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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
392/421

◆◆◆◆ 9-92 鶴風の戦い(41) ◆◆◆◆

 突然、地面から現れた存在……それはどう見ても、


【 ホノカナ 】

「も……モグラ……!?」


【 巨大なモグラ 】

『…………』


 先ほどの巨人に勝るとも劣らぬ大きさのモグラが、こちらを見下ろしている……!

 そのうえ袖のない服を着ており、只者でないのは一目瞭然であった。


【 暗庭君あんていくん 】

「……おおッ! 師父っ……!」


 ひざまずき、恭しく一礼する暗庭君。


【 ホノカナ 】

「こ、この人? が……千載竜仙せんたいりゅうせん、さま……?」


【 セイレン 】

「あいたたたっ……」


 気づけば、セイレンの生み出した巨人はあえなく土に戻っていた。


【 千載竜仙 】

『君……君……は、……タイカ……では……ない……ね?』


【 ホノカナ 】

「えっ? えっとっ……あっ? わ、わたしですかっ?(タイカって誰でしたっけ……?)」


【 セイレン 】

「(神祖、武烈替天皇帝ぶれつたいてんこうていのことですよ!)」


 ホノカナに小声で問われ、セイレンが耳打ちする。


【 ホノカナ 】

「あっ! も、もちろん、違いますっ! ……あ、でも、この剣は、神祖さまから伝わるもの、ですがっ……」


【 千載竜仙 】

『ど……道理……で、懐かしい……と、思った……フム……』


 と、見る間に、千載竜仙の肉体が縮んでゆき……


【 千載竜仙 】

「……この姿も……ず……ずいぶん……久しい……ね」


 人間よりはやや大きい、というくらいにまでなる。


【 ホノカナ 】

(微妙に大きい……!)


【 暗庭君 】

「おお……このお姿、俺は初めてお目にかかります!」


【 千載竜仙 】

「……懐かしい、気配に……つい……出てきた……けれど……君たちは……何者……かな?」


【 ホノカナ 】

「あっ、はい! わたしたちは――」




 ――かいつまんで事情を説明する。


【 千載竜仙 】

「フム……な……なるほど……タイカの、子孫……も……大変……らしい……ね」


【 セイレン 】

「そこで――おりいってお願いがありまして!」


【 千載竜仙 】

「と……いうと……?」


【 セイレン 】

「ホノカナ殿が説明したとおり、現在、我らが陛下は窮地にあります。ここはひとつ、神祖さまをお助けくださったように、陛下をお助けいただきたく……!」


【 千載竜仙 】

「…………」


【 千載竜仙 】

「それ……は、……本人が、望んでいる……のかな?」


【 セイレン 】

「いえ……そういうわけではありません。しかしながら――」


【 千載竜仙 】

「……本人が、望むならば……ここで暮らすことに、問題はない……よ。でも……そうでないなら……私に、できることは……ないね」


【 セイレン 】

「むむ、しかし……」


【 千載竜仙 】

「私は……ここから出られないし……出ようとも、思わない……」


【 セイレン 】

「そこをなんとかっ――」


【 ホノカナ 】

「あ、あの――セイレンさん、無理強いは……よくないですよ」


【 セイレン 】

「いや、しかしっ……」


【 ホノカナ 】

「……あのっ、お騒がせして、すみませんでしたっ! わたしたち、おいとま、しますのでっ……」


【 千載竜仙 】

「…………」




【 暗庭君 】

「……いやはや、騒がしい連中でした!」


 地上への道を教わった二人が礼を言って去った後……


【 千載竜仙 】

「……ヒミズ……」


【 暗庭君 】

「……っ、はっ!」


 名を呼ばれて、一礼する暗庭君。


【 千載竜仙 】

「……頼みが……あるんだ。……聞いて……くれるかい……?」


【 暗庭君 】

「は――師父の命とあらば、いかなるご用命でも!」


【 千載竜仙 】

「……さっきの……連中……だけど……」


【 暗庭君 】

「やはり、ご立腹でしたか? 今からでも、始末してまいりましょうかッ?」


【 千載竜仙 】

「…………」


【 暗庭君 】

「……失礼いたしました」


【 暗庭君 】

「安全な場所まで、送ってやれ――と?」


【 千載竜仙 】

「……うん。……ひとまず、安全な……ところまで」


【 暗庭君 】

「心得ました――されば、行って参りますッ!」


 暗庭君は一陣の砂風と化し、そのままいずこかへと消えていった。


【 千載竜仙 】

「…………」


 ひとり残され、千載竜仙は目を閉じる。


【 千載竜仙 】

「……タイカ……そうか、君は、まだ――」


 久しぶりに地底を照らした輝きに、千載竜仙は思いを馳せるのだった……

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