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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
414/421

◆◆◆◆ 10-6 廃帝の野望 ◆◆◆◆

 天下が騒然となる中、廃帝とされた〈エン・ヨスガ〉はいったいどうしていたか?

 彼女とその一党は、帝都の北西、央原おうげん峰南ほうなんの境界にある〈宝玲山ほうれいざん〉に身を隠していた。


 宝玲山とは山単独の名ではなく、険しい峰が連なる広範な山地を指しており、古来より天然の要害として知られている。

 そのため、かねてから山賊の住処となっていたが、十数年前、〈エイ・バイシ〉が乗り込んできてみずから賊の主となったのである。

 そして三年前、訪ねてきたヨスガとの相談の末、彼女を陰ながら支援する役目を負うことになったのだった。

 かくして、現在……




 宝玲山の〈捧武庁ほうぶちょう〉(山の中枢部)に、主だった幹部たちが集っていた。

 みな沈痛な面持ちなのは、つい先ほどまで、とむらいを行っていたために他ならない。

 バイシをはじめ、このたびの戦いで没した将兵の葬儀が終わったところなのだ。


【 ヨスガ 】

「――いつまでも、悲しみに沈んでいるわけにはいかぬ」


 喪服から着替えたヨスガが、一同に向き直る。


【 ヨスガ 】

「今後の身の振り方を考えねばならぬが……その前にまず、そなたらに明らかにしておかねばならぬことがある」


【 宝玲山の将たち 】

『…………?』


【 ヨスガ 】

「我、すなわち、〈天侠大聖てんきょうたいせい〉は――」


【 ヨスガ 】

「――ちゅう帝国、真の207代天子、エン・ヨスガ、その人である!」


【 宝玲山の将たち 】

『――――っ』


【 宝玲山の将 】

「――ええっ!? そ、そうだったのかっ!」


 と、驚く者もいるにはいたが、


【 宝玲山の将 】

「……いやまぁ、とっくに気づいていましたが」


【 宝玲山の将 】

「まあ、陛下とか呼ばれてたしな……」


 大方の者にとっては、今さらの話であった。


【 ヨスガ 】

「……もう少し驚いてくれてもよいところではないか?」


 反応の薄さにやや不服そうにしつつ、ヨスガは咳払いして話を続ける。


【 ヨスガ 】

「――ともあれ、だ。知っての通り、我は朝廷によって帝位を剥奪され、一介の庶人へと落とされた」


【 ヨスガ 】

「だが、それはあちらの都合というもの。我は退位したつもりはなく、今なお皇帝である。だが、いくらそう言い張っても、現状では蟷螂とうろうの斧にすぎぬ」

 *蟷螂……カマキリ。蟷螂の斧とは、身の程知らずの意。


【 ヨスガ 】

「ゆえに我はこれより、奪われたものを取り戻すべく、天下に喧嘩を吹っかけねばならぬ」


【 ヨスガ 】

「……だが、そなたたちに無理に付き合ってくれと言うつもりはない。我と行動を共にする気がなければ、速やかに立ち去るがよい。止めはせぬ」


【 宝玲山の将たち 】

『…………』


 ヨスガの言葉に、幹部たちは当惑の色を見せている。


【 ???? 】

「大首領――いえ、陛下とお呼びするべきでしょうか」


【 ヨスガ 】

「む……〈裂空二娘れっくうじじょう〉か。どちらでも、好きにするがよかろう」


 声をあげたのは、裂空二娘こと、強弓の使い手〈ロウ・カガノ〉であった。


【 カガノ 】

「では――大首領。私はもともと――〈地侠元聖ちきょうげんせい〉さまの同志でした」


 地侠元聖〈メイ・セイジュ〉……かつて天下を騒がした大盗賊である。

 その器量は、現在四寇と恐れられているレツシンライの三大賊王の兄貴分であった――というだけでも、うかがい知れよう。


【 カガノ 】

「貴方に従っていたのは、天侠大聖がその後継者だと思っていればこそ――」


【 ヨスガ 】

「…………」


【 カガノ 】

「ですが――皇帝であることと、大侠おおおやぶんであることは、矛盾むじゅんします。そうではありませんか――?」


【 ヨスガ 】

「ふむ、それは一理ある。皇帝とは国家の法、公権力そのものの象徴といっていい。一方、侠客の世界とは、仁義をもって法を破ることを良しとする……」


【 ヨスガ 】

「ゆえに我は、大侠たる道は諦めた。そちらは妹分である〈人侠烈聖じんきょうれっせい〉、すなわち〈リン・ホノカナ〉に託すことにした――」


【 ヨスガ 】

「――どこで油を売っているのか、定かではないがな!」


 そう、いまだにホノカナとその同行者の行方は定かではなかった。


【 カガノ 】

「なるほど――ですが、どのみち皇帝権力と任侠集団はしょせん水と油……いずれ利害は一致しなくなり、対立せざるをえないでしょう――」


【 カガノ 】

「そうなってからでは、遅いので――私は今のうちに、おいとまをいただきます――かつての仲間を、撃ちたくはありませんから」


【 ヨスガ 】

「……行く当てはあるのか?」


【 カガノ 】

「は――姉者が、ライの大親分のもとにおりますので――そちらを、頼ろうかと――」


【 ヨスガ 】

「ほう、交龍こうりゅうの……それもよかろう。ロウの姉妹のごとく、離れたい者は遠慮なく申し出るがよい。多少なりとも分け前を渡そう。彼女とともに交龍へ向かうのも良かろうよ」


【 宝玲山の将たち 】

『…………っ』


 ヨスガの言に、幹部たちは複雑そうに顔を見合わせた……

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