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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
53/421

◆◆◆◆ 4-15 酒楼にて ◆◆◆◆

【 グンム 】

「ほう……こいつは豪勢だな」


 夜、グンムが足を運んだのは、繁華街にそびえ立つ、帝都でも指折りの豪奢な酒楼であった。

 周囲は不夜城のにぎわいで、酔客でごった返している。


【 シュレイ 】

「長楽楼――都でも一番と評判の酒楼です。かつては先帝も、お忍びで通っていたとか……」


 そう補足したのはシュレイ。

 いつもと異なり、今は方士姿で、覆面を着けて目から上を隠している。

 もともと神仙を目指していたというだけあって、なかなか堂に入った様子だ。


【 グンム 】

(よほど、顔を晒したくはないらしいな)


 と、内心で思いつつ、


【 グンム 】

「ほほう、詳しいじゃないか。前に来たことがあるのか?」


【 シュレイ 】

「さぁ、どうだったでしょうか」


 と、シュレイはさらりと話題をかわす。


【 シュレイ 】

「それよりも、私も同席してよろしいので?」


【 グンム 】

「かまわんさ。一人で来てくれとは言われていないしな。どうせ、あちらだって一人じゃあるまい」


【 シュレイ 】

ナギ・ランブ殿ですか。かの〈飛豪斧〉ナギ・ジンブ将軍の娘御とか……」


【 グンム 】

「ああ、ナギ将軍にはずいぶん世話になったからな。招かれちゃあ断れねぇよ」


【 シュレイ 】

「グンロウ殿は連れてこなくてよろしかったのですか?」


【 グンム 】

「あいつは、めっぽう酒癖が悪いからな……またぞろ喧嘩沙汰でも起こされちゃかなわん」


【 シュレイ 】

「……それはたしかに」


【 グンム 】

「それより、アイリのことは……」


【 シュレイ 】

「ご安心ください。私の縁者が見ておりますゆえ」


【 グンム 】

「む……それなら安心だ。さて、乗り込むとするか」




【 ランブ 】

「――ご無沙汰しております、レイ将軍」


 グンムに上座を勧めながら、ランブが一礼した。


【 グンム 】

「いや、こちらこそ――たしか、七年ぶりですかな」


【 ランブ 】

「はい」


【 グンム 】

(……それにしても、また、ひときわ育ったもんだな)


 七年前の時点でかなりの巨躯だったランブだが、あれからさらに背が伸び、そのうえ鋼のような筋肉が身を覆っている。

 弟グンロウもかなりのものだが、ここまでではない。


【 グンム 】

(それはそうと……)


 グンムは、ランブの横にいる少女に目を向けた。


【 小娘 】

「~~~~っ……」


 そこには、緊張で固まっている小娘がいる。


【 グンム 】

(……誰だあれは?)


 内心で首をひねりつつ、素知らぬ顔で


【 グンム 】

「こちらはガク老師。私の顧問を務めてもらっております」


【 シュレイ 】

「――なにとぞ、よしなに」


【 ランブ 】

「……ええ。そして、こちらは――」


【 小娘 】

「あっ……は、はいっ、〈青龍せいりゅう・カスカナ〉と申します!」


 と、恐縮しながら挨拶したのは、もちろん我らがリン・ホノカナにほかならない。


【 グンム 】

「ほう、愛らしいお嬢さんだが……ランブ殿の縁者かな?」


【 ランブ 】

「……いえ。さる高貴な御方の名代みょうだいです」

 *名代……代理人の意。


【 グンム 】

「ほう……?」


 しかしグンムはそれ以上は問わず、


【 グンム 】

「まあ、積もる話もあることです、まずは一献――」


 と、手を叩いて給仕を呼んだ。

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