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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
78/421

◆◆◆◆ 5-23 開戦 ◆◆◆◆

 ちゅう軍と南軍が対峙したのは、〈獅水しすい〉の地を流れる河を挟んでのことだった。

 河幅はあるが、水量は少なく、徒歩や騎馬で超えることも難しくはない。


【 ヘイジ 】

「おおっ……すげえや、いったい何万人いるんだろっ?」


 宙軍の陣を離れたゴウ・ダイトウとその連れであるヘイジは、丘陵から両軍の布陣を見下ろしていた。


【 ダイトウ 】

「ふむ……宙軍が十万、南軍はざっと五万といったところか」


【 ヘイジ 】

「へえ……どっちが勝つんですっ?」


【 ダイトウ 】

「普通に考えれば、当然、多いほうが勝つ――が、それだけではないことくらいは、お前にもわかろう?」


【 ヘイジ 】

「わ、わかってますよ! 軍略とか、いろいろあるってことでしょうっ?」


 ダイトウは頷きつつ、両軍の気配を見定める。


 迎え撃つ側であるスイ・ヤクモ率いる南方軍は、各地から急遽きゅうきょ集められた兵が中心だけに、やや隊列にばらつきはあるものの、官軍何するものぞ――という気迫がみなぎっている。


 いっぽう、攻め手である宙軍は。

 千里せんりの道を遠征してきたにもかかわらず、消耗しょうもうの色は薄く、これまた士気は高い。

 この一点を取ってみても、率いる将がただならぬ力量を持っていることの証といえる。


【 ダイトウ 】

レイ・グンム――か)


 一晩語り合ったことで、凡将でないのはわかっている。

 が、非凡であるかどうかまでは、断定できない。


【 ダイトウ 】

(あのスイ将軍と、どう渡り合うか……お手並み拝見というところだな)


【 ヘイジ 】

「おっ! そろそろ、始まるみたいですよ……!」




 両軍の間に緊張が募るなか、宙軍から勇壮な陣太鼓が鳴り響き、華美な装飾で彩られた四頭立ての戦車が現れた。

 *戦車……ここでは戦闘用の馬車の意。タンクではなくチャリオット。


 その車長(指揮官)席には、豪奢な甲冑に身を包んだ男の姿がある。


【 レツドウ 】

「これなるは天兵てんぺいを預かる大宙帝国が宰相、ラク・レツドウなり――南賊ヤクモに一言いわん」


 宙軍の総司令・レツドウが、大音声で呼ばわった。


【 レツドウ 】

スイ・ヤクモ――汝、大罪をゆるされ、巡察使(地方長官)に任じられながらもその役目を果たさぬとが、天地の許さざるところと知れ!」


【 レツドウ 】

「今すぐ降伏するならば、その老い先短い命だけは許してつかわそう――」


 これに応じて、宙軍からは


【 宙兵 】

くだれ! 降れ!! さっさと降れ!!」


 との喚声かんせいが、囂々(ごうごう)と響き渡る。

 もとより、レツドウも兵たちも、本当にヤクモが降るなどと思ってはいない。

 これはいわば、戦場における開戦の作法である。

 ほどなくして、南軍から一騎の人馬が進み出てきた。


【 ヤクモ 】

「これはラク宰相――わざわざ遠方への出征、ご苦労なことでござる」


 簡素な甲冑を身にまとったスイ・ヤクモであった。

 南軍の主力たる騎馬の民・飛鷹ひようが好む軽装姿は、きらびやかな装いのレツドウとは好対照といっていい。


【 ヤクモ 】

「しかし、せぬことだ。この私にいったいどのような罪があって、征伐せんとおっしゃる――?」


 と、応戦するヤクモ。

 これもまた、儀礼の一環といえた。


【 レツドウ 】

「わからぬとあらば、教授してくれるゆえ、しかと耳の穴をほじくり返して聞くがいい――」

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