表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
50/421

◆◆◆◆ 4-12 粛清 ◆◆◆◆

 帝都の一角にある、豪奢な邸宅。

 その居間に、覆面姿の方士たちが集結していた。

 それぞれ、覆面には『弐』『伍』などの数字が記されている。

 それはすなわち、朝廷に暗躍する方士集団・〈十二佳仙じゅうにかせん〉の一員の証にほかならない。


【 シジョウ 】

「――くだらぬ真似をしてくれたものだな」


 居並ぶ方士たちの前で、『いち』の覆面を身に着けた男……すなわちシジョウの冷徹な声が響いた。


【 方士 】

「も、申し訳ございませんっ……」


 シジョウの前で平伏しているのは、やはり覆面の方士。

 覆面に『じゅう』とあるからには、十二佳仙のひとりにちがいない。


【 方士 】

「あの者を先んじて討てば、ラク宰相に武功を挙げられる恐れもなく、我らも安泰かと存じましてっ……」


【 シジョウ 】

「ふん、浅はかよな。そもそも、召鬼しょうきの術ごときでは、あの老人を討てはせぬ。まったくもって、無用な挑発というものだ」


 カイリンをそそのかし、ヤクモを襲わせたのがこの方士であった。


【 方士 】

「な、ならば、私が直々に出向けば――」


【 シジョウ 】

「無用なことだ。そなた風情が逆立ちしても歯の立つ相手ではない」


【 方士 】

「で、ではっ、せめてきゃつの羽翼の臣をっ……!」


【 シジョウ 】

「もういい。『喋るな』」


【 方士 】

「――――っ」


 シジョウが告げるとともに、拾は硬直する。


【 シジョウ 】

「勘違いするな。私が立腹しているのは、失敗したことに対してではない」


【 シジョウ 】

「――そなたが、私に無断で動いたことに対して、だ」


【 方士 】

「……!!」


 なおも、なにか訴えようとするところへ、


【 シジョウ 】

「――『息をするな』」


【 方士 】

「……っ! …………!!」


 男は床を転がり、喉をかきむしりながら悶え、しばし暴れていたが……じきに静かになった。


【 方士たち 】

「――――っ」


 慄然りつぜんとなって息を呑む、他の十二佳仙たち。


【 シジョウ 】

「覚えておくがいい、独断専行は許さぬ。そなたたちのすべては、この私が握っていると知れ――――」


【 方士たち 】

「は、ははっ……!」


 平伏する方士たちを見下ろしながら、


【 シジョウ 】

(ものごとの表面しか見られぬ輩は、これだからし難い)


 シジョウは内心で、先日の皇太后との密談を思い出していた……




【 ランハ 】

「シジョウ、このいくさの本質はなにか、わかるかしら?」


【 シジョウ 】

「それは――」


 レツドウの提言が容れられ、南征が決まった直後。

 シジョウはランハにそう問われた。


【 シジョウ 】

「一見すれば、ラク宰相閣下による捲土重来けんどちょうらいの大ばくち……とも見えますな」


【 ランハ 】

「ええ、きっと世間ではそう見られることでしょうね。でも……」


【 シジョウ 】

「……よりいっそう、切実な事情がございますな」


【 ランハ 】

「ふふふ! さすがに利口ね、あなたは」


 ランハは微笑む。


【 ランハ 】

岳南がくなん岳東がくとうはね、まぁ、どうでもいいの。どうせ、ろくに租税も取れない荒れた地だものね」


【 ランハ 】

「でも――森羅しんらは、違うでしょう?」


【 シジョウ 】

「まことに……」


 豊かな水と森に恵まれた森羅の地は物産豊かであり、手つかずの鉱物資源も蓄えられている。

 とかく財政難に苦しんでいる宙の朝廷にとって、まさに垂涎すいぜんの地といっていい。

 *垂涎……よだれを垂らすほどに渇望するの意。


【 シジョウ 】

「つまり、このいくさの本当の目的は、森羅を取ることにあると?」


【 ランハ 】

「そういうことね。この森羅の茶葉も、あと少しで切れてしまうもの」


 と、芳醇な香りの茶を味わいつつ。


【 ランハ 】

「もっとも、力づくで奪い取るのは、簡単なことではないけれど」


【 シジョウ 】

「そこは、宰相閣下の腕の見せどころ……と、いうわけですな」


【 ランハ 】

「ふふ、最後のご奉公、見せてもらわないとね」


【 シジョウ 】

「ですが、そうこちらの思惑通りにいくかどうか……」


【 ランハ 】

「それはそうね。あちらにはあちらの考えがあるでしょうから」


【 ランハ 】

「――そこは、あなたの腕の見せどころではなくて? 黄龍こうりゅう老師せんせい


【 シジョウ 】

「……はっ……」

ブックマーク、ご感想、ご評価いただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ