表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
64/421

◆◆◆◆ 5-9 再会 ◆◆◆◆

【 ホノカナ 】

「あの……ミツカさん、ここって書肆ほんやさん……なんですか?」


【 ミツカ 】

「……書肆? ああ――いえ――さぁ、なんといったら、いいのか――」


 ホノカナの問いに、ミツカは首をひねる。


【 ミツカ 】

「書が――たくさんあるところ――としか、いいようがありません――」


【 ホノカナ 】

「は、はぁ……」


 変わった人だ、とホノカナは思った。

 もっとも、宮城に来てこのかた、変わった人にしか会っていないような気もするが。


【 ホノカナ 】

(この人も、セイレンさまみたいな方士? それとも、本物の神仙とか……!?)


 内心でホノカナがそう思っていると、


【 ミツカ 】

「あなたは――書が――お好きですか」


【 ホノカナ 】

「えっ? あっ……はい! 子供の頃、よく読んでました! 昔の英雄のお話とか……」


【 ミツカ 】

「そう――ですか――それは――」


 ミツカは端正な相貌に、柔らかな微笑をうかべた。


【 ミツカ 】

「とても――素晴らしいこと――です」


 えへへ、とホノカナは頭を掻いた。


【 ミツカ 】

「よろしければ――一冊、手に取ってみては――?」


【 ホノカナ 】

「えっ? え、ええ……」


 ミツカにうながされ、なにげなく書架に手を伸ばし、一冊の書を取り出してみる。


【 ホノカナ 】

「……っ!? こ、これって――」


 ホノカナは目を見開いた。


【 ホノカナ 】

「これ、わたしが子供の頃に持ってたのと同じ本……! うわぁ、懐かしいっ!」


 ページをめくりながら、目を輝かせるホノカナ。

 最後に読んだのはもうずっと前だが、文や挿絵には見覚えがあり――


【 ホノカナ 】

「えっ……!?」


 ホノカナの手が止まる。

 その視線の先には、


【 ホノカナ 】

「こ、この落書きっ……わたしがっ……」


 空白の項に、自画像らしき似顔絵が描かれている。

 それは、彼女がかつて持っていた本に描いたものに間違いなかった。


【 ホノカナ 】

「これ、本当に、わたしが持ってたあの本……!?」


【 ミツカ 】

「そう――ですか。あなたと、その書は――再会するさだめ、だったのでしょう――」


【 ホノカナ 】

「……っ、そ、そうなんだ……そうなんですね……!」


 ホノカナが目を潤ませているのは、思いがけない邂逅かいこうのゆえか。


【 ホノカナ 】

「あ、あのっ、この本……買わせてもらえませんかっ?」


【 ミツカ 】

「いいえ――お譲り、しましょう。どうか――お持ちください」


【 ホノカナ 】

「えっ? で、でも……いいんですか……?」


【 ミツカ 】

「ええ――もともと、あなたのものであったのだし――それがきっと、その書の、さだめなのでしょうから――」


【 ホノカナ 】

「あ、ありがとうございます、ミツカさんっ……!」


 本を大切そうに抱き締めながら、ホノカナは一礼する。


【 ミツカ 】

「礼には――及びません。どうか、その書と共に――よき旅を――」




 それから、しばらく後……

 元きた道を歩くふたりの姿があった。


【 セイレン 】

「――いやはや、ひどい目に遭いました! まったく近頃の書肆ときたら、客をもてなすという発想が欠けておりますなっ!」


 書から解放されたセイレンは、ほうほうのていで無限書廊を離れ、帰途についているところなのだった。


【 ホノカナ 】

「そもそも、大声で騒いでたセイレンさまが悪いのでは?」


 セイレンに続きながら、ホノカナが的確なツッコミを入れる。


【 セイレン 】

「ぬぬっ……そ、それは、一理ありはしますけれども!」


【 ホノカナ 】

「けっきょく、肝心の兵法書も手に入らなかったし……」


【 セイレン 】

「……い、いいのです! やはり書に頼るなど邪道! この私の英邁なる頭脳をもって、陛下の覇業をお助けしましょうぞ!」


【 ホノカナ 】

「はぁ……」


 呆れながらも、ホノカナは懐に入れた書をギュッと抱き締める。

 それは、今は亡き両親から贈られた、形見でもあった。

 てっきり、七年前のいくさの際、灰になってしまったと思っていたけれど……


【 ホノカナ 】

(いつかまた、あの子といっしょに読みたいな……)


 今は遠く離れて暮らす弟に、思いを馳せるホノカナなのだった。

ブックマーク、ご感想、ご評価いただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ