵将はただならぬ男ですので」


 そう言いつつもウツセは、レイ・グンムがみずから来ることはさすがにあるまい、と見定めてはいた。


【 ウツセ 】

(閣下と対峙しながら、本陣を空けるなどありえない……いや、やりかねないか?)


 そう思わされるだけでも、グンムの術中なのかもしれなかった。

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