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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
390/421

◆◆◆◆ 9-90 鶴風の戦い(39) ◆◆◆◆

【 ホノカナ 】

「これって……」


【 セイレン 】

「ほう、これは――」


 地底に、巨大な空洞が広がっている。


【 ホノカナ 】

「前に行った、〈無限書廊むげんしょろう〉みたいな……ううん、あれよりずっと広い……!」


 かつてセイレンに連れられて行った不思議な書店は、宮城が入ってしまいそうなほどの大きさだった。

 だが、眼前に広がるこの空間は、それどころではない。


【 セイレン 】

「ふぅむ……これは、もしかすると……」


【 ホノカナ 】

「……もしかすると?」


【 セイレン 】

「うっかり、冥府あのよまで来てしまったのかもしれませんねえ!」


【 ホノカナ 】

「ええええ~~っ!?」


 実際、セイレンの言葉がいつもの戯言たわごととは思えないほど、この空間は広さが掴めない。

 ちゅうの民にとって、冥府……いわゆる死後の世界は地下にあるというのが共通の認識である。

 だがさすがに、歩いて行けるほど近い、とは思われていなかったが。


【 ホノカナ 】

「じゃ、じゃあ、わたしたち、死人しびとになっちゃったってことですか……!?」


【 セイレン 】

「う~ん……まだ生きてる気がするので、生きたまま冥府へ迷い込んでしまった……というところかもしれませんね!」


【 ホノカナ 】

「そんな、いけしゃあしゃあと!?」


 と、ホノカナが困惑の極みに達していると。


【 ???? 】

「――ちッ、なんだァ? ギャアギャア、うるせェな――」


【 ホノカナ 】

「……ひうっ!?」


 突然、凄みのある声が響いて、ホノカナは飛び上がる。


【 ???? 】

「――なんだァ、てめェら? 妖魔ばけものの類ってわけじゃあなさそうだが――」


 音もなく姿を現したのは、若い男だった。

 不機嫌そうな顔で、ホノカナたちを睨みつけている。


【 ホノカナ 】

「あ――あのっ、すみません! わたしたち、まだ生きてるのでっ……地上に返してもらえませんかっ!」


【 若い男 】

「はァ~? 勝手に入ってきておいて、なに言ってやがる。帰りたきゃ、勝手に帰りやがれッ!」


【 ホノカナ 】

「えっ? い、いいんですか? あなた、冥府あのよの門番とかじゃ……」


【 若い男 】

「はァ~~!? 誰が門番だッ! 俺ァ方士の〈キュウ・ヒミズ〉、人呼んで〈暗庭君あんていくん〉!」


【 暗庭君 】

「――〈千載竜仙せんたいりゅうせん〉さまの、一番弟子だッ!」


【 ホノカナ 】

「…………っ!?」


【 セイレン 】

「ほう、千載竜仙さまのっ……!」


【 ホノカナ 】

「知ってるんですか、セイレンさん!?」


【 セイレン 】

「ええ、もちろん知っていますとも! 名高き三十六奇仙さんじゅうろくきせんのひとりですからね!」


【 ホノカナ 】

「えっ……? ほ、本当に知ってるんですかっ!?」


【 セイレン 】

「その驚き方、おかしいですよね!? 私をなんだと思ってるんですか!?」


【 ホノカナ 】

「す、すみませんっ……!」


【 セイレン 】

「……ということは、ここはもしや――〈黄泉洞こうせんどう〉ですか?」


【 暗庭君 】

「フン、ちっとはモノを知ってるらしいなァ。……そうだ、この空間すべてが、師父しふ仙洞せんどうなのさ」

 *仙洞……神仙の住居の意。


 と、どこか自慢げに言う暗庭君。


【 ホノカナ 】

「あの、黄泉洞っていうのは……?」


【 セイレン 】

ちゅう帝国全土……とはいかずとも、地下に広がる広大な閉鎖空間です。三千年前、帝国の祖たる武烈替天皇帝ぶれつたいてんこうていも、ここで力を蓄えたとか……」


【 ホノカナ 】

「そ、そうなんですねっ……」


 いつになく的を射たセイレンの発言に、ホノカナは感心しきりだった。


【 暗庭君 】

「あァ、そうらしいな。俺はたかだか二百年くらいしか修行してないから、伝聞でしか知らねェが」


【 ホノカナ 】

「二百年……!?」


 見た目はとてもそんな歳には見えない……が、これまで知り合った神仙関係者を思えば、不思議ではない。

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