◆◆◆◆ 5-3 女の闘い ◆◆◆◆
【 ミナモ 】
「わたくしの実力、しかとその目ン玉かっぴろげて見るがいいですわ!」
【 ヴァンドーラ 】
「弱い犬ほどよく吼えるというもの――」
大勢の森羅の女戦士たちが見守る中、愛馬にまたがったミナモとヴァンドーラが対峙している。
【 アグラニカ 】
「まずは、弓の腕をもって武を示すべし――」
合図とともに、両騎が動き始める。
【 ヴァンドーラ 】
「はっ――!」
ヴァンドーラが弓を引きしぼり、矢を放った。
【 ミナモ 】
「――――っ」
空を割く一閃を、ミナモがすんでで躱す。
【 ミナモ 】
「やりますわね――しかし!」
ミナモが矢をつがえ、気合とともに放てば、
【 ヴァンドーラ 】
「ぬうっ……!?」
精妙きまわる一矢が、ヴァンドーラの手にした弓を見事に弾き飛ばしていた。
【 観衆たち 】
「おおおっ……!」
ミナモの離れ業に、女戦士たちの驚嘆の声があがる。
【 アグラニカ 】
「なるほど、神弓姫の異名は伊達にあらず――されば、次は槍を持って示すべし――」
今度は両者が先端に布の巻かれた槍を持ち、打ち合う。
布には赤い塗料が付着しており、腕を競うわけだが――
【 ミナモ 】
「くっ……!」
十数合も打ち合うと、ミナモの方が朱に染まってきていた。
どうやら槍においては、ヴァンドーラに一日の長があるらしい。
【 アグラニカ 】
「それまで――されば、最後は組み打ちをもって武を示すべし!」
【 ミナモ 】
「お安い御用ですわっ!!」
と、ミナモは槍を放ると、そのままヴァンドーラに掴みかかっていった。
【 ヴァンドーラ 】
「小癪なりっ!」
森羅の女将軍も一歩も引かず、これと真っ向から渡り合う。
組み合ったまま馬から転がり落ちても離れることなく、上となり下となり、休むことなく相争う。
取っ組み合いとなれば、これは軽装のヴァンドーラに分があったが、
【 ミナモ 】
「――ええいっ、うっとうしいですわっ!!」
と、ミナモは距離をとると、具足を脱ぎ捨て着衣をはだけ、森羅の戦士もかくやというあられもない姿となった。
【 ミナモ 】
「ふんぬっ!」
拳を唸らせ蹴りを繰り出し、渾身の勇をふるって立ち向かう。
【 ヴァンドーラ 】
「何のっ……!」
いずれも譲らず、激しくもつれ合い、ぶつかり合う両雄。
そんな姿に観戦者たちも目を奪われ、歓声が響き渡り――
【 アグラニカ 】
「――そこまで――」
両者汗みずくの泥まみれになったところで、女王が告げた。
【 アグラニカ 】
「この勝負は五分と五分――ゆえに、引き分けとすべし」
そう裁定が下されると、どっと観衆が沸き、両者を称えた。
【 ミナモ 】
「ぜぇ、ぜぇっ……なかなか、やりますわねっ……!」
【 ヴァンドーラ 】
「其処許こそ、見事なり……!」
ぶつかり合った二人も手を取り合い、互いを認め合っている。
【 ウツセ 】
「やれやれ……」
そんな様子にウツセは安堵しつつも、
【 ウツセ 】
(――しかし、これで万事解決、とはなるまいな)
己に向けられる森羅人の視線を感じつつ、そう確信していたのだった。
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