表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
409/421

◆◆◆◆ 10-1 新帝登極 ◆◆◆◆

■第一部終幕:

天に二日にじつなく、されど地に二帝にてい並び立ち、人心大いに惑いて、未曽有みぞうの大乱世ここに幕を開けること




 大宙暦3133年、仲秋の月(8月)……

 ちゅう王朝の帝都、万寿世春ばんじゅせいしゅん――

 宮城きゅうじょう金鳳殿きんほうでんに、文武百官が集まっていた。

 玉座には、つい先日までとは別の主が腰を下ろしている。

 すなわち、新たなる皇帝、〈エン・トウマ〉である。


【 トウマ 】

「……う、うぅ……」


 慣れない格好をさせられ、当惑を隠せずにいるトウマの前で、集結した官僚や武将たちが一礼する。


【 グンム 】

「――天子さま、万歳!」


 征南将軍〈レイ・グンム〉に続いて、文武の百官も声をあげる。


【 文武百官 】

「万歳……!」


【 文武百官 】

「天子さま、万歳っ……!」


 万歳の声が鳴り響く。


【 トウマ 】

「…………っ」


 新米天子は、小刻みに震えながら、響き渡る万歳を聞いていた……




 その後、天をまつる儀式もとどこおりなく終わり、ここに新天子が登極とうきょくした。

 *登極……即位の意。


 すなわち、エン・トウマが第207代の宙帝国皇帝となったのである。

 ――208代でないのは、先の天子である〈エン・ヨスガ〉が廃位はいいさせられ、その地位を剥奪されたからに他ならない。

 こののち、史書においてはヨスガは廃帝と記され、いち庶人として扱われることになるであろう。

 ――ただし、トウマが最終的な勝利者となり、歴史を記す側に立った場合に限ってのことであるが。




【 グンム 】

「やれやれ……だな。ようやく一区切りというわけだ」


 接収した屋敷の執務室で、レイ・グンムは息をついていた。


【 シュレイ 】

「戦場での采配とは、別の気苦労がありましょうな」


 と、瓶を傾けてグンムの杯を満たすのは、〈神算朧師しんざんぼうし〉こと〈ガク・シュレイ〉である。


【 グンム 】

「ああ、まったくだ。老師せんせいがいてくれて実に助かった」


 と、グンムは杯を空け、シュレイに返杯する。


【 シュレイ 】

「蛇の道は蛇、というものですので」


 グンムはシュレイの謹慎を解き、さまざまな仕事をさせている。

 即位に当たっての儀礼の準備など、グンムの武骨な配下たちでは手に余るようなことも、シュレイはそつなくこなしてみせた。


【 グンム 】

「国母さまとの折衝せっしょうも、うまくやってくれたな」


【 シュレイ 】

「そうたいしたことでは……あちらも、もとよりその気だったようですし」


 グンムがいかに軍事力を擁していても、軽々しく天子を廃したり立てたりすることはできない。

 すべては、皇太后である〈コウ・ランハ〉の協力あってのことであった。

 グンムの要請に応じ、ランハはヨスガを廃する令旨りょうじを出し、さらにはトウマを己の養子として、即位にお墨付きを与えたのである。


【 グンム 】

「ずいぶんと気前よく手を貸してくれたものだが……見返りは高くつきそうだな」


【 シュレイ 】

「そうなりましょうが、今は、静観するべきかと。藪をつついて蛇を出すことはありません」


【 グンム 】

「そうするとしよう。協力といえば、官僚たちもまるで刃向かう様子も見せず、唯唯諾諾いいだくだくと従ってくれたな」


【 シュレイ 】

「彼らにとっては、誰が君主であっても、どうでもいいことですので。自分たちに利を与えてくれるなら、それこそ、蛮夷ばんいの王にすら喜んで膝を屈しましょう」


【 グンム 】

「――さもあろう」


【 グンム 】

「……さて、ひとまず賊軍の汚名が晴れて肩の荷が下りたが、これからどうする?」


【 シュレイ 】

「むろん、まずは論功行賞ろんこうこうしょうでしょう。功ある者には賞を与え、罪ある者は罰さねばなりません」


【 グンム 】

「うむ、手間ではあるが……恩と威を示す、というやつだな」


【 シュレイ 】

「左様です。あまり気前がよすぎてもいけませんが……そういったことは、閣下の得意とするところでは?」


【 グンム 】

「まぁ、苦手じゃないが……一軍を仕切るのと、政府を仕切るのとじゃあ、まるで話が違うからな」


 そう言って、グンムはつい苦笑する。

 故郷を離れてほんの数ヶ月で、あまりにも状況が激変してしまった。


【 グンム 】

(だが、ここまできたら……)


 もはや、勝負を降りることはできない。

 それはすなわち、破滅を待つだけだからだ。


【 グンム 】

(行けるところまで、行くしかない――な)


 その先に、なにがあるのか……それはいまだに図りがたいことだった。

これより第一部の終幕です!

よろしくお付き合いくださいませ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ