◆◆◆◆ 10-13 冥境の少女 ◆◆◆◆
地上にて動乱の予兆が迫るなか……
人知れず、地の底をさまよう影があった。
【 セイレン 】
「う~ん……こっちのはずなんですがねぇ……」
首を傾げる〈藍・セイレン〉。
【 ホノカナ 】
「うぅ……い……いつになったら、外に出られるんでしょうか……」
〈鱗・ホノカナ〉が嘆き節をこぼす。
いったい、どれだけの間、地下をさすらっているのだろう?
【 ホノカナ 】
(もう、何日も経ったような……でも、まだ半日も経っていないような……)
闇の中では、時間の感覚もあやふやになるばかりだった。
意識が朦朧となりつつも、どうにか歩を進めることができるのは……
コロコロ……
【 セイレン 】
「……おっ! また強壮剤が! いやあ、これも日ごろの行いというものですねぇ! どうぞ、ホノカナ殿!」
【 ホノカナ 】
「……明らかにおかしい気がするんですけどっ……」
しかしあれこれ考える余裕もなく、セイレンから受け取った瓶の中身を飲み干す。
【 ホノカナ 】
「ごくごく……ぷはぁ……な、なんとか動けそうですっ……」
【 セイレン 】
「さぁ、もう少しですよ! ……多分ですが!」
【 暗庭君 】
(……やれやれ……)
その後をついていく暗庭君。
いっそ、地上まで運んでやろうかと思いつつ、今となっては顔を出しづらくなっている。
【 暗庭君 】
(まァ、いいか……)
数百年を生きる方士にとっては、数日も数週間も、さしたる違いはないのだった。
【 ホノカナ 】
「はぁっ……はぁっ……」
【 ホノカナ 】
(ヨスガ姉さまたちは……どうなってるんだろう……)
【 ホノカナ 】
(アルカナ……元気に、してるのかな……)
重い足を引きずるホノカナの心の中に、声が響く。
――そんなに、無理しなくても。
――誰も、あなたには期待していない。
――大変なことは、誰かに任せておけばいいのに。
【 ホノカナ 】
(そう……かもしれない)
自分にできることなど、ちっぽけなもので。
天下国家の動きに比べれば、吹けば飛ぶような存在でしかない……
【 ホノカナ 】
(それでも、わたしはっ……)
無力であっても――いや、無力なればこそ、できることもあるだろう。
【 ホノカナ 】
(姉さまのような威厳はないし、他の皆さんみたいにすごい武勇もないけれどっ……)
なにか、できることはあるはずだ。
そう信じているから――
【 ホノカナ 】
(止まるわけには……いかないっ!)
と、そのとき。
――カッ!!
【 ホノカナ 】
「……わっ!?」
【 セイレン 】
「ううっ!? ま、まぶしっ……」
いつぞやのように、ホノカナが背負う宝剣〈赫龍輝剣〉が鞘から抜け、光を放っていた。
【 セイレン 】
「む――これは、壁に、亀裂が……」
光に照らされ、うっすらとした裂け目が露わになる。
【 セイレン 】
「これは――アレですよ! 宝剣が真の力をアレしたみたいなっ……うん、そういう感じの!」
【 ホノカナ 】
「ものすごくぼんやりした感想……!」
【 セイレン 】
「ホノカナ殿、その剣でこの壁を斬ってみてください! きっと、イイ感じになるはず……おおむね!」
【 ホノカナ 】
「どこまでも自信なさそうっ……で、でも、やってみますっ……!」
宝剣を抜き放ち、構える。
【 ホノカナ 】
「すぅ……はぁっ……」
輝く刀身に、思いを込める。
【 ホノカナ 】
「わたしたちのゆく道は――わたしたちで――選び取ってみせますっ……!」
【 ホノカナ 】
「――――ええいッ!」
気合とともに、己の運命を切り拓くかのごとく、ホノカナは剣を振り下ろす。
そして、閃光とともに岩が切り裂かれ――
――ガキィンッ!
【 ホノカナ 】
「……いったあぁっ!?」
――そううまくはいかず、あえなく跳ね返されてしまった。
【 セイレン 】
「う~ん、現実は厳しいですねぇ……」
【 ホノカナ 】
「ううっ……そ、そんなぁっ……」
【 セイレン 】
「世の中、そんなに甘くは――むむっ?」
ピシリ――ピシッ……
見る間に、壁の亀裂が広がっていく。
【 セイレン 】
「おおっ! これはっ……」
【 ホノカナ 】
「…………っ!」
――己の道は、己で選び、己で進むほかはない。
鱗・ホノカナとその仲間たちの運命が、果たしていかなる結末にたどりつくのか――
それは、いまだ、さだかではないのだった。
『薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~』
第一部「落華流帝」編・完
(To Be Continued……)
第一部あとがき
2021年12月より続いてまいりました『薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~』、これにて第一部完結です!
おかげさまで毎日更新を続けることができました。
これまでお付き合いいただき、ありがとうございました!
ご感想やレビューなどいただけましたら嬉しいです(^^)
しばらく充電期間に入りますが、続きの構想はもちろんありますので、そう遠くない未来……
第二部『廃帝陛下の気まぐれ帝国漫遊記(仮)』編でお会いできればと!
再見!




