◆◆◆◆ 10-8 それぞれの道 ◆◆◆◆
決断のときが迫り……
山塞のそこかしこで、今後に関するやりとりが交わされている。
【 ランブ 】
「これまでよく戦ってくれた。陛下を守り通すことができたのは、皆のおかげだ。礼を言う」
【 ランブの部下たち 】
『……っ、ランブ様っ……』
帝都脱出後、ここまで生きのびた部下たちにむかって、〈双豪斧〉こと〈凪・ランブ〉が頭を下げていた。
【 ランブ 】
「――だが、これから先は、さらに過酷な道となるだろう。お主たちの生き方は、よく考えてから決めてほしい」
【 ランブの部下 】
「私は、先代から凪家に恩義ある者っ……どこまでもついてまいりますっ!」
【 他のランブの部下 】
「自分も同じ思いですっ! なにより、ランブ様から離れることなど思いもよらずっ!」
【 別のランブの部下 】
「命尽きるまで、どうかランブ様のおそばに……!」
【 ランブ 】
「皆――かたじけない」
ランブは目頭を熱くする。
彼女たちは、父・ジンブが率いていた私兵の縁者がほとんどでであった。
言わば、父から受け継いだ遺産といっていい。
【 ランブ 】
(お父様――どうか、見守っていてください)
【 ランブ 】
(不肖の娘なれども……決して、お父様の名を辱めはいたしません……!)
また、別の集まりでは……
【 閃家の家臣 】
「お嬢様、この先、いかがなさるおつもりで?」
【 カズサ 】
「はぁ~? そのようなこと、考えるまでもないでしょうっ!」
家臣の問いに、〈緋閃剣〉こと〈閃・カズサ〉は眉を吊り上げる。
【 カズサ 】
「我ら閃家の者は、どこまでも陛下に従うだけよっ! なにしろ、わたしは陛下のもっとも忠実なる家臣なのだからっ!」
【 カズサ 】
「あなたたちは、あれこれ考えなくても結構――わたしについてきなさい、いいわねっ! ……あっ、いたたっ、傷口が開きそうっ……」
【 閃家の家臣 】
「お、お嬢様、お気を確かにっ……!」
【 閃家の若い臣 】
「(はぁ……やれやれですね……)」
【 閃家の老臣 】
「(いやまったく……放ってはおけませんな……)」
独特の形で、家臣たちの団結を強めるカズサなのだった。
一方で、独り身の気楽な面々もすくなくない。
【 エキセン 】
「……クク、部下だの家臣だのが多いと……大変だな」
【 ゼンキョク 】
「エキセン殿は、どうなさるおつもりで?」
〈霹靂匠〉こと〈炮・エキセン〉と、〈救神双手〉こと〈晏・ゼンキョク〉のふたりが廊下で立ち話を交わしている。
【 エキセン 】
「クク……考えるまでもない。俺は、陛下についていくだけだ……他に、俺を受け入れてくれる場所など、ないのでね」
【 エキセン 】
「あんたも……そうなのだろう?」
【 ゼンキョク 】
「ええ――私は、あの方の裁断刀(手術刀)ですので」
【 ゼンキョク 】
「国家に巣食う悪しき腫瘍を切除するべく、これからも力を尽くすのみです」
【 エキセン 】
「……あんたに切除されないように、せいぜい、努めなくてはな……ククッ……」
などと、爆弾使いと医師が話していると……
【 無頼漢たち 】
『救神双手様っ……!』
無頼の徒がゼンキョクのもとへ駆けつけてきて、一斉にひざまずいた。
【 ゼンキョク 】
「おや、貴方がたは――」
【 無頼漢 】
「お、お忘れですかっ!? 酒場で命を助けていただいた――」
【 ゼンキョク 】
「ああ、例の酒場の……」
先日、ゼンキョクらを痺れ薬で眠らせようとしたものの、あえなく返り討ちに遭った酒場の悪党たちであった(「9-15 悪名」参照)。
【 ゼンキョク 】
「それで、どうかしましたか? どこか身体の具合が悪いとか?」
【 無頼漢 】
「ど、どうもこうもっ……このとおり、ちゃんと宝玲山までやってまいりましたのでっ、どうか、例の〈百日奪命鍼〉を取り出して頂きたくっ……!」
【 ゼンキョク 】
「ああ――あれですか」
ようやく思い出したとばかりに頷いて。
【 ゼンキョク 】
「べつに、必要ありませんよ」
【 無頼漢 】
「はっ……?」
【 ゼンキョク 】
「あのとき貴方がたの体内に打ち込んだのは鍼ではなく、ただの加工した草でしてね。とっくに溶けていることでしょう」
【 無頼漢 】
「っ!? で、では、百日奪命鍼というのはっ……」
【 ゼンキョク 】
「ええ、口から出まかせです」
【 無頼漢たち 】
『…………っ』
さらりと告げられて、無頼漢たちは二の句も告げない。
【 ゼンキョク 】
「この先、どうするかは貴方がたが決めることです。陛下に従うもよし、元の稼業に戻るのもよし……」
【 ゼンキョク 】
「もっとも、ふたたび賊として出くわした際は――」
【 無頼漢たち 】
『ひいいっ……!?』
薄く微笑むゼンキョクに、恐れおののく無頼漢たちであった。
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