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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
67/421

◆◆◆◆ 5-12 イズルとハルカナ(前) ◆◆◆◆

リン公は三界を大いにさわがし、コウ老師は智をもて世をおさめる』



 ――むかしむかし、神祖さまがこの世を治めていたころのお話です。



【 アズミ 】

「神祖さまって、だれー?」


【 ホノカナ 】

「いちばん最初の皇帝陛下だよ。天子さまのご先祖で、正しくは〈神祖武烈替天皇帝しんそ・ぶれつたいてんこうてい〉さまっていうの」


【 アズミ 】

「ふーん、ごたいそうだねー」


【 ホノカナ 】

「よくそんな言い方知ってるね……えっと、続きを読むね」



 ――神祖さまには、智勇にすぐれた十七人の家臣、すなわち〈武烈十七卿ぶれつじゅうななきょう〉がお仕えしていました。

 その中のひとり〈リン・ハルカナ〉公は怪力無双の豪傑で、数多くの手柄を立てた大将軍でした。



【 ホノカナ 】

「あっ、鱗大将軍はね、わたしのご先祖さまなの! まあ、家系図とかそういうのはないんだけど……わたしは信じてるから!」


【 アズミ 】

「そういうのいいから、つづきー」


【 ホノカナ 】

「あっ、はい……」



 ――ところがあるとき、リン公は神祖さまのご機嫌をそこねてしまい、将軍をクビになり、領地も取り上げられてしまいました。

 鱗公の友人で、やはり武烈十七卿のひとりでもある方士〈コウ・イズル〉老師がやってきて、尋ねました。


【 煌老師 】

「鱗将軍、これはいったいどうしたというのです?」


 すると鱗公は、ふくれっ面で答えました。


【 鱗公 】

「おお、聞いてくれ煌老師! おいら、陛下に意見を申し上げただけなんだべ。そしたら、このありさま! ひどい仕打ちもあったもんだべ!」



【 ホノカナ 】

「……鱗大将軍、こんなお人柄じゃなかったと思うんだよね……ちょっと戯画化しすぎじゃないかな? もっとこう、知的で――」


【 アズミ 】

「そういうのいいからー」


【 ホノカナ 】

「あっ、すみません……」



 ――鱗公の言葉に、煌老師は疑問を抱きました。


【 煌老師 】

「陛下は聡明にして公平な御方です。進言されたくらいで罰を与えたりするはずはないのですが……」


【 鱗公 】

「ところがどっこい、おいらはこの始末だい!」


【 煌老師 】

「いったい、どんな進言をしたのです?」


 すると、鱗公は鼻息も荒く言いました。


【 鱗公 】

「おいらたちの働きで、地上はすっかり平和になったべ? だから、お次は神仙が住む天の国や、妖魔どもが巣くう夜の国に攻め込んで、征服するべえ! って申し上げたんだべ」


【 煌老師 】

「はぁ……」


 煌老師はあきれ果てて、思わずため息をつきました。


【 煌老師 】

「誰よりも平和を愛する陛下にそんな乱暴なことを言っては、叱られるのも道理というものです」


【 鱗公 】

「むむむ……」


 煌老師の言葉に、鱗公はうなるばかりでした。


【 煌老師 】

「きちんと謝罪すれば、きっと陛下は許してくださいましょう。さぁ、一緒にお詫びに行こうではありませんか」


【 鱗公 】

「うむむ……しかし、武人たる者が頭を下げるだなんて、こっ恥ずかしいべ!」


 鱗公は乗り気ではありません。


【 鱗公 】

「そもそも、おいらは間違ったことは言ってないべ? 血の気が多い連中は、戦争がないと退屈で仕方ないべ! このまま放っておいたら、そのうち味方同士で合戦をおっぱじめるに違いないべ!」


【 煌老師 】

「それは、まあ、一理ありますが……」


 と、煌老師は認めつつも、


【 煌老師 】

「だからといって、神仙や妖魔に戦争を仕掛けるのは無理というものです。しかし、口で言っても納得してもらえないでしょうね」


【 鱗公 】

「んだ!」


【 煌老師 】

「では、こうしましょう。百聞は一見に如かず……一緒に天の国に行ってみようではありませんか」


【 鱗公 】

「おお、さすがは煌老師、話が早いべ!」

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