◆◆◆◆ 9-106 鶴風の戦い(55) ◆◆◆◆
【 カズサ 】
「――――はっ!?」
閃・カズサは、カッ! と目を見開き、意識を取り戻した。
【 ヨスガ 】
「む……目が覚めたか」
【 カズサ 】
「……っ! へ、陛下っ――うぐうっ!」
そばにいたヨスガに気づき、身を起こそうとして、激痛に呻き声をこぼす。
【 ミズキ 】
「まだ動ける傷ではありません。そのままじっとしていてください」
ミズキが気遣う。
先ほど、自らの斬撃を跳ね返されて重傷を負ったカズサ。
すでに止血が施され、傷は処置されているが、完全にふさがったわけではないのだ。
【 カズサ 】
「……っ、さ、先ほどの、化け物、はっ……?」
【 ヨスガ 】
「案ずるな。……もう、終わったところだ」
その視線の先には、黒焦げになった首のない屍がある。
【 カズサ 】
「そ、そう……ですかっ……なにやら……悲鳴のような、ものが……聞こえた、のでっ……」
【 ミズキ 】
「悲鳴ですか……?」
首を落とされた魔人タシギは、声を発することもなく斃れたので、断末魔も放たなかったのだが。
【 ヨスガ 】
「冥府の入り口にでも行ってきたのか? ……ともあれ、無事でなによりだ」
【 カズサ 】
「い、いえっ……お役に、立てずっ……ふがいない限り、ですっ……」
【 ヨスガ 】
「卑下することはない。そなたには、そなたにしかできぬ役回りがあるのだからな。今は、休め」
【 カズサ 】
「……っ、は……い……」
カズサは目を閉じ、再び意識を手離していった。
【 ヨスガ 】
「――しかし、このままゆっくりしてはいられまいな」
【 ミズキ 】
「はい、かなりの騒ぎになりましたので、ここに残っていては危険かと」
【 ヨスガ 】
「そうだな……追撃の兵のみならず、野盗のたぐいが寄ってくる恐れもある」
【 ギョクレン 】
「……ぜぇ……ぜぇっ……」
ヨスガとミズキが話しているところへ、ギョクレンが杖によりかかるようにしてやってきた。
【 ヨスガ 】
「む……副軍師補佐もご苦労だったな」
【 ギョクレン 】
「大首領っ……お、師父は……いずこにっ……?」
【 ヨスガ 】
「……そういえばセイレンめ、とうとう最後まで出てこなかったな」
【 ミズキ 】
「ええ、てっきり、いいところで出てきて、おいしいところをかっさらうのかと思っていましたが……」
【 ギョクレン 】
「むむ……さすがは師父……みずから地の底に挑むとはっ……!」
事情を聞かされ、ギョクレンは唸り声を漏らす。
【 ヨスガ 】
「わりと嫌々だった気がするがな……」
【 ミズキ 】
「どこにいるか、わからないのですか?」
【 ギョクレン 】
「や、やってみましょうっ……む、むむ……む~んっ……むむむ……」
目をつむり、なにやら念じている。
【 ギョクレン 】
「むむむ……む~ん……これは……気配は感じとれるのですが……どんどん遠ざかっていってしまっているような……?」
【 ギョクレン 】
「それに、師父以外にも二人……一人は副頭目殿のようですが……あと一人はいったい……?」
【 ヨスガ 】
「……まあ、そのうち合流できるであろう。あやつが生きているならば、愚妹もきっと無事だろうさ」
【 エキセン 】
「ク……クク……彼女は……副頭目は、ツキがあるからな……」
【 ミズキ 】
「運は運でも、悪運のような気もしますが……」
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