表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
413/421

◆◆◆◆ 10-5 揺れる天下 ◆◆◆◆

 ……そして、南方においては。


【 ヤクモ 】

「……どうやら、首尾よくいったようだ」


 天幕の中で書状に目を通していた〈スイ・ヤクモ〉がつぶやく。

 かつては〈南寇なんこう〉と恐れられた彼だが、グンムと手を組んだことにより、現在は賊名を除かれ、れっきとした帝国の巡察使(地方長官)となっている。


【 ゾダイ 】

「これにて、天下はレイ将軍のもの、ということになりましょうか……?」


 そう問うたのは、三貴さんき教の尼僧、〈大萬天ダイマンテン・ゾダイ〉である。


【 ヤクモ 】

「さて……それはどうかな」


 と、ヤクモは白い髭を撫でる。


【 ヤクモ 】

「今なお、ライレツシンの三賊は健在……それ以外の勢力も、そう簡単にグンムになびくとは思えぬ」


【 ゾダイ 】

「では、これより先は……?」


【 ヤクモ 】

「生き残りをかけた、群雄割拠ぐんゆうかっきょの世、ということになろう」


【 ヤクモ 】

「その隙をついて、異国の軍が侵入してくる可能性もあるだろうな――たとえば、北の深牙しんが


【 ゾダイ 】

「……ラク宰相の計画については、耳に入ってきております」


 先日急死した、宰相〈ラク・レツドウ〉。

 彼は、三貴教と協力し、北の異民族である深牙の兵を引き入れて、己の力としようとしていた――という。


【 ゾダイ 】

「拙僧は――存じませんでした。ひとくちに三貴の教えといっても、さまざまな派閥がございますので……」


【 ヤクモ 】

「ふむ。御坊ごぼうが言うのなら、そうなのだろう」


【 ゾダイ 】

「……信じて、いただけるのですか?」


【 ヤクモ 】

「この歳まで生き残れば、少しは人を見る目も養われるものだ。御坊の言葉は、信じるに足る――と、わかる」


【 ゾダイ 】

「…………っ、かたじけなく……」


【 ヤクモ 】

「…………」


【 ヤクモ 】

(まあ、わかりはしないがな)


 この歳になってわかったのは、どれだけの人間に会い、言葉を交わそうとも、人間を理解することなどできはしない――と、いう事実だ。

 実際のところ、ゾダイによるレツドウの計画への関与は五分五分……むしろ黒寄りだと見ている。


【 ヤクモ 】

(とはいえ、軍内にも三貴の信者は増えつつある……うかつに手を出すわけにもいかぬ)


 やっかいな話だが、切れ味のいい剣同様、役に立つ人間は、とかく危険でもあると相場が決まっている。


【 ヤクモ 】

(――今のところは、泳がせておくのがよかろうよ)


【 ヤクモ 】

「これからも、よろしくお願いする――ゾダイ殿」


 心中の思惑は露ほどにも見せず、うやうやしく一礼してみせるあたりは、まさしく年の功であった。


【 ゾダイ 】

「ははっ……」




 一方、〈四寇しこう〉と称される大勢力以外では――


【 若き峰南ほうなん巡察使 】

「今こそ、動くときではあるまいかっ……!」


【 部下 】

「いいえわか、まだまだ、時期尚早というもの――」


【 他の部下 】

「さよう、無謀はなりませんぞ――」


【 別の部下 】

「すべては、われらにお任せあれ――」


【 若き峰南巡察使 】

「うっ……うぐぐっ……!」




【 可憐なる峰西ほうせいの守護者 】

「……はぁ……とても、とても困りました……」


【 可憐なる峰西の守護者 】

「動けるものならば、すぐにでも動きたいけれど――思うに任せず……」


【 可憐なる峰西の守護者 】

「ああ、陛下、どうかご武運を――」




【 山南さんなんの覇者 】

「ふん……あんな腐り切った朝廷がどうなろうと、オレの知ったことかッ!」


【 山南の覇者 】

「せいぜい、ケチな権力争いに明け暮れているがいいさ――オレは、オレがなすべきことをする……!」


【 山南の覇者 】

「父祖の地を、異郷の蛮族どもに踏み荒らさせるものかよッ……!」




 ――各地の群雄が、それぞれの思惑を抱く中……

 今なお、七年前の〈五妖ごようの乱〉の戦禍が残る峰東ほうとうの地では――


【 名もなき民 】

「……ほしいままに天子を廃し、天下を我が物にしようと図るとはっ……」


【 名もなき民 】

「――レイ賊、許すまじ!」


【 名もなき民 】

「……今こそ、天に替わって国を正し、新たなる世を築かねばなりませんっ!!」


【 名もなき民たち 】

『おおおおっ……!!』


 新時代の息吹きが、確実に生じつつあるのだった――

ブックマーク、ご感想、ご評価いただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ