◆◆◆◆ 9-92 鶴風の戦い(41) ◆◆◆◆
突然、地面から現れた存在……それはどう見ても、
【 ホノカナ 】
「も……モグラ……!?」
【 巨大なモグラ 】
『…………』
先ほどの巨人に勝るとも劣らぬ大きさのモグラが、こちらを見下ろしている……!
そのうえ袖のない服を着ており、只者でないのは一目瞭然であった。
【 暗庭君 】
「……おおッ! 師父っ……!」
ひざまずき、恭しく一礼する暗庭君。
【 ホノカナ 】
「こ、この人? が……千載竜仙、さま……?」
【 セイレン 】
「あいたたたっ……」
気づけば、セイレンの生み出した巨人はあえなく土に戻っていた。
【 千載竜仙 】
『君……君……は、……タイカ……では……ない……ね?』
【 ホノカナ 】
「えっ? えっとっ……あっ? わ、わたしですかっ?(タイカって誰でしたっけ……?)」
【 セイレン 】
「(神祖、武烈替天皇帝のことですよ!)」
ホノカナに小声で問われ、セイレンが耳打ちする。
【 ホノカナ 】
「あっ! も、もちろん、違いますっ! ……あ、でも、この剣は、神祖さまから伝わるもの、ですがっ……」
【 千載竜仙 】
『ど……道理……で、懐かしい……と、思った……フム……』
と、見る間に、千載竜仙の肉体が縮んでゆき……
【 千載竜仙 】
「……この姿も……ず……ずいぶん……久しい……ね」
人間よりはやや大きい、というくらいにまでなる。
【 ホノカナ 】
(微妙に大きい……!)
【 暗庭君 】
「おお……このお姿、俺は初めてお目にかかります!」
【 千載竜仙 】
「……懐かしい、気配に……つい……出てきた……けれど……君たちは……何者……かな?」
【 ホノカナ 】
「あっ、はい! わたしたちは――」
――かいつまんで事情を説明する。
【 千載竜仙 】
「フム……な……なるほど……タイカの、子孫……も……大変……らしい……ね」
【 セイレン 】
「そこで――おりいってお願いがありまして!」
【 千載竜仙 】
「と……いうと……?」
【 セイレン 】
「ホノカナ殿が説明したとおり、現在、我らが陛下は窮地にあります。ここはひとつ、神祖さまをお助けくださったように、陛下をお助けいただきたく……!」
【 千載竜仙 】
「…………」
【 千載竜仙 】
「それ……は、……本人が、望んでいる……のかな?」
【 セイレン 】
「いえ……そういうわけではありません。しかしながら――」
【 千載竜仙 】
「……本人が、望むならば……ここで暮らすことに、問題はない……よ。でも……そうでないなら……私に、できることは……ないね」
【 セイレン 】
「むむ、しかし……」
【 千載竜仙 】
「私は……ここから出られないし……出ようとも、思わない……」
【 セイレン 】
「そこをなんとかっ――」
【 ホノカナ 】
「あ、あの――セイレンさん、無理強いは……よくないですよ」
【 セイレン 】
「いや、しかしっ……」
【 ホノカナ 】
「……あのっ、お騒がせして、すみませんでしたっ! わたしたち、お暇、しますのでっ……」
【 千載竜仙 】
「…………」
【 暗庭君 】
「……いやはや、騒がしい連中でした!」
地上への道を教わった二人が礼を言って去った後……
【 千載竜仙 】
「……ヒミズ……」
【 暗庭君 】
「……っ、はっ!」
名を呼ばれて、一礼する暗庭君。
【 千載竜仙 】
「……頼みが……あるんだ。……聞いて……くれるかい……?」
【 暗庭君 】
「は――師父の命とあらば、いかなるご用命でも!」
【 千載竜仙 】
「……さっきの……連中……だけど……」
【 暗庭君 】
「やはり、ご立腹でしたか? 今からでも、始末してまいりましょうかッ?」
【 千載竜仙 】
「…………」
【 暗庭君 】
「……失礼いたしました」
【 暗庭君 】
「安全な場所まで、送ってやれ――と?」
【 千載竜仙 】
「……うん。……ひとまず、安全な……ところまで」
【 暗庭君 】
「心得ました――されば、行って参りますッ!」
暗庭君は一陣の砂風と化し、そのままいずこかへと消えていった。
【 千載竜仙 】
「…………」
ひとり残され、千載竜仙は目を閉じる。
【 千載竜仙 】
「……タイカ……そうか、君は、まだ――」
久しぶりに地底を照らした輝きに、千載竜仙は思いを馳せるのだった……
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