表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
56/421

◆◆◆◆ 5-1 森羅 ◆◆◆◆

■第五幕:

異郷にて神弓姫は武を示し、辰康寧は智を示すこと、ならびに帝都は三つ巴の擾乱の巷と化すこと



 宙帝国の官軍が南方へと進発したころ、東方の辺境〈森羅しんら〉をゆく二騎の人影があった。


【 ウツセ 】

「ミナモ殿、飛ばし過ぎです……!」


【 ミナモ 】

「のんびりしてはいられませんわ! 今にもケッタクソ悪いチンピラ官軍どもが迫っているというのに!」


 先頭をゆくのはスイ・ヤクモの娘にして〈神弓姫〉の異名をとるミナモであり、後に続くのはヤクモの副官、〈辰康寧〉とあだ名されるシン・ウツセである。

 二人はヤクモの命を受け、森羅への援軍要請の使者として馬を駆けさせているところだった。


【 ミナモ 】

「おっとっ……それにしても、このあたりはまるで道が開けていませんわね」


 悪路に顔をしかめつつ、ミナモがぼやく。


【 ウツセ 】

「それはそうです。もともと、帝国の支配もほとんど及んでいないような土地柄ですから」


【 ミナモ 】

「むむむ……そんな片田舎に援軍など求める意味がございますの?」


【 ウツセ 】

「侮ってはなりません、なにしろ、森羅の兵といったら――」


 そう言いかけて、ウツセは口をつぐんだ。

 ミナモもまた、ただならぬ気配を覚え、眼前の森林を見つめる。


【 ミナモ 】

「なるほど、わざわざお出迎えとは――少しはものの道理がわかってらっしゃるようですわね! 田舎者のわりには!」


【 ウツセ 】

「……そうだといいのですが」


 ほどなく、繁みの中から武装した一団が飛び出してきた。


【 ミナモ 】

「――――っ」


 その異様な風体に、さしものスイ家のご令嬢も言葉を失う。


【 ミナモ 】

「な、なんですの、あれはっ――」


 ミナモがそう口走るのも無理はない。

 なんとなれば、彼女たちの前に現れた武装集団は……


【 ウツセ 】

「――ひとり残らず、女……のようですね」


 それのみならず、


【 ミナモ 】

「な、なんと、はしたない格好ですのっ……信じられませんわ!」


 宙人ちゅうひとの感覚からすれば、半裸といっていいほどに肌を露出させており、しかもその身にはさまざまな刺青いれずみが刻まれている。

 宙にも刺青の文化がないではないが、これほどではない。

 ある者は弓を手に、ある者は刀を手にしているが、みな一様に雄偉な体格で、男にひけをとらぬ強者であるのはひと目でわかる。


【 ウツセ 】

「森羅の女兵……話には聞いていましたが、お目にかかるのは初めてですね」


【 ミナモ 】

「なっ、なんとふしだらなっ……ウツセ殿っ! こんな野蛮人たちに力を借りるなど、正気ですのっ!?」


【 ウツセ 】

「閣下のご命令です。それより――」


 ひとりの女が、ウツセたちの前に進み出てきた。

 戦士たちの中でもとりわけ長身で、全身に勇ましい刺青が記されており、見るからに勇士の貫禄を漂わせている。

 そして、口を開いて――


【 女戦士 】

「――我が名は〈さときヴァンドーラ〉、女王に仕える勇士なり! 其処許そこもとたちは、いかなる故あってここに参った?」

 *其処許……そなた、おぬし、などの意。


【 ミナモ 】

「――はっ……?」


 思いがけぬ古風な物言いに、ミナモは目が点になる。

 いっぽうウツセは慌てることなく、


【 ウツセ 】

「――これは、お初にお目にかかる。我が名はシン・ウツセ、岳南巡察使たるスイ閣下の命を受け、使者として参上つかまつった。何とぞ、御身らの女王陛下への謁見を賜りとうござる」


【 ヴァンドーラ 】

「む……丁寧なる口上、痛み入る。高名なるスイ公の使者とあらば、どうして無下にできようか。しからば、共に参られよ。女王の御座所へとご案内つかまつろう――」


【 ウツセ 】

「かたじけない。さればく参りましょう、ミナモ殿」


【 ミナモ 】

「えっ――ええっ、こっ、心得てそうろうにてございますわっ……!」


 なおも当惑しつつ、ミナモはウツセと共にヴァンドーラなる異邦の戦士の後を追うのだった――

ブックマーク、ご感想、ご評価いただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ