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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
410/421

◆◆◆◆ 10-2 嶺公の思惑 ◆◆◆◆

【 シュレイ 】

「――将軍ご自身は、どうなさるおつもりですか?」


【 グンム 】

「官職か? 俺はどうでもいい……ってわけにもいくまいな」


【 グンム 】

「まあ、驃騎将軍ひょうきしょうぐんあたりでいいんじゃないか?」


 驃騎将軍といえば、かつては重職の将軍位だったが、現在では名誉職のようなものになっている。


【 シュレイ 】

「宰相の座を求めたりはしないと?」


【 グンム 】

「宰相なんて柄じゃあないさ。位人臣くらいじんしんを極めるなんて、ろくなことはないだろう?」


【 シュレイ 】

「それはそうですが……」


【 シュレイ 】

「本人が望もうが望むまいが、人はあるべき地位に押し上げられるものではあります」


【 グンム 】

「……まあ、おいおい考えよう」




【 グンム 】

「論功行賞も大事だが、その後はどうする?」


【 シュレイ 】

「左様ですな……」


【 シュレイ 】

「……大志を抱き、天下を統一すべく各地の勢力と火花を散らす……これもまた一つの道です」


【 グンム 】

「ふむ」


【 シュレイ 】

「あるいは、己の保身だけを考え、帝都周辺の維持だけに全力を尽くす……それもまた、一手ではありましょう」


【 シュレイ 】

「――しかしながら、私であれば、どちらの道も選びません」


【 グンム 】

「では、どうする?」


【 シュレイ 】

「天下統一などは考えず、あくまで最大勢力として覇を唱え、各地の群雄に睨みを利かせる存在となることこそ、良策かと存じます。すなわち、覇王の道ということになりますが」


【 グンム 】

「ほう……たしかに、もっとも現実的な案だな。俺にはぴったりのようだ」


【 シュレイ 】

「とはいえ、すべては閣下のお考え次第ですので」


【 グンム 】

「――なんて言いながら、もう策のひとつやふたつは考えてあるんだろう?」


【 シュレイ 】

「は、愚考ではありますが――」


 シュレイが机上に置かれた地図を指す。


【 シュレイ 】

「ご承知のとおり、ここに廃帝が残っております」


 シュレイが指したのは、帝都の北西にある宝玲山ほうれいざん――すなわち、廃帝ヨスガの本拠地である。


【 グンム 】

「ふむ――捨て置くわけにはいくまいな」


【 シュレイ 】

「さりとて、我らが単独で叩くことはありません。……各地の勢力にげきを飛ばし、廃帝征伐を呼びかけます」


【 グンム 】

「ほう、それに応じるか否かで、敵味方を峻別するというわけだな」


【 シュレイ 】

「左様です。逆らう者がいれば、逆賊の汚名を着せ、討伐の大義名分を得ることもできましょう」


【 グンム 】

「なるほどな。廃帝退治はあくまでついで……というところか」


【 シュレイ 】

「仰る通り……ですが、今度こそ、きっちりと片付けるべきでしょう」


【 グンム 】

「ほう、そうか。老師なら、生かしておけば使い道もある、などと考えそうなところだが」


【 シュレイ 】

「確かに、使いようはあります。自分たちに対抗する存在を残すことで、官民が弛緩する可能性は減りますので」


 いかなる組織も、一強状態になってしまうと、とかく緊張が薄れて自壊が始まるものだ。


【 シュレイ 】

「――ですがそれ以上に、あの天子、いえ廃帝ヨスガは、放っておくのは危険だと考えます」


【 グンム 】

「ふむ……」


【 シュレイ 】

「――念を押すまでもありませんが、これは決して、私情を挟んだ判断ではありません」


【 グンム 】

「……で、あろうな」


【 グンム 】

「まあ、檄文を飛ばすくらいはたやすいことだ。もう草稿したがきはまとめてあるんだろう?」


【 シュレイ 】

「もとよりです」


 と、懐から出した書状を差し出す。


【 グンム 】

「どれどれ……ふむ、ま、こんなところだろうな」


 その内容は、ありていに言えば。


 ――逆徒となった廃帝を討つべし、

 しからずんば同類とみなす――


 と、いったところである。


【 グンム 】

「〈東寇とうこう〉、ライなにがしあたりは、またぞろ反発してきそうだが」


【 シュレイ 】

「その可能性は高いでしょうが……とはいえ多くの者は、我らに従うか、中立を決め込むことでしょう」


【 グンム 】

「そうであることを願いたいがな」


【 シュレイ 】

「お許しを頂けるなら、さっそく手を打ちますが――」


【 グンム 】

「ああ、任せよう。やはり老師がいてくれると、助かるな」


【 シュレイ 】

「いえ――これも、国家のためですので」


【 グンム 】

「…………」


 一礼するシュレイを、グンムは油断のない目で見つめていた……

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