◆◆◆◆ 5-4 男の矜持 ◆◆◆◆
ミナモがヴァンドーラとの一騎討ちを終えた後……
【 ヴァンドーラ 】
「さぁ、もう一献――」
【 ミナモ 】
「ヒック……この濁酒、上品さには欠けますが、悪くはありませんわね!」
さっそく宴となり、ヴァンドーラをはじめ、女兵たちが次々とミナモを称えている。
【 女兵 】
「げにも、見事なもの……刺青がないにも関わらず、万夫不当のヴァンドーラに引けをとらぬとは!」
【 ミナモ 】
「そうそう! 気になっておりましたわ……なにゆえ、あなたがたは女ばかりなのです? 殿方はどこにおりますの?」
【 女兵 】
「はて、妙なことを……いや、宙の者は左様であったか?」
【 ヴァンドーラ 】
「しかり――宙はもっぱら男が戦う。むろん、ミナモ殿がごとき豪傑もいるが……」
【 ミナモ 】
「? ど、どういうことですの?」
【 ヴァンドーラ 】
「つまり――」
ヴァンドーラが語るには。
森羅の民は、まずもって圧倒的に女の人口が多い。
これは、土地神の加護を受けられるのが女のみだからであって、男は成人前に世を去ることが多いのだという。
かつまた、身に記した刺青によって土地神の力を授かった女たちは剽悍なる戦士となり、男以上の戦闘力を得るようになるのだ。
【 ミナモ 】
「ふぅむ……そういう次第でしたのね!」
【 女兵 】
「……ゆえに、まだ、いささか納得のいかぬ者もある。宙にも、ミナモ殿のごとき剛の者がいることはわかったが……」
【 他の女兵 】
「さよう、か弱き男ごときと共に戦うのは、気に入らぬ……という者たちがな」
【 ミナモ 】
「まぁ! 確かに、ものの役に立たない腰抜け男もおりますけれど……こと、我が父上に従う者に、そんな腑抜け野郎は一人もおりませんわ!」
ふと、ウツセを見ると、
【 ウツセ 】
「…………」
ミナモと異なり近寄る者もなく、ひとり手酌で酒を飲んでいた。
【 ミナモ 】
「ウツセ殿! お聞きになったかしら? かの者たちは……」
【 ウツセ 】
「聞いておりましたとも」
ウツセは淡々と、
【 ウツセ 】
「聞いての通り、森羅の習俗では、男はか弱き者、守られるべき存在……とされています。それゆえ、納得できぬ者もいるのでしょう」
【 ウツセ 】
「――されど、私が武を示しても仕方ありますまい。それに、いささか弓馬の術は身につけてはいますが、ミナモ殿ほどではありません」
【 ミナモ 】
「ですけれど、それではっ……」
【 ウツセ 】
「ええ、彼女たちに侮られたままでは、今後のためにもよくありません。そこで――」
と、ウツセはおもむろに立ち上がると……
【 ウツセ 】
「――これにて一勝負、いかがかな?」
懐から取り出したのは、紙牌の束であった。
【 女兵 】
「おお――〈武烈牌〉か!」
武烈牌とはすなわち紙牌遊戯であり、宙ではやや廃れているが、森羅ではなお人気があった。
【 他の女兵 】
「ふん、男ふぜいが小生意気なっ……叩き伏せてくれよう!」
【 ウツセ 】
「されば――お相手、願いましょう」
ウツセは悠然と微笑み、紙牌を配り始めた……
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