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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
389/421

◆◆◆◆ 9-89 鶴風の戦い(38) ◆◆◆◆

 いつしか太陽は傾き、夕暮れが迫っている。


 ドドッ……ドドドッ……!


 山道を疾風のごとく駆けるのは、シン・ウツセが率いる一団。


【 飛鷹の兵 】

シン将軍っ! 前方に、手勢がっ!」


【 ウツセ 】

「やっと追いついたかっ……!」


 エイ・バイシの奮闘によって、すくなからぬ足止めを食ってしまった。

 ここでようやく、再び標的を視界に入れたのだ。


【 タイザン 】

「軽騎兵だけで先行したのは、得策でしたなっ!」


 追撃軍のうち、森羅しんら軍を後衛として、屈強かつ足の速い飛鷹ひよう馬を駆る騎兵で追ってきたのである。


【 ウツセ 】

「よし、日が落ちる前に片をつけるっ!」


【 タイザン 】

「構わないのですかっ? あの中には、天子がっ……」


【 ウツセ 】

「…………っ」


 しばしためらいの色を見せたウツセだったが、


【 ウツセ 】

「――構わん、大逆の汚名は、私が引き受けようっ! 一人残らず、仕留めよっ!」


【 飛鷹の兵たち 】

『おおおおおっ!』


 喊声ときのこえと共に、騎兵たちがさらに騎馬を加速させる――




【 宝玲山ほうれいざんの将 】

「――大首領っ! 追っ手が迫ってきますっ! あれは……飛鷹の騎兵かとっ!」


【 ヨスガ 】

「――そうか」


 その知らせの意味するところ――つまり、殿軍しんがりを務めたバイシの死を察して、ヨスガは目を伏せた。


【 ミズキ 】

「ヨスガさま、今は――」


【 ヨスガ 】

「――ああ、わかっているともっ!」


 顔を上げて、命を下す。


【 ヨスガ 】

「者ども、日が落ちるまでしのぎ切るぞっ! その後は山中に入り、身を隠すっ……!」


【 宝玲山の将兵 】

『ははっ……!』




 一方、その頃……


【 ホノカナ 】

「ううっ……もうちょっと明るくできませんっ……!?」


【 セイレン 】

「これ以上は無理ですね! なにしろ、この穴を掘るのにほぼ力を使い果たしたので……」


 ホノカナとセイレンの姿は、狭い隧道トンネルの中にあった。

 セイレンの杖の先端からは、ほのかな光が広がっている。

 這って歩かねばならない……というほどではないが、つねに身をかがめる必要がある。


【 ホノカナ 】

「のんびりしてたら、追っ手がきちゃうかもっ……」


【 セイレン 】

「入り口は倒木でふさいでくれたはずっ……あっ、でもそれって、行き止まりだったら戻れないですよねぇ……!?」


【 ホノカナ 】

「ええ……!?」


 そう、二人はヨスガに命じられ、セイレンがこしらえた地下道を進んでいるのだった。


【 セイレン 】

「計算上は、宝玲山ほうれいざんまで直通のはずです! ……ええ、計算上は!」


【 ホノカナ 】

「ううっ……アテにならないにもほどがあるけどぉっ……でも、姉さまからの指令を果たすためにはっ!」


 ヨスガから指令とは、この地下道を通って宝玲山へ向かい、援軍を要請せよ――というものだった。


【 ホノカナ 】

「……っ、急がないとっ……!」


 と……ふいに、広い空間に出た。


【 ホノカナ 】

「…………っ? こんなところがあるんですか、セイレンさん?」


【 セイレン 】

「いえ、こんなはずは……う~ん、けっこう広いみたいですねぇ……」


【 ホノカナ 】

「ええっと、松明たいまつとか持ってたっけ……」


 と、もっと明るくしようとモゾモゾしていると……


 ――ピカッ!!


【 ホノカナ 】

「……ひゃあっ!?」


【 セイレン 】

「おわぁっ!?」


 突然、光がきらめき、二人を惑わした。

 ホノカナが背に負っている宝剣〈赫龍輝剣かくりゅうきけん〉が鞘から少し抜けており、その刀身からまばゆい光が放たれている――


【 セイレン 】

「おおっ!? その剣、光るんですね! さすがは伝国の宝剣っ!」


【 ホノカナ 】

「い、いえっ……こんなの、知らないんですけどっ……!?」


 やがて、目が慣れてくると……


【 セイレン 】

「! これは――」


【 ホノカナ 】

「…………っ!」


 目の前に広がる光景に、二人は息を呑む……

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