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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
416/421

◆◆◆◆ 10-8 それぞれの道 ◆◆◆◆

 決断のときが迫り……

 山塞のそこかしこで、今後に関するやりとりが交わされている。


【 ランブ 】

「これまでよく戦ってくれた。陛下を守り通すことができたのは、皆のおかげだ。礼を言う」


【 ランブの部下たち 】

『……っ、ランブ様っ……』


 帝都脱出後、ここまで生きのびた部下たちにむかって、〈双豪斧そうごうふ〉こと〈ナギ・ランブ〉が頭を下げていた。


【 ランブ 】

「――だが、これから先は、さらに過酷な道となるだろう。お主たちの生き方は、よく考えてから決めてほしい」


【 ランブの部下 】

「私は、先代からナギ家に恩義ある者っ……どこまでもついてまいりますっ!」


【 他のランブの部下 】

「自分も同じ思いですっ! なにより、ランブ様から離れることなど思いもよらずっ!」


【 別のランブの部下 】

「命尽きるまで、どうかランブ様のおそばに……!」


【 ランブ 】

「皆――かたじけない」


 ランブは目頭を熱くする。

 彼女たちは、父・ジンブが率いていた私兵の縁者がほとんどでであった。

 言わば、父から受け継いだ遺産といっていい。


【 ランブ 】

(お父様――どうか、見守っていてください)


【 ランブ 】

(不肖の娘なれども……決して、お父様の名を辱めはいたしません……!)




 また、別の集まりでは……


【 セン家の家臣 】

「お嬢様、この先、いかがなさるおつもりで?」


【 カズサ 】

「はぁ~? そのようなこと、考えるまでもないでしょうっ!」


 家臣の問いに、〈緋閃剣ひせんけん〉こと〈セン・カズサ〉は眉を吊り上げる。


【 カズサ 】

「我らセン家の者は、どこまでも陛下に従うだけよっ! なにしろ、わたしは陛下のもっとも忠実なる家臣なのだからっ!」


【 カズサ 】

「あなたたちは、あれこれ考えなくても結構――わたしについてきなさい、いいわねっ! ……あっ、いたたっ、傷口が開きそうっ……」


【 セン家の家臣 】

「お、お嬢様、お気を確かにっ……!」


【 セン家の若い臣 】

「(はぁ……やれやれですね……)」


【 セン家の老臣 】

「(いやまったく……放ってはおけませんな……)」


 独特の形で、家臣たちの団結を強めるカズサなのだった。




 一方で、独り身の気楽な面々もすくなくない。


【 エキセン 】

「……クク、部下だの家臣だのが多いと……大変だな」


【 ゼンキョク 】

「エキセン殿は、どうなさるおつもりで?」


 〈霹靂匠へきれきしょう〉こと〈ホウ・エキセン〉と、〈救神双手きゅうしんそうしゅ〉こと〈アン・ゼンキョク〉のふたりが廊下で立ち話を交わしている。


【 エキセン 】

「クク……考えるまでもない。俺は、陛下についていくだけだ……他に、俺を受け入れてくれる場所など、ないのでね」


【 エキセン 】

「あんたも……そうなのだろう?」


【 ゼンキョク 】

「ええ――私は、あの方の裁断刀(手術刀)ですので」


【 ゼンキョク 】

「国家に巣食う悪しき腫瘍しゅようを切除するべく、これからも力を尽くすのみです」


【 エキセン 】

「……あんたに切除されないように、せいぜい、努めなくてはな……ククッ……」


 などと、爆弾使いと医師が話していると……


【 無頼漢たち 】

『救神双手様っ……!』


 無頼の徒がゼンキョクのもとへ駆けつけてきて、一斉にひざまずいた。


【 ゼンキョク 】

「おや、貴方がたは――」


【 無頼漢 】

「お、お忘れですかっ!? 酒場で命を助けていただいた――」


【 ゼンキョク 】

「ああ、例の酒場の……」


 先日、ゼンキョクらを痺れ薬で眠らせようとしたものの、あえなく返り討ちに遭った酒場の悪党たちであった(「9-15 悪名」参照)。


【 ゼンキョク 】

「それで、どうかしましたか? どこか身体の具合が悪いとか?」


【 無頼漢 】

「ど、どうもこうもっ……このとおり、ちゃんと宝玲山までやってまいりましたのでっ、どうか、例の〈百日奪命鍼ひゃくにちだつめいばり〉を取り出して頂きたくっ……!」


【 ゼンキョク 】

「ああ――あれですか」


 ようやく思い出したとばかりに頷いて。


【 ゼンキョク 】

「べつに、必要ありませんよ」


【 無頼漢 】

「はっ……?」


【 ゼンキョク 】

「あのとき貴方がたの体内に打ち込んだのは鍼ではなく、ただの加工した草でしてね。とっくに溶けていることでしょう」


【 無頼漢 】

「っ!? で、では、百日奪命鍼というのはっ……」


【 ゼンキョク 】

「ええ、口から出まかせです」


【 無頼漢たち 】

『…………っ』


 さらりと告げられて、無頼漢たちは二の句も告げない。


【 ゼンキョク 】

「この先、どうするかは貴方がたが決めることです。陛下に従うもよし、元の稼業に戻るのもよし……」


【 ゼンキョク 】

「もっとも、ふたたび賊として出くわした際は――」


【 無頼漢たち 】

『ひいいっ……!?』


 薄く微笑むゼンキョクに、恐れおののく無頼漢たちであった。

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