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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
48/421

◆◆◆◆ 4-10 強弓 ◆◆◆◆

 ヤクモも佩刀を手にして、女刺客の一撃を真っ向から受け止めた。


【 カイリン 】

「ちいッ……老いぼれのくせに、生きがイイッ……!」


【 ヤクモ 】

「あいにくだが……仇を討つには、まだ修行が足りぬようだな」


【 カイリン 】

「抜かせイ! おおおおッ……!」


 気合すさまじく、巧緻な騎馬術を織り交ぜ、幾度となく変幻自在の斬撃を繰り出してくるカイリン。

 なかなかの鋭さではあるが、ヤクモの余裕を奪うほどではない。


【 ヤクモ 】

(――仲間がいるのか?)


 援軍の到着を待つ時間稼ぎか、とヤクモが疑い始めたころ、


【 カイリン 】

「くッ……! こうなったラ……!」


 女戦士カイリンは距離を取ると、懐からなにかを取り出し、


【 カイリン 】

「――さァ、あの老いぼれを殺セッ!」


 そう叫びながら、地面に叩きつけた。

 すると、ムクムクと黒煙が立ち昇り――


【 ヤクモ 】

「む――」


 ヤクモの顔色が変わった。

 煙はたちまち巨大な人の形を成して、


【 巨人 】

「オ、オ、オオオオ……!!」


 苦悶の声じみた唸り声と共に、ヤクモへ迫ってきた。


【 ヤクモ 】

「邪法の類か……!」


 巨人の繰り出す拳をすんででかわす。

 空を切った一撃は、まともに食らえば全身の骨が砕けんばかりの重さであった。


【 カイリン 】

「は、ははは! いいゾ、やってしまえッ!」


 手を打って喜んでいたカイリンだが、


【 カイリン 】

「ぐっ……!? う、ううううっ……!?」


 突然、苦しそうに呻き始める。


【 カイリン 】

「な、なんダ、これ……こんなっ――うぐっ! ぐええッ!?」


 吐血したかと思うと、馬から転げ落ちてしまう。


【 ヤクモ 】

(この邪法――あの娘の精気を吸っていると見える)


 ならば、


【 ヤクモ 】

「――早々に、片付けねばなるまい」


 と刀を収め、負っていた弓を構えるヤクモ。

 しかしなぜか、矢をつがえようとはしない。


【 巨人 】

「グ……オ、オオオオ……?」


 なにかを感じ取ったかのように、巨人が硬直する。

 その隙を、逃さず――――


【 ヤクモ 】

「――――ぬぅんッッ!!」


 裂帛れっぱくの気迫とともに、ヤクモは弦を引き――そして、目には見えぬ“なにか”を放った。

 その刹那、


【 巨人 】

「ガッ……アアアアッ……!?」


 黒い巨人の中心に、大穴が穿うがたれていた。


【 巨人 】

「ア……ア、ア、アアァァァ……」


 ほどなく、断末魔の声とともに巨体がさらさらと崩れ、煙に返って風に散らされていく。


【 ヤクモ 】

「ふむ……いささか、鈍ったようだ」


 ヤクモの手にあった弓は真っ二つに折れ、弦も千切れ飛んでいた。


【 ヤクモ 】

「さて――」


 なにごともなかったかのように白髪交じりの髭を撫でつつ、ヤクモは落馬した女のもとへ駒を進める。


【 ヤクモ 】

「――まだ生きていれば、よいがな」

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