◆◆◆◆ 9-93 鶴風の戦い(42) ◆◆◆◆
ホノカナたちが奇妙な体験をしていた頃、地上においては――
【 ミズキ 】
「ヨスガさま――よろしかったのですかっ?」
【 ヨスガ 】
「なにがだっ?」
併走するミズキの問いに、聞き返す。
【 ミズキ 】
「ホノカナ……いえ、副頭目と別々の道を行っても、構わなかったのですかっ?」
【 ヨスガ 】
「ふん、前にも同じようなことを聞いたな……転ばぬ先の杖というやつだっ!」
【 ヨスガ 】
「万が一! そう、万が一、我になにかあったとしてもっ……」
【 ヨスガ 】
「あやつが、我の後を継ぐことになろうよ! まあ、その気になるかは、あやつ次第だがなっ!」
敗走において、組織の長と二番手が共に逃げるのは愚策である。
どちらかが脱出に成功すれば立て直しもきくが、共倒れになってしまえば、すべてはおしまいなのだから。
【 ミズキ 】
「ご心配なく、万が一はありえません。この私が――」
【 ミズキ 】
「――おそばにある、かぎりはっ!」
――ヒュゥンッ!
【 ヨスガ 】
「……うおっ!?」
耳元にまで迫った矢が、ミズキの空刀で寸断される。
【 宝玲山の将 】
「もう、矢が届く距離までっ……!」
【 宝玲山の将 】
「大首領を守れっ!」
――ヒュンッ! ヒュウゥンッ!
【 ミズキ 】
「くっ……! 精度が、前の兵とは違いますっ……!」
空刀で迎撃するミズキだったが、それでもすべてを撃ち落とせるものではない。
【 カガノ 】
「ええ――あれは名高き飛鷹の弓騎兵……私も、あれくらい、腕を上げたいものですが……」
裂空二娘カガノが呟く。
【 エキセン 】
「――クク、今は、うらやんでいる場合ではあるまい……!」
【 カガノ 】
「まあ――ごもっともです……はぁああッ!」
ギリギリッ……ドヒュウゥンッ!
気合とともに放たれた、空を裂くすさまじい一矢が、追っ手目がけて放たれる――
――ドボォオッ!
【 飛鷹の兵 】
「――ぐあっ!?」
【 飛鷹の兵 】
「ぎゃああっ……!?」
前方から飛来した矢が、兵の胸板を貫き、そのまま後方の兵をも撃ち落とす……!
【 ウツセ 】
「なんだっ……この強弓はっ!?」
ウツセは驚嘆の声を漏らす。
威力だけならば、彼らの盟主たる翠・ヤクモにも匹敵するであろう。
【 タイザン 】
「ええ、なかなかのものですっ――まっさきに、片付けなくてはなりますまいっ!」
三羽のタイザンが弓を構え、狙いをつける。
【 タイザン 】
「――――っ!」
――ヒュウゥッ!
正確無比の矢が、空を切って飛んでいく――
――ドスッ!
【 カガノ 】
「――おっと……」
己を狙った矢を、間一髪、カガノは弓の握りの部分で受け止めていた。
【 ミズキ 】
「おお、さすがっ……!」
【 カガノ 】
「いえ――わりと偶然です」
【 ミズキ 】
「…………」
【 カガノ 】
「……まずいですね、弓の達人が混じっているようで……」
【 ヨスガ 】
「むうっ……」
夜のとばりが降りる……というには、まだ早い。
【 ミズキ 】
「ヨスガさま――」
【 ヨスガ 】
「……ふん、これしきのことでっ! エキセン、煙幕だっ!」
【 エキセン 】
「はっ……」
――ボォッ!
エキセンの投げた筒から、大量の煙が巻き上がり、追っ手の視界をさえぎる――
【 タイザン 】
「むうっ……なりふり構わぬやり口ですね!」
【 ウツセ 】
「それだけ、向こうも必死なのだろう――構わん、撃ちまくれっ!」
【 飛鷹の兵たち 】
『おおおっ……!!』
ヒュンッ! ドヒュゥンッ!
無数の矢が、煙の向こうへと撃ち込まれていく。
――ドシュッ! ドスッ!
【 宝玲山の兵 】
「ぐぁっ……!」
【 宝玲山の兵 】
「がっ……あっ!」
ただでさえ少ない兵が、さらに射撃の餌食となって脱落していく……
【 ミズキ 】
「くっ……ヨスガさまっ……!」
【 ヨスガ 】
「――――っ」
ほどなく煙幕も尽きて、獲物の姿が露わになる。
【 ウツセ 】
「よしっ……見えたっ! 一気に片をつけよっ!」
【 飛鷹の兵たち 】
『おおおおっ!』
ウツセの激励で、騎兵たちが加速せんとしたとき……
【 飛鷹の兵 】
「将軍! 背後から官軍が――」
【 ウツセ 】
「む……もう、新しい追っ手が?」
――ヒュンッ! ドスッ!
【 飛鷹の兵 】
「――ぐあっ!?」
【 飛鷹の兵 】
「うぐうっ……!?」
背後から飛んできた矢に貫かれ、兵が落馬していく……!
【 ウツセ 】
「なっ……!?」
辰・ウツセは、愕然となった。
ブックマーク、ご感想、ご評価いただけると嬉しいです!




