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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
393/421

◆◆◆◆ 9-93 鶴風の戦い(42) ◆◆◆◆

 ホノカナたちが奇妙な体験をしていた頃、地上においては――


【 ミズキ 】

「ヨスガさま――よろしかったのですかっ?」


【 ヨスガ 】

「なにがだっ?」


 併走するミズキの問いに、聞き返す。


【 ミズキ 】

「ホノカナ……いえ、副頭目と別々の道を行っても、構わなかったのですかっ?」


【 ヨスガ 】

「ふん、前にも同じようなことを聞いたな……転ばぬ先の杖というやつだっ!」


【 ヨスガ 】

「万が一! そう、万が一、我になにかあったとしてもっ……」


【 ヨスガ 】

「あやつが、我の後を継ぐことになろうよ! まあ、その気になるかは、あやつ次第だがなっ!」


 敗走において、組織の長と二番手が共に逃げるのは愚策である。

 どちらかが脱出に成功すれば立て直しもきくが、共倒れになってしまえば、すべてはおしまいなのだから。


【 ミズキ 】

「ご心配なく、万が一はありえません。この私が――」


【 ミズキ 】

「――おそばにある、かぎりはっ!」


 ――ヒュゥンッ!


【 ヨスガ 】

「……うおっ!?」


 耳元にまで迫った矢が、ミズキの空刀そらがたなで寸断される。


【 宝玲山ほうれいざんの将 】

「もう、矢が届く距離までっ……!」


【 宝玲山の将 】

大首領おやぶんを守れっ!」


 ――ヒュンッ! ヒュウゥンッ!


【 ミズキ 】

「くっ……! 精度が、前の兵とは違いますっ……!」


 空刀で迎撃するミズキだったが、それでもすべてを撃ち落とせるものではない。


【 カガノ 】

「ええ――あれは名高き飛鷹ひようの弓騎兵……私も、あれくらい、腕を上げたいものですが……」


 裂空二娘れっくうじじょうカガノが呟く。


【 エキセン 】

「――クク、今は、うらやんでいる場合ではあるまい……!」


【 カガノ 】

「まあ――ごもっともです……はぁああッ!」


 ギリギリッ……ドヒュウゥンッ!


 気合とともに放たれた、空を裂くすさまじい一矢が、追っ手目がけて放たれる――




 ――ドボォオッ!


【 飛鷹の兵 】

「――ぐあっ!?」


【 飛鷹の兵 】

「ぎゃああっ……!?」


 前方から飛来した矢が、兵の胸板を貫き、そのまま後方の兵をも撃ち落とす……!


【 ウツセ 】

「なんだっ……この強弓ごうきゅうはっ!?」


 ウツセは驚嘆の声を漏らす。

 威力だけならば、彼らの盟主たるスイ・ヤクモにも匹敵するであろう。


【 タイザン 】

「ええ、なかなかのものですっ――まっさきに、片付けなくてはなりますまいっ!」


 三羽みつばのタイザンが弓を構え、狙いをつける。


【 タイザン 】

「――――っ!」


 ――ヒュウゥッ!


 正確無比の矢が、空を切って飛んでいく――




 ――ドスッ!


【 カガノ 】

「――おっと……」


 己を狙った矢を、間一髪、カガノは弓の握りの部分で受け止めていた。


【 ミズキ 】

「おお、さすがっ……!」


【 カガノ 】

「いえ――わりと偶然です」


【 ミズキ 】

「…………」


【 カガノ 】

「……まずいですね、弓の達人が混じっているようで……」


【 ヨスガ 】

「むうっ……」


 夜のとばりが降りる……というには、まだ早い。


【 ミズキ 】

「ヨスガさま――」


【 ヨスガ 】

「……ふん、これしきのことでっ! エキセン、煙幕だっ!」


【 エキセン 】

「はっ……」


 ――ボォッ!


 エキセンの投げた筒から、大量の煙が巻き上がり、追っ手の視界をさえぎる――




【 タイザン 】

「むうっ……なりふり構わぬやり口ですね!」


【 ウツセ 】

「それだけ、向こうも必死なのだろう――構わん、撃ちまくれっ!」


【 飛鷹の兵たち 】

『おおおっ……!!』


 ヒュンッ! ドヒュゥンッ!


 無数の矢が、煙の向こうへと撃ち込まれていく。




 ――ドシュッ! ドスッ!


【 宝玲山の兵 】

「ぐぁっ……!」


【 宝玲山の兵 】

「がっ……あっ!」


 ただでさえ少ない兵が、さらに射撃の餌食となって脱落していく……


【 ミズキ 】

「くっ……ヨスガさまっ……!」


【 ヨスガ 】

「――――っ」




 ほどなく煙幕も尽きて、獲物の姿が露わになる。


【 ウツセ 】

「よしっ……見えたっ! 一気に片をつけよっ!」


【 飛鷹の兵たち 】

『おおおおっ!』


 ウツセの激励で、騎兵たちが加速せんとしたとき……


【 飛鷹の兵 】

「将軍! 背後から官軍が――」


【 ウツセ 】

「む……もう、新しい追っ手が?」


 ――ヒュンッ! ドスッ!


【 飛鷹の兵 】

「――ぐあっ!?」


【 飛鷹の兵 】

「うぐうっ……!?」


 背後から飛んできた矢に貫かれ、兵が落馬していく……!


【 ウツセ 】

「なっ……!?」


 シン・ウツセは、愕然となった。

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