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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
412/421

◆◆◆◆ 10-4 群雄たち ◆◆◆◆

 ――レイ・グンムが帝都を制圧し、天子の廃立はいりつを実行した。

 *廃立……天子を廃し、新たに立てるの意。


 この報は、たちまちちゅう全土に広まり、各地の勢力の思惑が交錯することになる。




 西方においては――


【 ヒエン 】

「フン……まぁ~た檄文げきぶんかよ。レイ・グンム……偉そうな野郎だぜ」


 鼻で笑ったこの優男は、〈西寇せいこう〉こと、山北さんほく地方の賊王〈シン・ヒエン〉である。

 若くして大盗賊団を率いており、その数、幾十万とも称されている。


【 ヒエンの右腕 】

「――とはいえ、以前のものとは重みが違いますな。今回は、まがりなりにも勅命ちょくめいですので」


【 ヒエン 】

「新しい天子サマのご命令で、前の天子サマを討てってか? ま、報酬次第じゃあ考えてやらないこともないが――」


【 ヒエンの弟分 】

「兄貴っ、おいらに任せてくれれば、皆殺しにしてくるぜっ! 一人残らず、根絶やしだっ!」


【 ヒエン 】

「ククッ、そいつは簡単でいいけどなぁ」


【 ヒエンの参謀 】

「とはいえ、うかつに動くのは得策ではありますまい」


【 ヒエン 】

「ま、せいぜい色よい返事を送っておいてくれ。俺様は今、忙しいからなぁ」


【 ヒエンの右腕 】

「また、あの未亡人へのふみですか」


【 ヒエン 】

「ああ、今度こそあの女が身も心もメロメロになるような、グッとくる恋文こいぶみを書いてみせるからよぉ。そっちはそっちで、適当に頼むぜ――」


 と、そそくさと奥へと引っ込んでしまう。


【 ヒエンの右腕 】

「……やれやれだな。お好きなことだ」


【 ヒエンの参謀 】

「英雄、色を好む――というところですか。ほどほどにしてほしいものですが……まあ、人殺しにふけるよりはマシでしょう」


【 ヒエンの右腕 】

「……ちと前には、一日に何人殺せるか競ったりしていたからな」


【 ヒエンの弟分 】

「あれは楽しかったなぁ~! またやらせてくれねえかな~? 女の首なら、すぐ取ってくるのに~!」


【 ヒエンの右腕 】

「……女の首、か。廃帝の首――獲りに行く価値はあるか?」


【 ヒエンの参謀 】

「さて……他の陣営の動き次第、ではありましょうな」




 そして、北方においては……


【 ショウキ 】

レイ・グンム……前に見かけたときは昼行灯ひるあんどんのたぐいだろうと思ったが、ずいぶん出世したもんだねぇ」


 〈北寇ほっこう〉こと、〈レツ・ショウキ〉。

 精鋭数十万を率いて、峰北ほうほくの地を支配している女賊王である。


【 ショウキの軍師 】

「兵を率いて、廃帝を討てとのよし……さて、どうなさる?」


【 ショウキ 】

「さぁて、どうしたもんかねぇ。驃騎将軍ひょうきしょうぐんの実力、確かめに行ってみてもいいが……」


【 ショウキの護衛 】

「いいッスね! ポッと出のチンピラにデカい顔させるのはムカつくッス!」


【 ショウキの妹分 】

「まことに――偉そうな輩は、一人残らず叩き殺すのがよろしいかと――(ポロロン)」


【 ショウキの先鋒 】

「…………うむ。殺そう」


【 ショウキ 】

「やれやれ、血の気の多い連中ばっかりだねぇ。ま、今のところは北の蛮族どもも大人しいし……」


【 ショウキ 】

「――たまには、南の空気を吸いに行くのも悪くないかもねぇ!」


【 四人 】

『我ら〈烈家四虎将れっかよんこしょう〉、お供つかまつりましょう――』


 席を立ったショウキに、四人の側近が一礼した――




 その頃、東方においては……


【 ジンマ 】

「…………」


 〈東寇とうこう〉――すなわち、交龍こうりゅうの雄・〈ライ・ジンマ〉が、荒波押し寄せる岸壁に立っている。

 数十万の兵と数千隻の大艦隊を率いる大海賊たる彼だが、海を前にたたずむ姿は、どこか物寂しげであった。


【 ???? 】

『――いかがした? あいかわらず、物憂ものうい顔をしておるのう――』


 海から声が響く。


【 ジンマ 】

「――世は、いよいよもって、乱れるばかりだ」


 溜め息をこぼすジンマの手には、送られてきたレイ驃騎将軍からの書状がある。


【 ジンマ 】

「仁もなく、義もなく……欲望にまみれた者たちが、ほしいままに力を振るい、弱者をしいたげている――どうして、嘆かずにいられようか」


【 海からの声 】

『――やれやれ、またそれか。そんなに気に食わぬなら、さっさとこんなしみったれた国は打ち捨てて、新天地に乗り出すがよい。わらわとともに、海の果てへと旅立とうではないか――』


【 ジンマ 】

「それは……できぬ。俺には、兄者に託されたこころざしがある。天下を泰平にし、人民を救う――という大志が」


【 海からの声 】

『――いやはや、よくよく不自由な男よな』


【 ジンマ 】

「……自分でも、わかっている。それでも、俺は――」


 ……ゴゴゴゴ……


 海面に渦が巻き起こり、巨大な影が浮かび上がる。


【 海からの声 】

『まあしかし、それでこそ――』


 バシャアァッ!


【 巨大な龍 】

『――わらわの――つがいに、ふさわしいというもの――』


 真っ青な鱗に包まれた巨龍が姿を現わし、ジンマを見つめている。


【 ジンマ 】

「手を貸してくれるか、〈東波龍王とうはりゅうおう〉――」


【 東波龍王 】

『言うに及ぼうか――思うままに頼るがよい、われら〈龍宮りゅうぐう〉の力を――』


 巨大な青龍が咆哮を放つと、次々と海中より、鱗を持つ半人半魚の兵や龍の眷属が姿を現わす。


【 ジンマ 】

「助太刀、いたみいる――されば」


【 ジンマ 】

「いざ――西へ!」


 ジンマの号令に、海より来たる軍勢が一斉に喚声かんせいをあげた――

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