◆◆◆◆ 10-4 群雄たち ◆◆◆◆
――嶺・グンムが帝都を制圧し、天子の廃立を実行した。
*廃立……天子を廃し、新たに立てるの意。
この報は、たちまち宙全土に広まり、各地の勢力の思惑が交錯することになる。
西方においては――
【 ヒエン 】
「フン……まぁ~た檄文かよ。嶺・グンム……偉そうな野郎だぜ」
鼻で笑ったこの優男は、〈西寇〉こと、山北地方の賊王〈進・ヒエン〉である。
若くして大盗賊団を率いており、その数、幾十万とも称されている。
【 ヒエンの右腕 】
「――とはいえ、以前のものとは重みが違いますな。今回は、まがりなりにも勅命ですので」
【 ヒエン 】
「新しい天子サマのご命令で、前の天子サマを討てってか? ま、報酬次第じゃあ考えてやらないこともないが――」
【 ヒエンの弟分 】
「兄貴っ、おいらに任せてくれれば、皆殺しにしてくるぜっ! 一人残らず、根絶やしだっ!」
【 ヒエン 】
「ククッ、そいつは簡単でいいけどなぁ」
【 ヒエンの参謀 】
「とはいえ、うかつに動くのは得策ではありますまい」
【 ヒエン 】
「ま、せいぜい色よい返事を送っておいてくれ。俺様は今、忙しいからなぁ」
【 ヒエンの右腕 】
「また、あの未亡人への文ですか」
【 ヒエン 】
「ああ、今度こそあの女が身も心もメロメロになるような、グッとくる恋文を書いてみせるからよぉ。そっちはそっちで、適当に頼むぜ――」
と、そそくさと奥へと引っ込んでしまう。
【 ヒエンの右腕 】
「……やれやれだな。お好きなことだ」
【 ヒエンの参謀 】
「英雄、色を好む――というところですか。ほどほどにしてほしいものですが……まあ、人殺しに耽るよりはマシでしょう」
【 ヒエンの右腕 】
「……ちと前には、一日に何人殺せるか競ったりしていたからな」
【 ヒエンの弟分 】
「あれは楽しかったなぁ~! またやらせてくれねえかな~? 女の首なら、すぐ取ってくるのに~!」
【 ヒエンの右腕 】
「……女の首、か。廃帝の首――獲りに行く価値はあるか?」
【 ヒエンの参謀 】
「さて……他の陣営の動き次第、ではありましょうな」
そして、北方においては……
【 ショウキ 】
「嶺・グンム……前に見かけたときは昼行灯のたぐいだろうと思ったが、ずいぶん出世したもんだねぇ」
〈北寇〉こと、〈烈・ショウキ〉。
精鋭数十万を率いて、峰北の地を支配している女賊王である。
【 ショウキの軍師 】
「兵を率いて、廃帝を討てとの由……さて、どうなさる?」
【 ショウキ 】
「さぁて、どうしたもんかねぇ。驃騎将軍の実力、確かめに行ってみてもいいが……」
【 ショウキの護衛 】
「いいッスね! ポッと出のチンピラにデカい顔させるのはムカつくッス!」
【 ショウキの妹分 】
「まことに――偉そうな輩は、一人残らず叩き殺すのがよろしいかと――(ポロロン)」
【 ショウキの先鋒 】
「…………うむ。殺そう」
【 ショウキ 】
「やれやれ、血の気の多い連中ばっかりだねぇ。ま、今のところは北の蛮族どもも大人しいし……」
【 ショウキ 】
「――たまには、南の空気を吸いに行くのも悪くないかもねぇ!」
【 四人 】
『我ら〈烈家四虎将〉、お供つかまつりましょう――』
席を立ったショウキに、四人の側近が一礼した――
その頃、東方においては……
【 ジンマ 】
「…………」
〈東寇〉――すなわち、交龍の雄・〈雷・ジンマ〉が、荒波押し寄せる岸壁に立っている。
数十万の兵と数千隻の大艦隊を率いる大海賊たる彼だが、海を前にたたずむ姿は、どこか物寂しげであった。
【 ???? 】
『――いかがした? あいかわらず、物憂い顔をしておるのう――』
海から声が響く。
【 ジンマ 】
「――世は、いよいよもって、乱れるばかりだ」
溜め息をこぼすジンマの手には、送られてきた嶺驃騎将軍からの書状がある。
【 ジンマ 】
「仁もなく、義もなく……欲望にまみれた者たちが、ほしいままに力を振るい、弱者を虐げている――どうして、嘆かずにいられようか」
【 海からの声 】
『――やれやれ、またそれか。そんなに気に食わぬなら、さっさとこんなしみったれた国は打ち捨てて、新天地に乗り出すがよい。わらわとともに、海の果てへと旅立とうではないか――』
【 ジンマ 】
「それは……できぬ。俺には、兄者に託された志がある。天下を泰平にし、人民を救う――という大志が」
【 海からの声 】
『――いやはや、よくよく不自由な男よな』
【 ジンマ 】
「……自分でも、わかっている。それでも、俺は――」
……ゴゴゴゴ……
海面に渦が巻き起こり、巨大な影が浮かび上がる。
【 海からの声 】
『まあしかし、それでこそ――』
バシャアァッ!
【 巨大な龍 】
『――わらわの――番に、ふさわしいというもの――』
真っ青な鱗に包まれた巨龍が姿を現わし、ジンマを見つめている。
【 ジンマ 】
「手を貸してくれるか、〈東波龍王〉――」
【 東波龍王 】
『言うに及ぼうか――思うままに頼るがよい、われら〈龍宮〉の力を――』
巨大な青龍が咆哮を放つと、次々と海中より、鱗を持つ半人半魚の兵や龍の眷属が姿を現わす。
【 ジンマ 】
「助太刀、いたみいる――されば」
【 ジンマ 】
「いざ――西へ!」
ジンマの号令に、海より来たる軍勢が一斉に喚声をあげた――
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