◆◆◆◆ 4-15 酒楼にて ◆◆◆◆
【 グンム 】
「ほう……こいつは豪勢だな」
夜、グンムが足を運んだのは、繁華街にそびえ立つ、帝都でも指折りの豪奢な酒楼であった。
周囲は不夜城のにぎわいで、酔客でごった返している。
【 シュレイ 】
「長楽楼――都でも一番と評判の酒楼です。かつては先帝も、お忍びで通っていたとか……」
そう補足したのはシュレイ。
いつもと異なり、今は方士姿で、覆面を着けて目から上を隠している。
もともと神仙を目指していたというだけあって、なかなか堂に入った様子だ。
【 グンム 】
(よほど、顔を晒したくはないらしいな)
と、内心で思いつつ、
【 グンム 】
「ほほう、詳しいじゃないか。前に来たことがあるのか?」
【 シュレイ 】
「さぁ、どうだったでしょうか」
と、シュレイはさらりと話題をかわす。
【 シュレイ 】
「それよりも、私も同席してよろしいので?」
【 グンム 】
「かまわんさ。一人で来てくれとは言われていないしな。どうせ、あちらだって一人じゃあるまい」
【 シュレイ 】
「凪・ランブ殿ですか。かの〈飛豪斧〉凪・ジンブ将軍の娘御とか……」
【 グンム 】
「ああ、凪将軍にはずいぶん世話になったからな。招かれちゃあ断れねぇよ」
【 シュレイ 】
「グンロウ殿は連れてこなくてよろしかったのですか?」
【 グンム 】
「あいつは、めっぽう酒癖が悪いからな……またぞろ喧嘩沙汰でも起こされちゃかなわん」
【 シュレイ 】
「……それはたしかに」
【 グンム 】
「それより、アイリのことは……」
【 シュレイ 】
「ご安心ください。私の縁者が見ておりますゆえ」
【 グンム 】
「む……それなら安心だ。さて、乗り込むとするか」
【 ランブ 】
「――ご無沙汰しております、嶺将軍」
グンムに上座を勧めながら、ランブが一礼した。
【 グンム 】
「いや、こちらこそ――たしか、七年ぶりですかな」
【 ランブ 】
「はい」
【 グンム 】
(……それにしても、また、ひときわ育ったもんだな)
七年前の時点でかなりの巨躯だったランブだが、あれからさらに背が伸び、そのうえ鋼のような筋肉が身を覆っている。
弟グンロウもかなりのものだが、ここまでではない。
【 グンム 】
(それはそうと……)
グンムは、ランブの横にいる少女に目を向けた。
【 小娘 】
「~~~~っ……」
そこには、緊張で固まっている小娘がいる。
【 グンム 】
(……誰だあれは?)
内心で首をひねりつつ、素知らぬ顔で
【 グンム 】
「こちらは楽老師。私の顧問を務めてもらっております」
【 シュレイ 】
「――なにとぞ、よしなに」
【 ランブ 】
「……ええ。そして、こちらは――」
【 小娘 】
「あっ……は、はいっ、〈青龍・カスカナ〉と申します!」
と、恐縮しながら挨拶したのは、もちろん我らが鱗・ホノカナにほかならない。
【 グンム 】
「ほう、愛らしいお嬢さんだが……ランブ殿の縁者かな?」
【 ランブ 】
「……いえ。さる高貴な御方の名代です」
*名代……代理人の意。
【 グンム 】
「ほう……?」
しかしグンムはそれ以上は問わず、
【 グンム 】
「まあ、積もる話もあることです、まずは一献――」
と、手を叩いて給仕を呼んだ。
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